2018年10月20日土曜日

損得では語れないフィリピン移住


フィリピン・ネグロス島に移住してからの日々を、5年も書き綴っていると、時々こちらでの生活についての、質問や相談を受けたりします。

質問者は、フィリピン人配偶者がいたり、ある程度の予備知識はお持ちのケースがほとんど。中には、私よりもフィリピン経験が豊富で、自宅建設の詳細だけ教えてほしいという人も。ここまで分かっているなら質問も具体的だし、確信を持って返答できます。

困るのは、漠然としたお尋ね。その人に関して、年齢以外に何も知らされてない状況で、「コストパフォーマンスはどうですか?」みたいなことを訊かれても、どう答えていいのやら分かりません。

フィリピンに限らず、外国に住もうとするのは、大なり小なり、生き方を変えること。それも、中高年以上になってからとなると、相当なビッグ・チャレンジになるのは間違いない。私のように、30代の頃から、東南アジアを始め、出張ベースなら20以上の国を巡った経験があっても、一箇所に留まったのは、最長でも3ヶ月程度。何年、何十年と暮らすのとは、インパクトの大きさが段違い。

ネグロス島での生活費を、単純に日本のそれと比較することはできます。ガソリンや家電製品など、日本と同じか、物によっては割高なものはあっても、ざっくり1/5〜1/4程度が実感。ただし、好景気の影響でインフレはすごいし、食材も生活雑貨も、その内容や質には大きな差がある。

例えば公設市場だと、ナスビは虫食いが普通で、豚肉は購入後すぐに調理するか冷凍しないと、すぐに臭くなる。魚なんて、切り身はほとんどなく、血抜きもしていない丸ごと1尾が、店先にゴロン。

住宅設備は貧弱で、雨漏りしたりトイレが詰まるのは日常茶飯事。修理しようにも、業者とはなかなか連絡は取れない。やっと電話が通じても、約束の時間を平気ですっぽかす。こういう感覚は、ネグロスに限らず、マニラやセブなどの大都会でも、大差はなさそうです。

全部が全部、そういう訳でもないけれど、日本で当たり前に買える物、できる事が、思ったようにはいかないのがフィリピン。いくら安く上がっても、これでは騙されたようなものだと、毎日不満とストレスで爆発しそうになるかも知れません。目先の金銭的な損得勘定だけで、フィリピン移住を決めると、落とし穴にハマる可能性が大。

真剣にフィリピンに住むことをご検討ならば、希望する自分のライフスタイルがどのようなものか、できるだけ具体的に思い描くことが第一。仮に食生活や居住環境が、日本とまったく同等であることが必須条件ならば、まずフィリピンでは暮らせないでしょう。

何らかのビジネスをするにせよ、趣味に生きるにせよ、どうしたって、今現在の日本の生活からは、犠牲にせざるを得ない何かがあります。そうした失うものと、フィリピンでしか実現できない価値を天秤にかけて、納得がいくかどうか。

同じ年月を過ごして、残るお金が多い方を選ぶという損得だけでは、フィリピン移住の価値はまったく語ることができません。

ここまで書いてふと気付いたのは、これって、就職活動の心構えと似ているということ。初任給がどうだとか、平均給与が高いとか、あるいは、年休が取りやすい、仕事が楽。そういう今見えている損得勘定で、職業や就職先を選びたくなる気持ちも分かります。でも、高度経済成長の頃ならいざ知らず、このご時世、5年10年先どころか、1年後ですら予測が難しい。

今では、スマホなしの生活なんて、想像できない人の方が多いでしょうけど、アップルから最初のiPhoneが発売されたのが、たった10年ちょっと前の2007年。しかも、現在スマホのトップブランドは、そのアップルですらなく、韓国メーカー、サムスンが開発したギャラクシー。さらに、世界的には中国メーカーが、市場を席巻しつつある状況。

こんな時代に、大企業の社員や公務員を目指すなんて、ちょっとは自分の頭で考えたら?と言いたくなります。AI(人工知能)に、8割の仕事が取って代わられる、とさえ言われているのだから、将来性や安定感なんて言っても、まったく当てにならない。それより、自分が何をしたいのか、何になりたいのかが、プライオリティ・No.1だと思うんですけどね。

それとまったく同じなのが、移住先の選択。コンドミニアムが値上がりしそうだとか、今現在の物価が相対的に安い、ということだけを理由にしたら、後悔すること間違いなし。それは飽くまで二の次で、フィリピンで何がしたいのか、どういう暮らしを望むのか。そこを起点に考え始めないと、ちょっと状況が変化しただけで、大損したから日本に戻る、なんてことになりかねませんよ。


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