2020年2月28日金曜日

汝の敵は、愛せません


今週の2月26日は「灰の水曜日」でした。以前にこのブログに投稿した、灰の水曜日についての説明は以下のようなもの。

2月中旬から3月初旬には、宗教行事である「灰の水曜日」があります。これは、カトリックで最も重要な復活祭(イースター)の46日前の節目。この日からイースターまでは四旬節(レント)と呼ばれ、イエス・キリストの荒野での40日間の断食を偲び、自らの信仰を省み、来るべき主の復活に向けて、心の準備をする期間。

復活祭は「春分の日から最初の満月の次の日曜日」で決まるので、連動する灰の水曜日も毎年日付が変わります。なお、四旬節が40日ではなく46日間なのは、途中の日曜日はカウントしないから。

ということなので、この日は我が家でも、肉や油モノは控えて、お粥と味噌汁の軽めの三食。ついでにブログも、久しぶりにカトリックに因んだことを書くつもりでしたが、ゲストハウスのお客さんが急病で予定変更。(救急車とフィリピノ・ホスピタリティ

さて、カトリックに因んだとは、他ならぬ聖書の一節。この日曜日(2月23日)のミサで朗読されました。毎週のミサで、聖書のどの部分を朗読するかは、世界中のカトリック教会で共通なので、約13億人の信徒が、それぞれの言語で読んだことになります。

とても有名な言葉で、クリスチャン以外の人たちにもかなり知られている、「汝の敵を愛せよ」。私たち家族か通うチャペルでは、英語でのミサで「Love your ememies」。

ネットでちょっと調べただけでも、字義の解釈はたくさん出てくる。ただ、あんまり独自の考えでひねくりまわして、受け入れやすいようにしても私は意味がないと思います。

マタイによる福音書の第5章には、これに前後して「右の頬を打たれたら、左の頬を向けろ」と復讐の禁止を説き、「(あなたを)迫害する者のために祈れ」とダメ押し。もう誤解のしようのない強い表現ですね。

この内容、クリスチャンは全員実践していると思っている人は、たぶんいないでしょう。もしそうだったら、キリスト教徒が多数派の、ヨーロッパやアメリカ諸国が戦争を起こすことはなくなってるはず。一応はカトリック信徒である私にしたって、この言葉通りに振舞うのは無理。

現実に、家族や親しい人が事故や犯罪で、大怪我を負ったり亡くなったりしても、聖書に書いてあるから加害者を愛するなんて、普通の人間にはできっこありません。真面目な信徒さんほど、信仰と感情の板挟みになって、余計に苦しむんじゃないでしょうか。

ただ、自分の経験から言えるのは、加害者の一方的な過失、あるいは悪意が原因だったにせよ、何年、何十年もネガティブな感情を抱き続けるのは、はなはだ疲れるということ。

当初は、心の中に怒りや憎しみが煮えたぎるのは仕方ないけれど、被った傷や亡くなった人が元に戻らないんだったら、あんまり長く引っ張るのは、結局自分の残りの人生を損なうことになる。要は信仰じゃなくて損得勘定。

私なんて、もう40年以上も前、中学生の時にいじめた奴らの顔と名前を思い出すだけで、不快感でいっぱいになるぐらい。イエスさまの心境の、足元にも及ばない。こんなダメ信徒には、「愛する」とか「許す」のは取り敢えず置いといて、忘れてしまうしかありません。時間薬とはよく言ったもので、それにはある程度の年月が必要になります。

さらに、ただ時間に委ねるだけでなく、ネガティブな感情を薄めるには、ポジティブな気持ちを追加していくのが、私には早道だったように思います。つまり、自分自身が幸せと思える状況に身を置くこと。

できるだけ我慢すること減らし、なるべく好きなことをして、好きな人とだけ会って、美味しいものを食べて暮らす。

先日、ゲストハウスに宿泊中の高校生の人に「これまでの人生で、いつが一番幸せでしたか?」と、なかなかデッカい質問をされたのですが、「今です。」と即答できたのは、我ながら気持ち良かったですね。


2020年2月26日水曜日

救急車とフィリピノ・ホスピタリティ

今日は、久しぶりにフィリピンの救急車を、間近に見ることになってしまいました。自分で頼んで来て貰ったので、当然なんですけど。

事の発端は、我が家のゲストハウスに滞在いただいている、日本人向け英語学校の女子生徒さん。先週彼女が、風邪で寝込んでしまいました。本来ならすぐにでもお医者さんに診てもらって、薬を飲めば良かったんですが、どうもフィリピンの医療とか薬品に対して、不信感があったらしい。

結局、月曜日に発症して、クリニックに行ったのが金曜日の午後。1ヶ月の留学期間のうち、1週間をベッドで寝て過ごすことに。ただ、処方してもらった抗生物質が効いたようで、週明けにはすっかり元気になりました。

ところが、ここからが良くない。何を思ったのか、新しく渡航してきた生徒さんたちと一緒に、選りに選って牡蠣を食べたんだそうです。元気な状態でも、お腹こわしちゃうこともある牡蠣。しかも熱帯のフィリピンで。さらに1週間の病み上がりにいきなり。

もし私がその場にいたなら、泣いて止めたんですけどねぇ。さすがに生食はしなかったにしても、無謀過ぎます。

案の定、2日経った今朝から、発熱に下痢と嘔吐。その女の子だけでなく、フィリピン到着すぐだった男の子も同じ症状でダウン。具合が悪いとは聞いてましたが、部屋の掃除に入ったメイドのライラが、本気で心配するほど。

比較的症状が軽い男の子の方はともかく、女の子は、連続の体調不良で精神的に参っている様子。しかも足元がふらついて、歩くこともままならない。そこで私が英語学校のマネージャーに、救急車で州都バコロドの大きな総合病院に搬送してもらうよう、進言したという次第。

治療はもちろん、設備の整った医療機関できちんと検査を受けて、少しでも女の子の心配を取り除くべきだと判断しました。そんな経緯で、冒頭の救急車到着となったわけです。

実は私、移住早々の6年前の8月、同じようにシーフードにアタって救急車で運ばれて、バコロドの病院に二泊三日で入院した経験があります。あの時に乗せられた車両は、救急車とは名ばかり。外側はそれらしく塗装してあっても、中はがらんどうのただのバンという代物。

それに比べて今日見た車。6年間の好景気を反映するように、緊急車両っぽく、ずいぶんときれいになってました。電話してもなかなか繋がらず、到着まで30分以上かかったのは、あまり改善されてませんが。



救急車の話はさて置き、感心したのはメイドのライラと家内。搬送されるまではライラが、病院到着以降は、わざわざオフィスを早退した家内が、病人に付きっきり。汗を拭いたり励ましたり、同じ日本人同士でも、とても私には真似の出来ない手厚い対応。これぞ真打、フィリピノ・ホスピタリティ。

もちろん学校からは、とても有能で優しい、マネージャーの日本人女性が同行していたので、我が家の二人がいなくても、実務的には問題はなかったでしょうけど、やっぱり病人の気持ちになって考えれば、心強かっただろうと思います。

ということで、病院での検査結果は、アメーバ赤痢みたいなタチの悪い感染症ではなく、薬を処方してもらって、夜8時頃には全員が帰宅。吐き気はまだ残っているものの、搬送前の絶望的な表情は影を潜めて、取り敢えずはホッとしました。


2020年2月24日月曜日

日本のお役所


とうとう新型コロナウイルスの感染が、日本国内に広がってしまいました。感染経路が全然分からないケースが増えているようなので、これはいくら言葉を繕っても、水際対策は失敗ということでしょう。

しかし、感染源が中国の人口1千万を超える大都市で、春節の「民族大移動」時期にぶつかるという最悪のタイミング。感染者が出ているのは、日本だけでなく、韓国、シンガポール、香港、タイ、台湾、マレーシア、オーストラリアなど。(2月21日現在 感染者が確認された国と地域

どこの国でも、滅多にない非常事態だったし、まだ情報が少ない時期に、感染地域からの入国完全禁止などの強行手段を取れなかったのは理解できます。今、横浜に停泊中のクルーズ船でも、現場で働く人たちは、不慣れな状況に試行錯誤の連続で、疲弊し切っていることは、想像に難くない。

ただ、日本のお役所、今回の場合は、厚生労働省の説明能力の低さに絶望的な気分を味わっています。

まず、同省のホームページを一見して、その不親切さに愕然。一般国民が一番知りたいと思われる事柄、感染の現状がどういうフェーズにあって、どの程度の深刻さで、どんな対応をすればいいのかが、リンクを飛んで読み進めないと、パっと見て分からない。読み進めても、通り一遍の中身のない文章の羅列。

ひどいのはリンク先がPDFだったりする。説明が面倒だから、責任回避のためにプリントアウトして壁に張り出しておけと、厚生労働省の末端組織が、便利使いするためだけの物なのかと勘ぐってしまいます。

特に「イベントの開催に関する国民の皆様へのメッセージ」なんて、開催の必要性を改めて検討しろ、でも一律の自粛要請ではないって、一体何が言いたいのか? 必要があるから開催を準備しているのに、具体的基準も示さず、最後は自分らで判断しろと突き放してどうする。

これでは、専門知識持つ個人の方からの発信の方が、よっぽど親切で分かりやすい。

例えば、さまざまな市民活動を支援しておられる、松原明さんの「イベント開催可否の判断基準について」。あるいは、感染症・公衆衛生を専門として、ダイヤモンドプリンセスの船内でも作業をされている高山義浩さんの、一連のフェイスブックでの発信

なぜクルーズ船での全員の検査をしなかったかの理由や、感染の可能性がある乗客の隔離・拘束を、人権と法律の観点から解説するなど、明確に分かりやすく書かれています。

高山さんは、神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授とのやり取りで、有名になりましたね。

さて、問題の厚生労働省。自国民にさえこの程度の対応なので、英語での発信は、もう問題外のレベル。2月23日付けのNews Week の記事によると、驚くことに、自動翻訳した英文をそのまま掲載しているらしい。英語ネイティブの人によると「わけの分からん英語」だそうです。

それでなくても、中国に次ぐ感染源として、日本からの旅行者拒否の動きが広がっているこの時期。News Week、CNN、BBCなど、「日本政府への忖度ゼロ」の欧米の主要メディアは、歯に衣着せぬ報道を展開。岩田健太郎教授がクルーズ船内での所見を述べたユーチューブの映像を、真っ先に報じたのはBBC。


フィリピンに永住しているから、日本国内のことは無関係だろうと思われるかもしれませんが、それが関係大有り。この2月から、日本からの英語留学の生徒さんを受け入れているので、もしフィリピン政府が、日本からの航空便を拒否するとなったら、3月以降、4月まで入っている予約は全部パー。

それだけでなく、こんな状態が続けば、日本人だというだけで、根拠のない差別や偏見の対象になる可能性もある。差し当たっては、地元の中学に通う息子のことが心配です。

厚生労働省には、失敗したこと、間違いだったことは隠さずに実態を報告してもらい、その上で、分かりやすい表現と方法で、最新の情報をきちんとアップデートしてほしい。いかに責任を被らないようにするかの、何がポイントかよく分からない作文作業に、汲々としている場合ではないですよ。


2020年2月21日金曜日

非常事態に炙り出される本性


ここ最近、幡野広志という人の書いた文章や語った言葉を、追いかけることにハマってます。改めて言うまでもなく、著作や人生相談で有名になった、本業が写真家の方。現在(2020年)37歳で、34歳の時に血液のガンであることが分かり、余命3年を宣告されたそうです。

こう書くと、不治の病を売り物にした、ヤバい作家かと思いきや、幡野さんの文章を少しでも読んだことがあれば、元来、人間に対しての鋭い観察眼、深い洞察力と、それを表現する能力に極めて高い能力を持った人が、たまたま病気になって注目されたと気付くでしょう。

その幡野さんの人生相談を一冊にまとめた「なんで僕に聞くんだろう。」を、数日前にキンドル版で購入。一気読みして、再読中にとても気になったのが、幡野さんと同様に治る見込みのないガン患者への一節。

「健康なときの人間関係が、病気になって色濃く炙りだされたようにぼくは感じます。」

つまり、妻がガンの余命宣告を受けた事実を受け入れられず、医師を取っ替え引っ替え、妻を引きずり回すような夫は、妻が健康だった時も、相手の気持ちを無視して、自分の考えを押し付けていた。

誰かが病気になった途端に、その家族が急に馬鹿になったり賢くなったりはしないわけで、それ以前の関係がより極端な形で炙り出されるということ。この考察はすごい。

そして私が思い至ったのは、この法則って、個人間だけでなく、人間の集団、さらには民族や国家の間でも似たようなものなんじゃないか、ということ。それが、今まさに世界中に広がっている新型コロナウイルスの感染にまつわる一連の大騒動。

「ガン」や「不治の病」を「非常事態」に置き換えれば、中国国外で、中国系・アジア系住民への差別や偏見が顕になったのも理解できます。新型コロナウイルスの発生源というのは引き金に過ぎず、元々、中国系、アジア系の人々に差別意識を持っていた人が、少なからずいて、それが一気に爆発した。

私の住むフィリピン・ネグロス島も例外ではありません。先日、英語学校に留学中の日本の学生さんと、近所のテニスコートに出かけた時のこと。先にプレイしていた地元の男性から、「君ら、中国人と違うやろな?」と、かなり厳しい詰問口調の英語で聞かれました。

また、フィリピン人の友人、知人も、中国人観光客を締め出すべきだと、いつになく感情的にSNSで発言したり。

中国から経済的な恩恵を受け、常日頃、中国で生産された製品を使っていても、中国という国へは、かなり屈折した思いがあるんだろうと思います。これは日本もまったく同様か、それ以上。

今回は中国でしたが、もし新しい感染症の発生源が日本だったりしたら、海外に住む日本人としては、想像するだけで恐ろしくなります。フィリピンでの対日感情は、表向きは概ね良好とは言え、日本人=金持ちというステレオタイプがあり、妬みや恨みの対象になりやすい。本音では、快く思ってない人だっているでしょう。

実際、ラジオ騒音の一件で、隣で作業中だった大工と揉めた時には、「この日本人が」みたいな言われ方もしました。非常事態に備えるという意味でも、やっぱりマイノリティは、下手に恨み買っちゃいけませんね。


2020年2月18日火曜日

マスクで出勤、風邪引きメイド


新型コロナウィルスの感染爆発が止まりません。スマホにインストールしてある、日本語のニュースアプリの見出しには、1日2回ぐらい更新される、感染者と死者の数。今日(2020年2月18日)現在のNHKニュースによると、中国での感染者数は7万2,436名、死者1,868名とのこと。

英語放送のNHKワールドでも、連日トップは、コロナウイルス感染のために、横浜に停泊・隔離されているクルーズ船の話題。アメリカでは、今シーズン猛威をふるい、感染者2600万人、死者が1万4000人という季節性インフルエンザが、新型コロナウイルスによるものかも知れないとの報道も。

案の定、今夏に予定されている東京オリンピックの開催を、危ぶむ声すら聞こえてきます。

ここフィリピンでは、感染が広がったという知らせはないものの、テレビでもネットでも、コロナウイルス関連の記事が多く、カトリック教会でのミサの最後に、流行の終息を願う祈りが捧げられているほど。この日曜日には、私も家族と一緒に祈ってきました。

そんなピリピリした雰囲気の中、何ともタイミング悪く、我が家のメイド、ライラが豪快に風邪を引きました。先週初め頃から嫌な咳をしてると思ったら、水曜日には発熱してダウン。昼過ぎに早退してクリニックへ。

今はちょうどサトウキビの刈り入れに伴う、焼畑の時期。ライラは煙にアレルギーがあるらしく、いつも焼畑シーズンには咳やくしゃみで体調を崩すのが常なので、たまたまそれが重なったと思ってました。

翌日の木曜日は、ゲストハウスの洗濯日。月曜と木曜の週二回、洗濯と掃除をするルール。ライラは姪っ子に洗濯作業を頼んでいたけれど、その姪っ子まで風邪で寝込んでしまった。う〜ん、アレルギーだけじゃなく、シライで風邪が流行っているのか?

結局、翌日の金曜日もライラはお休み。1週間近く休息して、月曜日には戻ってくれましたが、やっぱり時々咳こんでいて、マスク着用のまま仕事をしてます。

ところが、それで身近なところでの風邪騒ぎは収まったわけではなく、今度は、ゲストハウスで英語学校の生徒さんと一緒に寝泊りしている、30代男性の日本人スタッフが風邪らしき症状で発熱。この人は、先週までマニラにいたので、どこで感染したのか分かりませんが、こちらもタイミングが悪いなぁ。

ということで、しばらくの間は、手洗いとうがいが欠かせない状況が続きそうです。


【追記】
その後、日本人スタッフはすっかり回復されましたが、それと入れ違いのように、英語学校の生徒さんが、寝込んじゃいました。


2020年2月16日日曜日

宿泊客との距離感


裏庭に建てた100平米2LDKのゲストハウスに、日本人向け英語学校の生徒さんを、本格的に受け入れ始めてから丸二週間。常時4名から5名の生徒さんが滞在中。

月曜から金曜には、リビングルーム、駐車スペース、離れ屋(バンブーハウス)などを利用して、フィリピン人英語教師による、マンツーマンレッスンも行われています。

こうして、運営が軌道に乗ってきたと同時に、小さな問題も見えてきました。

まず、当初から気になっていた電気の使用。というのも、日本と比べると概ね物の値段は安いネグロス島でも、電気代だけは同等レベル。つまり庶民からすると相当割高。ところがフィリピン初渡航の生徒さんたちに、そんな実感が共有できるはずもなく、電気の付けっぱなしが多い。また、日本の初夏ぐらいのこの時期でも、普通にエアコンを使う。

英語学校のマネージャーさんとは、どの程度の使用量になるかを見てから、料金の徴収は考えましょうかと話していましたが、いちいち消し忘れを指摘するのも限度があるし、エアコンが設置されているのに、涼しいから使うなと言うわけにもいかない。これは、やっぱり電気代は、宿泊料とは別に貰わないと、私の精神衛生に良くなさそうです。

次は鍵の問題。
お高いホテルと違って、カードキーなんて代物はなく、昔ながらの鍵しかないゲストハウス。生徒さんに渡して紛失となったら、ドアノブごと全交換になるので、施錠・解錠は私がやってました。

一応、朝は6時半、門限は夜10時の取り決めはあるものの、早朝や深夜のフライトで生徒さんが到着することもあるし、週末に連れ立って出かけたはいいけど、そこはフィリピンの交通事情。門限に間に合わず、寝入り端を叩き起こされるケースが多発。

結局、生徒さんだけでなく、日本人スタッフも常駐ということになったので、その人に玄関と門扉の鍵だけは、預けておくことにしました。まともに付き合っていたら、私が睡眠不足で倒れそう。

そして一番やっかいなのが、宿泊している生徒さんたちとの距離感。
せっかく遠く日本から来てくれたんだから、アットホームなおもてなしをと、頑張り過ぎたようです。最初の3名さんに、ささやかなウェルカム・ディナーを振舞ったら、英語学校の宿舎にいる生徒さんまで集まってきて、毎週パーティ並みの対応に。

それだけでなく、近場のビーチリゾートやら、遊園地やら、一緒に行こうとお誘いが。まぁ、それだけ慕ってくれているわけで、決して悪い気分ではないけれど、土日を全部潰すのは無理。特に若い女の子から声がかかると、家内の機嫌が目に見えて悪くなる。

さらに面倒なのは、人数が増えると、私と相性の良くない人だって混ざってくること。ロクに挨拶もしないし、食事を用意しても「ありがとう」も言えないような人が。それでも、あなたはいいけどあっちはダメ、と言うわけにもいきません。これはストレスが溜まるなぁ。

なので、3週目に入る明日の月曜日からは、元々宿泊料には入っていない、食事や観光アテンドは一切無しにして、(わざわざそんな宣言はしませんけど)宿泊客とは、普通にビジネスライクな距離を保つことにします。

接客業に携わる人なら、いまさら何を当たり前の事をと、笑われそうですが、私にとっては、すべてが初体験。やっぱり何事も自分でやってみないと、分からないものですね。


2020年2月15日土曜日

男からチョコレート


今年(2020年)2月1日付けの日本経済新聞に、チョコレートメーカーのゴディバが、「日本は、義理チョコをやめよう」と題した広告を掲載したそうです。

ボディコピー(本文)を読むまでもなく、ゴディバの主張にはピンと来ました。オフィスで働く女性が、それなりのお金と労力を使って、愛情があるわけでもなく、特別な感謝もしていないオっさん供に、毎年チョコレートを配る儀式に、無理矢理参加させられている事に、異議を唱えてるんだろうと。

書き方はそこまで直接的ではないけれど、ゴディバ・ジャパンの社長ジェローム・シュシャン名で、だいたい思った通りの内容が書かれていました。

このシュシャンさんという方。とても興味を持ってネットで調べてみたら、たまたま社命で日本に来たビジネスパーソンではなく、大学時代に日本に旅行し、本気で日本にハマったという人物。あの厳しいことで有名な「永平寺」で修行し、弓道は有段者...どころか指導者に与えられるという「錬士五段」。

ここまでなら、時々テレビで「青い目のナントカ」として紹介される、日本大好きな西洋人で終わるところが、ゴディバ・ジャパンの責任者として、2010年の就任以来、5年で売り上げを2倍、2017年には3倍にしたという経営手腕の持ち主。

しかも、奥さまは日本人で、私より1年だけ歳上の1961年生まれと言うから、驚いてしまいました。

少なくとも、この経歴を拝見する限り、生半可な日本人より、よっぽど日本の文化や日本人の物の見方、考え方を理解していると思われます。そういう人が、わざわざ、自社の売り上げを落とすかも知れないのに「義理チョコをやめよう」と日経の紙面にメッセージを掲載したのはすごい。

私も、日本でのバレンタインデーに関しては、以前から何かおかしいと感じていました。そもそもなぜか女性から男性の一方通行で、しかも贈り物はチョコレート限定。バレンタインデー本来の意味や由来とは、かけ離れているし、果ては「義理チョコ」なんて訳の分からん習慣まで。

カトリック信徒である私からすると、救い主の生誕を祝うべき夜に、セックス目的のカップルでホテルの予約が一杯になるとか、ハロウィンに泥酔した大人が路上で騒ぐといったことと、同質の歪み方。

カトリック国のフランスで育ち、正しく日本の伝統を学んび、しかも現代日本ビジネスシーンの最先端で働くシュシャンさん。ヨーロッパ発祥の習慣が曲解され、愛する第二の母国である日本の女性が、バレンタインデーを重荷に感じている現状を、見るに忍びなかったんでしょう。

ということで、昨日のバレンタインデーには私の側から、贈り物をしたいと思う人たちに、愛情や感謝、友愛の気持ちを込めて、チョコレートを手渡しました。家内も私に、小さなケーキを買って帰ってくれたし。

やっぱり変な義務感に縛られることなく、自然体での贈り物が一番ですね。


2020年2月12日水曜日

「出る杭は打たれる」呪いの言葉その3


ずいぶんと間隔が空いてしまいましたが、「他人に迷惑を掛けない」「一汁三菜」に続く、呪いの言葉シリーズの第3回です。

先日行われた、アカデミー賞の授賞式。何と言っても一番の話題は、非英語圏の韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞、監督賞、脚本賞など、「外国語映画」の1ジャンル内ではない、ガチのメインで複数受賞したこと。

もちろんこれは、別に最近になって急に、アメリカ以外の映画の質が上がったからではなく、アカデミー賞の方が、遅まきながら時代に合わせて変化してきた、ということなんでしょうね。例えば、黒澤明監督の「七人の侍」や「天国と地獄」「赤ひげ」が、今アメリカで公開されてたら、主要五部門ぐらい軽く独占してたでしょう。

ヨーロッパ諸国の主だった映画祭、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアでは、昔から日本を含むヨーロッパ以外で製作された映画が、度々最高位に選ばれているし。

それよりも私が気になったのは、メイクアップ・ヘアスタイリング賞を受賞した、カズ・ヒロさん。この方は、同部門で2回目の受賞で、前回の時の名前は、辻一弘さん。日本国籍を捨ててアメリカに帰化したの機に改名。

受賞後のインタビューで「日本の文化が嫌になってアメリカ人になった」という意味の発言がありました。「日本にいては、夢をかなえることが難しい」とも。(朝日新聞の記事より)

さらに授賞式直前の記事によると、日本では評価基準が「社会で受け入れられるか、どう見られているか」の周りの目、と語っておられます。だから苦しくて心を病んでしまう人が出てくる。

私の場合、日本国籍を捨てるところまでは行かなかったけれど、今、家族と一緒にフィリピンに住んでいるのは「日本の文化が嫌になった」からに他ならない。カズ・ヒロさんのご意見には、全身全霊で共感します。

その、私にとっての「嫌な文化」を象徴しているのが「出る杭は打たれる」という言葉。つまり、人と違う意見、外見、行動で見立つ奴は、排除しても構わない。これって、今の日本で問題になっていることの、ほぼすべての根本原因だと思います。

学校でのいじめは典型的にそうだし、結婚という共同幻想から「出る杭」になったシングルマザーは、子供諸共貧困層に押しやられる。若い人が「自分のやりたいことが分からない」のも、幼い頃から親や教師が「出る杭にならないよう」矯正し続けた挙句の結果。日本から独創的な発明が出なくなって久しいのも、当然の成り行き。

もう少し自分自身の卑近な例で言うと、定年を10年切り上げて早期退職し、フィリピンに移住すると決めたの時の周囲の態度。自分が住んだこともないのに、フィリピンの治安の悪さや災害の多さを理由に、私の選択にケチをつけて、出来もしない事と決めつける。果ては、子供が可哀想だとか、親を捨てていくのかとか。

おそらく本音では、自分もできれば早めに引退して、外国でのんびり暮らしたい気持ちの裏返しだったんでしょうね。俺たちは我慢しているのに、一人だけ楽な目を見るのは許さんとばかりに。

こうしたやっかみの類は、無視すればいいけれど、多くの日本企業では、年功序列を排して成果で報酬を決めると言いながら、いくら能力が高くても、若さを理由に給料の上限が厳しく制限されてたり。これがあるから、海外から優秀な人材を引き抜こうと思っても、中国やシンガポールなどのオファーとは、桁違いに安い金額しか提示できない。

国全体が好調だった、高度経済成長やバブル期ならば、みんな同じように、そこそこ幸せだったのかも知れませんが、今では日本中、みんなで我慢してみんなで不幸になる、一種のカルト教団の様相を呈している。

ということで、今ゲストハウスに宿泊いただいている日本の学生さんには、どんどん出る杭になって、打たれる前にさっさと日本から逃げ出しなさいと、機会がある毎に焚きつけております。


2020年2月4日火曜日

ゲストハウスで英語のレッスン

コロナウイルスによる新型肺炎は、とうとう2003年のSARS大流行時の感染者・死者の数を超えて世界的緊急事態になってしまいました。フィリピンでも、感染源と目される武漢から、セブ、そしてここネグロスを訪れた中国人観光客二人が、マニラで発病。そのうち一人が、中国国外では初めて、新型肺炎で亡くなったとなったという報道が駆け抜けました。

私たちの住むシライでは、パニックにはなっていないものの、マスクの買い占めが横行し、先週末には州都バコロドから、家内の従弟カルロが、わざわざマスク二箱を持って来てくれたり。

そんな暗い雰囲気を吹き飛ばすように、2月最初の日曜日、日本からシライの英語学校に短期留学で、裏庭に建てたゲストハウスに、3名の学生さんが無事到着しました。内訳は、女子二人と男子一人、世話役として英語学校の日本人の男性スタッフも来られて、合計4名さまご宿泊。


生徒さんが来てから
爽やかな晴天が続くシライ市

どんな人が来るかと、若干の心配はまったくの杞憂で、素直で明るい子ばかり。スタッフも頼りになる好青年。日曜日の夜は、ささやかながらお客さんを招いて、母屋のダイニングでウェルカム・ディナーを振る舞いました。

唯一の男子生徒さん。見た目はおっとり大人しい感じながら、何と将来は政治の世界を目指しているとのこと。今までたくさんの、英語留学の若者と話した中では、珍しくフィリピンの社会や歴史について下調べをしてました。

翌日の月曜日からは、ゲストハウスが英語マンツーマンレッスンの教室に早変わり。リビングルームや、庭に設置したバンブーハウス、ベンチなどを活用。朝8時から、フィリピン人の英語教師3人がやって来て、たいへん賑やかな1日に。

夕食後になると、徒歩10分ぐらいの場所にある、英語学校(と言っても、少し大きめの民家)に滞在中の他の生徒さん2名が、ゲストハウスに遊びに来ました。折角なので、母屋の方をご案内。それからバンブーハウスにて、なぜかトランプの「大富豪」が始まり、時ならぬパーティ状態。

いつものことながら、お父さんが私と同世代か、下手すると歳下という人ばかり。それでも、久しぶりにまとまった日本語を話せる楽しさもあって、修学旅行を思い出すような騒ぎ方をしてしまいました。


集まったのは、前述の政治家志望の男子以外は全員女の子。なんだか女子校の先生か、寮長になった気分です。すっかり仲良しになって、次は一緒にテニスをしようということに。

ということで、今日は、2年振りにテニスボールを引っ張りだしたり、ラケットを掃除したり。我ながら少々テンションが上がり過ぎなので、怪我をしないように気をつけないと。