常々考えているフィリピンに関する私の説「ビサヤ地方はフィリピンの関西」。
私の住む西ネグロスや隣島パナイで使われるイロンゴ語(別名ヒリガイノン語)は、日本語ならば京都弁で、セブや東ネグロスのセブアノ語(別名ビサヤ語)は大阪弁みたいだと感じてます。ついでに言えば、タガログ語は東京弁になるのかも。
これは単に私が、東大阪生まれの父と、大阪の都島生まれの母を持ち、尼崎で育って京都に学び、就職先が門真という、サラブレッド的関西弁話者だから。実感を持って比較できる日本の方言が、それしかなかっただけとも言えます。
その分はさっ引いて考えても、イロンゴはフィリピン人にとっても柔らかく優しい響きで、イロンガ(イロンゴを喋る女性)は魅力的。これはまさに京都弁。それに対して、普通に喋っていても喧嘩してるみたいに聞こえるセブアノは、やっぱり大阪弁っぽい。
ちなみにパナイ島および西ビサヤ地方の中心都市で、イロンゴ語名称の元になった(と思われる)イロイロは、記録に残っているだけでも、スペイン侵略の遥か前、13世紀(日本の鎌倉時代)には、商業都市として栄えていたそうです。日本の京都ほどではないにしても、古くから様々な人々が往来し、言葉も洗練されたんでしょう。
19世紀には、ネグロスで砂糖生産が発展したことによって、州都バコロドから運ばれた砂糖が、貿易港イロイロ経由でヨーロッパにまで輸出。なるほど、昔からパナイと西ネグロスは、結びつきが深かった。だから今でも同じ方言なのか。
同じくスペイン以前からの繁栄を誇るセブ。ただ、イロイロに比べると反骨精神が旺盛なようで、初戦のみの勝利とは言え、当時の領主ラプラプは、侵略者マゼランを殺害したフィリピンの英雄として讃えられています。
また公用語のフィリピノ語が、タガログを母体に決められたことにも不満を持つ人も多い。なぜなら、セブアノを母語あるいは第二言語とする話者は、合わせると2,8000万人もいて「タガログ喋ってる奴らより、ワシらの方が多いやんけ〜」というわけです。
これって、関西人の標準語アクセントに対する屈折ぶりと、とてもよく似てると思うのは私だけしょうか。聞くところによると明治維新直後、新政府を代表する大久保利通は、新首都を大阪にする腹積りだったそうです。ところが直前になって前島密の意見に影響され、一転、天皇は江戸へ「行幸」という形で事実上の江戸遷都。
惜しかったなぁ。前島さんがいらんこと言わへんかったら、今頃NHKのアナウンサーは、大阪弁喋っとったのに。この気持ち、セブアノ話者の諸君には分かってもらえるはず。
そんな歴史的なポジションだけでなく、実際にイロンゴ語って関西訛りに近いんですよ。
私の友人で、以前にイラストのモデルにもなっていただいた日本人女性で、私と同じく関西出身の「マダムM」。(マダムMの肖像)彼女はセブアノ語が堪能なんですが、そのセブアノが、地元の人に言わせるとイロンゴ訛り。つまり、関西的抑揚で話すと、イロンゴ語っぽくなるんだそうです。
実は私もそれは実証済みで、最初は英語の影響を引きずっていた私のイロンゴ。家庭教師のアンに「外国人みたいなアクセント」だと言われ、開き直って私にとって一番自然な関西訛り丸出しで喋ったら「きれいな発音ですね」と褒められてしまった。
ということで、「ビサヤ地方はフィリピンの関西」説は、私の中で日々強化されております。
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