今日のタイトル、 あんまり考えたくはないのですが、やっぱり還暦間近になると、考えてしまいますわなぁ。日本人の二人に一人が罹り、三人に一人の死因になっているという癌。
私の祖父母や叔母がそうだったし、家内の母親は14年前に癌で亡くなってます。義父も同じく癌でしたが、幸い早期発見だったらしく、抗癌剤治療の結果、元気になりました。
実は最近、日本から持ってきた蔵書の中にあった、立花隆さん著の「がん 生と死の謎に挑む」というノンフィクションを読みました。一度は読了したと思ってましたが、全然内容に覚えがないので、未読だったんですね。
2009年にNHKスペシャルで放送された番組の取材内容を、きわめて丁寧に解説し、しかも番組では語り切れなかった情報を深掘りした著作。最近この本を読んだという放射線医の方によると、もう10年近い時間が経過しても、十分通用するそうです。と言うことは、この10年でも、画期的な治療法や予防法は、残念ながらまだ見つかっていないということ。
2020年現在でも、Kindle 版が購入可能ので、詳しく知りたい方は、是非そちらを読んで頂きたい。
この本は、立花さんご本人が膀胱癌の手術をしたことがきっかけで書かれました。加えて、立花さんの前の奥さんが癌で亡くなっていて、その最後を看取ったことも。
知の巨人と呼ばれ、医学に関しても深い知識と洞察がある立花さんですら、自身が癌患者となって知ったという、癌治療の最前線。実際のところ、なぜ人は癌になるのかも、大まかな輪郭がようやく分かってきたレベルだと言います。
私も含めて、一般の人が漠然と考えているのは、何らかの発癌物質を体内に取り込まれてしまい、それが原因で癌ができる...みたいな感じでしょう。確かにダイオキシンやアスベスト、喫煙などが関連しているらしいのですが、どの物質を、どれぐらい摂取したら癌になるかは未解明。
最初の癌細胞が発生して、自覚症状が出たり、診察によって見つかるのは、10年から20年も経ってから。長年にわたって、細胞分裂時の遺伝子コピーミスが何千回、何万回と繰り返されることで、発症するのが癌。
つまり、今、癌が見つかっても、その原因は10年20年前から蓄積されたものであり、多くの場合、単一の発癌物質や、生活習慣だけとは考えられないらしい。ただ、何年間も大量飲酒をしたり、毎日の喫煙は、発癌リスクを高めるのは間違いなさそう。過労やストレスなどで免疫力を落とすのもマイナス要因。
さらに、その人がどんな遺伝子を持っているか、どのような生活をしてきたかで、どの部位に癌ができるか、どの治療法が有効かが、ガラリの違ってくるのが厄介なところ。なので、どんな癌にでも効く夢の新薬、新治療方は、そう簡単に現れそうにない。
とは言え、私の祖父が癌になった1970年代に比べれば、完治は無理でも、寛解(再発の可能性があるものの、症状を押さえ込んだ状態)に持ち込む可能性は上がっているし、たとえ末期でも、ギリギリまで苦痛を和らげて、QOL(生活の質)をある程度保ったまま、余命を生き切る選択肢もある。
この本を読んで、もし私が癌になっても絶対に避けたいなと思ったのは、無理な延命治療と怪しげな代替療法。
癌とは、元々自分の細胞だったものが、遺伝子に異常を来して暴走し、増殖が止まらなくなった状態。抗癌剤が健康な細胞まで殺傷してしまうのは、止めようがないんだそうです。強い吐き気や倦怠感、脱毛、免疫機能の低下、などの副作用が出るのはこのため。
寛解の見込みがあるのならまだしも、ただ数ヶ月程度の延命のため、人生の最後に、行きたいところにも行けず、食べたいもの食べられない、残った仕事にも手をつけられないのは勘弁してほしい。
最悪なのは、代替療法。効果が証明されていない、民間療法や食事療法の類。一回の治療や投薬に何十万円なんてのも珍しくないらしい。何をやってもダメで、すっかり絶望し、藁にもすがる気持ちで...というのは理解できますが、家族に意味のない負債を残すことはしたくない。(この辺りの感覚は、幡野広志さんの影響も大きいです)
この本では、アメリカにあるナチュラル・プロダクト・レポジトリーという国立の研究機関が紹介されいて、ここでは何百万種類もの有機物質の抗癌効果の有無を確認し、全サンプルを保管しているとのこと。この物質リストは公開され、営利目的でなければ、注文すればサンプルを取り寄せることができる。
タツノオトシゴやオウム貝の殻まで調べているそうで、およそ考えられる物は、すでに誰かが試していると思った方がいい。本当に効果があるなら、遠の昔に標準療法に取り入れられているはず。
とまぁ、本の紹介に延々と文字数を費やしてしまいましたが、タイトルにある、もしフィリピンで癌になったらどうするか。実際に、近所に住んでいた私と同世代の日本人の知り合いが、別の病気の診察で癌が見つかり、ネグロスでは治療できないと言われ、帰国して入院というケースがありました。
癌の進行具合や種類によっては、ネグロスの総合病院で何とかなるかも知れませんが、おそらく私も、帰国しての治療の選択をするでしょうね。一応はアクサの保険に加入していても、カバーできるのは、100万ペソ(約220万円)まで。レベルの割には、恐ろしく高額なフィリピンの医療費なので、日本に戻って、国民健康保険再加入になりそうです。まだ飛行機に乗るだけの体力が残ってたらの話ですが。
ということで、いざとなった時に、あんまりみっともなくジタバタしないように、調べられることや、頭の中でできるシミュレーションは、今のうちにやっておこうと思っております。それから、コロナ騒ぎが終息したら、せめて数年に一回は、日本での癌検診も。