2024年12月2日月曜日

うちのメイドはお金持ち

 今年も残り1ヶ月を切りました。日本ではそれなりに寒くなり、師走の慌ただしい雰囲気になってるんでしょうけど、常夏のネグロスでは相変わらずの季節感ゼロ。9月からクリスマスシーズンのフィリピンでは、今頃になるとすっかりダレダレで、今更年末と言われてもなぁ、という感じです。ツリーを出すのが周囲に比べると遅めの我が家でも、すでに1ヶ月が経過。例年クリスマス明けどころか、1月第2週ぐらいまでは出しっ放しなので、都合2ヶ月半もツリーを眺めることになります。

ところで最近は、選挙や政治、自然災害などのシリアス・ネタが多い当ブログなので、今日は軽い話題を一つ。

メイドとして我が家で働き始めて、かれこれ2年のグレイスおばさん。私よりちょうど10年若い52歳で、わりと最近まで中近東で10年に渡るOFW(海外フィリピン人労働者)を経験した苦労人。その稼ぎで二人の子供を立派に育て上げ、孫も一人います。娘さんのエイプリルは、何を隠そう私のイロンゴ語家庭教師で、息子さんはマニラで働いていて、もうすぐ結婚されるとか。

さてこのグレイス。長年の出稼ぎでの貯金があるのか、あるいは息子さんの送金額が多いのか、一般的にメイドをやってる人に比べれば、経済的には余裕がある。まず着てるものからして、前任者のライラとは大違い。日替わりで、派手なシャツやらスパッツで登場。バッグや時計も安物ではなさそうだし。

出勤前は市役所前の市民広場で、ママさんズンバで一汗が日課のグレイス。露出度の高めのズンバ・ウェアでやって来て、うちのシャワー・トイレ室でお色直しをします。年齢的にも体型的にも、ちょっとイタい感はあるんですが、グレイスに限らずフィリピンのオバちゃんは、そういうことは全然気にしない。

ちなみに、グレイスとエイプリル、その子供の3人は、シライ市内に同居。一昨年、エイプリルは離婚(フィリピンでは法的な離婚 devorce が不可で、別居 separate と称してますが、事実上の離婚)したので、ひょっとする小学生の子供への養育費も、かなりあるのかも知れません。

そんな、一見有閑マダム的な行動パターンだけでなく、買い物を頼んで、少しお金が足りない時など、自分の財布から建て替えたりもするし、日当350ペソに1,000ペソ出しても、ちゃんとお釣りを持っている。もっと驚くのは、たまに家内がうっかり日当を払い忘れても黙って帰って、翌日すまなそうに「昨日、お金もらってないんですけど...。」

ライラだったら想像もできないんですが、要するに懐に余裕があって、現金への執着があまりないらしい。そう言えば、たまにセブやボラカイにバカンスに行くと言って休みを取るなぁ。さらにエイプリルは、毎日のように隣街の州都バコロドに出かけて、友達とお茶やお食事。(それを全部フェイスブックに投稿)

決して浪費してる感じじゃないけれど、どう見てもメイドとその家族の暮らし向きではないんですよね。そう思うのは私だけじゃなく、グレイスの妹で、同じく私の家庭教師であるバンビも驚くほど。

じゃあなぜ、そんなに高くもない給金でメイド業に勤しむのかと言うと、毎日何もせずに家にいたら精神衛生に良くないから。もちろん「お金持ち」はネタで、実際に住んでる家は狭くて古いし、車もない。せいぜい「贅沢しなければそこそこの暮らしができる」程度なので、1ヶ月7,000ペソ(約2万円弱)でも大いに家計の助けにはなっているはず。趣味で働いているわけではありません。

実際の働きぶりも、元来真面目な性格なのか、頼んだことはキッチリこなします。まぁ、余計なことをしないのは、メイド業の基本なのかも知れません。それに加えて、お金に対して淡白なので、数千ペソぐらいなら任せても安心。

メイドと聞くと、つい貧困層出身者をイメージしがちですが、まだまだ格差は大きいながら、10年以上も続くフィリピンの経済成長。コロナ禍を乗り越えての復調ぶりも確かで、低所得者と中間層の間に、以前には見られなかった幅広いグラデーションがある気がします。たぶん、1960〜70年頃の日本も、こんな感じだったんでしょうね。


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