2017年11月26日日曜日

性教育はサイエンス


私とフィリピン人の家内には、日比ハーフで、今年小学校5年生の息子が一人います。小1の終了まで日本の学校へ、そして移住後は、地元シライ市内の私立小学校へ1年生をやり直す形で入学。

フィリピンの公用語は、フィリピノ(タガログ)語と英語。そしてシライ市を含む西ネグロス州では、母語としてイロンゴ語(別名ヒリガイノン)が使われています。息子の通う小学校は、授業はすべて英語。フィリピノもイロンゴも英語で教えるスタイル。

移住して5年近くが経過し、息子はもうすぐ、日本でいうところの中学生になろうかという年齢。学校で教わる内容も日々レベルアップ。英語なんて高度過ぎて、私には辞書なしでは読むことすらできない。算数もサイエンス(理科)も、小学生5年生にしては、相当難しいことを習っています。

そして気になるのが性教育。すこし前までカトリックの影響もあって、小学校ではほとんど何も教えていなかったそうです。ところが、HIVなどの性行為を通じた感染症の流行や、10代での望まない妊娠が社会問題となって、最近では女の子が初潮を迎える時期に合わせて、性教育が行われるようになりました。

どんな内容でどんな教え方をしてるんだろうと、息子の教科書を見せてもらったところ、ちょっとびっくり。特別な教科を設けるのではなく、サイエンスの一環として「人間の生殖系」と題した丸々1チャプターを当てています。それも、雄しべと雌しべが云々、というような遠回しな表現ではなく、男女生殖器の断面図や顕微鏡写真など、とても直接的で医学用語満載の記述。




例えば用語だけでも、陰茎・膣・卵巣・精子・生理・性交など、直球勝負ばかり。「輸精管」(Vas Deferens)なんて、日本語でもあまり目にしない言葉さえありました。さすがに性行為そのものの詳細説明はないけれど、11歳でここまで教えるのは驚きです。そして、クラスをグループに分けて、ディスカッションするらしい。これを男女同席で授業を進める。

息子によると、たまたま生理について話し合うグループに当たったそうです。「僕、男やのに、こんなこと勉強してもしゃあない」と、母親に愚痴ってたんだとか。ははは...。もうあと何年かしたら、男にとっても一大事やと分かるぞ。

それはともかく、親の一人としての意見を言わせてもらうと、興味本位ではなく(興味は思いっきりあるでしょうが)、またネット経由の行き過ぎで偏ったものではない知識を、早い時期から教わるのは、安心感があります。しかも女の子も含めたクラスメートと一緒に学習するのは、とても重要。

私が思うに、性について男女別で隔離するように教えるのは、男視点からすると、行き過ぎた女性の神聖視と、その裏返しである女性のモノ扱いにつながる原因になりかねない。デリケートな問題で、国民性や時代環境でも変わることなので、異論のある方も多いでしょうけど。

さらにフィリピンの教科書では、生理についても、かなり詳しく書かれています。そして、痛みや違和感があったら、すぐ親に言うようにとか、生理中はナプキンを頻繁に交換しなさいなどの実用的なことも。女性だったら当たり前に分かることでも、小学生の男の子にこれを読ませるのは、性教育後進国・日本に育った私には画期的。

4年生や5年生にもなれば、急に生理が始まってスカートを汚してしまい、授業中に女の子が泣き出すような「事故」も起こります。(実際に息子の学校でも、時々あると聞いています)そんな時に、同年齢の周囲の子供たちに予備知識があれば、騒ぎになったり、いじめられたりすることもないでしょう。

振り返って見るに、日本の性教育の現状はお寒いばかり。「寝た子を起こすな」式の、現実逃避の意見ばかりがまかり通り、特に小学校ではタブーなんだとか。結局はいきなり、ネット経由のアダルト画像が性教育の素材になってしまっている。

どれだけ禁じても、いずれは目に触れてしまうし、耳年増な割には避妊具の正しい使い方すら知らないというのは、やっぱり問題だと思います。いくら早く孫の顔が見たいからと言っても、息子が高校卒業前とかにお祖父ちゃんになるのは、勘弁してほしいですよ。


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