2023年12月11日月曜日

お試し介護移住 その3「やっぱりストレス」

 前回からの続きで、両親の介護移住について。

お陰さまで無事、日本からフィリピン・ネグロス島の家に到着した父母。かつて住んでいた日本の実家を再現した、一戸建ての2LDKも気に入ってもらえたようです。再現したとは言え間取りのみなので、木造の安普請だったオリジナルに比べると、鉄筋コンクリートだし天井も高め。建築が仕事の父は、すぐに意図を理解しましたが、それでなくても認知能力がやや下がり気味の母は、イマイチ分かっていないらしく「えらい豪邸や」と感心するのみだったのには、一抹の寂しさ。

さて、住まいに関しては、一応の合格点だったと思いますが、問題は気候や食事、その他の細々とした日常生活について。

寒くなってきた11月の日本から、日中の最高気温が普通に30度を超えるネグロスだし、飼い犬のゴマは無駄吠えが多い。体調崩すんじゃないか、眠れないんじゃないかとの私の心配を他所に、二人ともよく食べるし、睡眠も問題ない様子。もちろん80代の後半なので、食べる量は大したことはないけれど、肉・魚・野菜。皿に取った分はきれいに平らげ、好き嫌いがないのは助かります。さすが子供の頃に食糧難を体験した昭和十年代生まれ。

まぁ食事に関しては不肖の息子である私が、それなりに日本的な献立を毎日用意しているので、大丈夫だろうとは思ってました。食事の次に気になってなのは、NHKを始めとする日本のテレビ放送が視聴できないこと。NHKの日本語放送が受信できるスカイ・ケーブルが来ているのは、隣街の州都バコロドまで。

ところが昨年の私の一時帰国の際、実家のテレビにクロームキャストを接続しておいたのが功を奏して、父はユーチューブのニュースや、ネットフリックスの映画などは、自力で見ることができる。むしろ、同じ機材が揃っているテレビを見て、大喜びしたぐらい。母も最近はNHKの朝の連続テレビ小説も見ないし、紅白にも興味なし。

他には、シャワーで使うようにと、わざわざ日本のアマゾンで購入した、浴室専用の椅子も結局不要だったりで、事前にあれこれ悩んでいた件は、概ね杞憂。危うくトイレに手摺りを取り付けてしまうところでした。

たった2週間余りの滞在だったので、本格的な移住となったら、これ以外の問題がいろいろと顕在化するんでしょうけど、どっちかと言うと大変だったのは、受け入れる側の私の方。よく二世帯居住では、水回りを分けることが肝要なんて話を聞きます。我が家の場合は、水回りどころか、完全に分離独立した家二軒。ここまでやっても、やっぱり私にはストレスがかかりました。

まぁ、ほぼ10年も家族三人だけで、一般的な日本の住宅に比べれば、かなり広い家に慣れてしまったせいでしょうか。実の親であっても、自分のテリトリーに二人が加わるだけで、心理的には負担があるものらしい。さらに、「美味しい美味しい」と食べてくれる食事も「きちんと用意しないといけない」なんて変な義務感が生じてしまい、最後の方はちょっと疲弊気味でした。う〜ん、これは力み過ぎたようです。

このブログの読者の中には、身内の顔さえ分からなくなったガチの認知症や、まったくの寝たきりになってしまった親御さんを、介護されている方がいらっしゃるかも知れません。たとえ健康だったとしても、人間関係が上手くいかず、精神的に疲れ切ってしまうケースもあるでしょう。それに比べれば私の両親は、はるかに扱いやすいと言えそうです。

ただ、子供の頃から圧倒的に接する機会が多かった、元来すごいお喋りだった母は、会話を成り立たせるのが困難な状況。素直に言うことは聞いてくれるし、自分の置かれた状況は理解しているとは思うものの、向こうから話しかけることはありません。

これに対して、身体も頭もまだまだ大丈夫な父。弱ってしまった母を積極的に面倒を見てくれるのは大助かりな反面、若い頃から相変わらずのコミュ障ぶり。例えば、一言「散歩に行ってくる」と言えばいいのに、黙って一人で出掛けて小一時間も帰ってこなかったり。職場ではちゃんと会話していたのに、なぜか家族を相手にすると、コミュニケーション能力が半減しちゃうようです。

こういう状況について、その都度目くじらを立てていては身が持たないし、今頃になって父の性格が変わるはずもないので、こちらの対応を改めるしかなさそうです。つまり、自分でできることはやってもらうということ。独立した台所もあるので、朝食ぐらいは両親で完結してもらうほうが良いでしょう。毎度の上げ膳据え膳では、私も疲れるし両親も居心地が良くなさそう。これは夫婦でも同様で、同居していても、それなりの距離を取るのは、とても大事なんですね。

そして大きいのは、家内の存在。平日の昼間は働いているけれど、夕食は全員一緒。自分から両親へ話題を振る配慮があり、両親もそんな義理の娘に心を開いています。一般的にフィリピンでは、年寄りに優しく介護も自宅でというのが当たり前とされてますが、家内の態度を見ていると、なるほどなぁと感心します。もちろんフィリピンでも、不仲な嫁姑はいくらでもいるので、これは持って生まれた、家内の人徳なんでしょうね。

ということで、まだまだ改善の余地が大有りのお試し介護移住。それでも来年以降(時期は未定)の本格移住に向けて、だいたいの感触がつかめました。次回も続きます。



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