マニラ首都圏マカティのビル群 出典:マカティ市HP |
ここ最近、フィリピン、日本、そしてその共通の巨大な隣国である中国で、おそらく偶然ではない、治安の悪化が目立っています。
まずは、私と家族の住むフィリピン。もともと犯罪率は高く、警察や役人までが平然と汚職に手を染める体質のお国柄なので、今更...と思われるかも知れません。ただクリスマスを控えてのマニラ首都圏で、日本人が狙われる強盗が7件連続で発生。(2024年11月19日現在)。深夜一人で、観光客然とした格好で歩いていたら危ないのは昔からですが、最近のケースは、複数で比較的明るく繁華な場所にいても襲われているとのこと。
こっちに住んでると分かるんですが、たとえ無言でも日本人観光客って目立つんですよね。どこが?と聞かれると困るんですが、ちょっとした服装の違いだったり、歩き方だったり。長く住んでいる私のような移住者でも、地元にいる時はイロンゴ語(西ネグロスの方言)で話しかけられるのに、たまにマニラやセブに出かけると、タクシーやレジの人に一撃で見破られます。
日本経済が低迷し、日本人観光客の数自体はずいぶん減ってると思うんですが、いまだに日本人=お金持ちというステレオタイプは健在なようです。とは言え、ここまで立て続けなのは、私もちょっと記憶にありません。
次が日本。少し前の「漫画村」「ルフィー」や、このところネットニュースを騒がしている「JPドラゴン」など、犯罪者がフィリピンに高跳びするの事件は、何十年も前からありましたけど、今では単に逃亡先に選ぶだけでなく、堂々とフィリピンを根城にして、犯罪を重ねる日本人の面汚しみたいな輩もいる始末。
さらに末期的なのは「闇バイト」。まず、このネーミングが大問題で、字面だけ見ると、若者を対象にしたちょっと危険なアルバイトのようですが、捕まれば社会人としての将来は台無しになるし、傷害・殺人となると、十年から何十年にも渡っての服役になってしまう重大犯罪。「共犯者募集」ぐらいの強い文言を当てるべきでしょう。
そして一番恐ろしいレベルなのが中国。9月(2024年)に、深圳の日本人学校に通う10歳の男の子が刺殺される、何とも悲惨な殺人事件があり、その後、これまた立て続けに、不特定多数の人たちを、ナイフで刺したり自動車で轢いたりの事件。中国でこの種の犯罪は「報復社会」つまり社会への報復、と呼ばれるそうで、背景にはコロナ禍での過剰なまでの制限と、それに伴う抑圧があるらしい。日本やフィリピンでは、表向きコロナ禍対応は一段落しているのに、中国では深刻な後遺症が続き、経済的に不遇な人々も多い。何といっても母数がデカいだけに、その怨念の総量たるや、想像を絶するものがあります。
この3カ国で共通するのが、社会的セーフティ・ネットが未整備あるいは不十分なこと。この分野では比較的マシな日本ですら、生活保護の捕捉率はわずか2割程度。これは、保護を受けようとすると、まるで犯罪者か何かのように、受給窓口では尋問され、世間的には後ろ指をさされ、徹底的にプライドを傷つけられる文化が理由なんじゃないかと思います。悪しき自己責任論、ここに極まれりですね。
ちなみにコロナ時に、当時の明石市長の泉房穂さんが取った処置は、可及的速やかに困っている人に現金を支給すること。細かい審査や国の対応を待たず、家賃を払えず閉店を余儀なくされている個人商店に即金で100万(給付ではなく貸付ですが)。いちいち各商店の経営内容の審査などしていたら、店が潰れてしまいますからね。でも、これがセーフティ・ネットの本来あるべき姿。受給者が変な罪悪感を持ったりする暇もないほど、事務的に素早く処理するのが正しい。
こう書くと必ず聴こえてくるのが、不正受給が増える、国民の税金を無駄にするな、という声。この手の指摘は、だいたい嫌中とセットになってることが多いですね。でもセーフティ・ネットは、溺れかけている人に差し伸べるものですから、拙速もやむなし。多少の不正は仕方がないと思います。完璧を期するがあまり溺死者続出では、制度の意味がない。
そしてよく考えないといけないのは、結局のところセーフティ・ネットは、困窮者だけでなく、生活保護の世話になってない人の安全も守っていること。誰にも助けてもらえず自暴自棄になって犯罪に走るような人が減れば、治安は回復します。その逆になってるのが、まさに現在の中国でしょう。
ただ難しいのは、セーフティ・ネットのお陰で安全が保たれているかどうかは、判断ができないところ。起こらなかった犯罪の数は、数えることができませんからね。
ということで、国民民主党が公約に掲げ衆院選で躍進の原動力になった「103万円の壁打破」が、現実に向けて動き出したのを見ると、少なくとも日本では、困った人を助ける方向に風向きが変わってきたようです。この政策が実施されそれなりの効果が出れば、セーフティ・ネットの拡充も注目されると期待しております。
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