2017年7月25日火曜日
命より大事な仕事なんかない
日本人は勤勉で真面目、それに引き換えフィリピン人は怠惰で雑。
もう、ネットでも実際の会話でも、いい加減聞き飽きたフレーズ。フィリピンに数回渡航しただけの初心者から、フィリピン人と結婚して、何年もフィリピンに住んでる人まで、安易に口にする、この典型的レッテル貼り発言。
日本の外に住み、日本式の労働から離れてみると、私には、ここ最近の日本人の勤勉さが、ひどく歪に見えます。
少し前、某大手広告代理店勤務の若い女性が過労死して、かなりの騒ぎになったと思ったら、今度は2020年東京オリンピックのメイン会場、新国立競技場建設現場で勤務していた新人社員が自殺。月間時間外労働が200時間を超えていたと言います。
厚生労働省が毎年発表している「過労死等労災補償状況」によると、2006年から2015年の10年間で、自殺を含む過労による死亡者が、合計4,615人だったそうです。これは過労死、または過労自死と認定された数字だけなので、実際には、もっと多くの人が働き過ぎで命を落としているのは、間違いありません。(出典:BLOGOS)
死ぬまで働く、働かせる国民や社会が、他国よりも優れていると誇れるようなことなんでしょうか? たとえ怠け者と言われても、自分の命や健康、家族との生活を大事にするフィリピン人の方が、本質的にはずっと聡明でまともだとは思いませんか?
こういう話をすると決まって、高度経済成長やバブル期には、同じぐらいか、もっと働いていた。残業が100時間や200時間なんて普通だという人がいます。私が社会人になりたての1980年代の半ばは、バブル経済真っ盛り。私自身や周囲の人も、時には相当無理をしていた記憶があります。
しかしながら、当時は働けば働くだけ収入が上がったし、高額商品が飛ぶように売れ、自分のやった仕事が成果に直結する充実感がありました。それに少なくとも1週間に1日程度は熟睡できる日があり、それなりにメリハリもあったと思います。ところが今はどうでしょう。先の見えない、低賃金のやらされ仕事。終わったと思ったら、変更・修正・やり直し。労いの言葉はなく、できて当然。できなければ人格を否定するような叱責。
私の退職前の約10年間ほど、自分の経験も含めて、こういう環境の職場を見聞きすることが増えました。特に小売業や飲食店関連、顧客の苦情を直接受ける部署などでは、現場の人たちにかかる精神的な負荷は、相当なものだと思います。自分がその仕事が大好きで、寝食を忘れて打ち込んでいるのとは、だいぶ様子が違う。
ここまで追い詰められて、仕事を休めない・辞められないと思い込む人が多いのは、日本の教育に、何か致命的な欠陥があるとしか思えません。省みて、フィリピン人の家内が、子供に接する様子を思い出してみるに、叱り方がまず違う。家内はフィリピンの母親にしては比較的厳しい方だと思うけれど、逃げ場なしに追い込むような叱り方は絶対にしません。
また、褒める時はちょっとオーバーなくらい褒める。朝送り出す時や夕方帰宅した時には、子供を抱きしめて、しっかり愛情表現。子供が少しでも体調不良を訴えたりしたら、学校を休ませるのに躊躇しない。子供が失敗したり悪さした時でも、まず言い訳をちゃんと聞くし、何より、声を荒げて怒鳴ることがない。
こういうフィリピン人の親の態度を、甘やかせ過ぎと言うのは簡単。でも私が真似しようとしたら、かなりの忍耐が必要です。そして、こうやって育った子供は、自分にも他人にも優しい大人になります。その結果、国全体として経済や軍事の分野で他国に劣ることになったとしても、国民が働き過ぎて寿命を縮める国より、よっぽどマシ。
そもそも仕事というのは、食扶持を稼ぎ、自分や家族の日々の暮らしを安定させるのが第一義。今の日本は、やりがいや自己実現といった、高尚な話をする以前の問題が、蔑ろにされすぎです。朝、子供の顔見たり、家族と夕食を一緒に食べることを、諦めないといけないような仕事は、普通ではない。定刻の夕方5時になったら、さっさと家路につくことが、当たり前だし、命より大事な仕事なんて、あるはずがない。
もういい加減「寝てない自慢」や「忙しい自慢」をするような社会は、終わらせるべき。プロのスポーツ選手が同じこと言ったら、自分のコンディション管理すらできないアホだと思われますよ。
労働時間は1日8時間で、休息と睡眠は十分取る。無理だ、できないと思ったら、相手が誰であろうとはっきり意思表示をする。どうも今の日本では、誰も本気でこんな基本的なことを、子供に教えていないらしい。むしろ、そんなことを言うと、努力や我慢が足りない、となるんじゃないでしょうか。
今日はたまたま目にした、過労死に関する記事を読んで、怒りに任せて書きなぐってしまいました。最後まで読んでいただいた方、感情的な文章に付き合ってくだり、ありがとうございます。
ラベル:
日本の話題
場所:
フィリピン シライ市
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