2021年1月26日火曜日

ワクチンの憂鬱

 最初に断っておきますが、私は「反ワクチン」を唱えるつもりは全くありません。それどころか、現在、世界を覆っているコロナ禍を食い止める唯一の現実的な手段は、可能な限り速やかに、大多数の人がワクチンを接種するしかないと信じております。

ほんの半年ぐらい前まで、こんな驚くべきスピードで、複数の有効なワクチンが開発されるとは思ってなかったし、これは近年稀に見る、人類史上の快挙と言えるでしょう。

と、ここまでは最善のシナリオだったのに、その後、日本でもフィリピンでも、なかなか上手くいかないのが、具体的なワクチン接種のプロセス。まず、日本政府とマスメディアの対応が、どうにも理解に苦しむ。

私がここに書くまでもなく、行き当たりばったりにしか見えない、現政権のコロナ対応。今の総理大臣の態度や喋り方に非難が集中してますけど、そんな表層的な話ではありません。これは前政権はもちろん、もっと以前から、有事への備えが甘いのが日本政府。これは阪神淡路大震災の頃から、ほとんど進歩してないんじゃないか。

規制をするにしろ緩めるにしろ、例えば、〇〇日以内に、陽性患者が〇〇人増えたから、あるいは減ったから、という基準を示さないのはマズい。また、オリンピック開催の是非にしたって、ただ精神論で「必ずやります」じゃなくて、どう開催するのか、どういう状況なら中止なのかを説明しないと、誰も納得できないでしょう。

しかも、ワクチン開発の進捗は、何ヶ月も前から分かっていたはずなのに、いまだに(2021年1月末時点)接種開始の詳細日程すら公表できないのは、ちょっとお粗末過ぎ。

そして、それ以上に信じられないのが、大手新聞やテレビ局の報道姿勢。これもすでに、多くの人、現場の医療関係者が、厳しい口調で非難している通り、マスメディアが率先して「反ワクチン」キャンペーン(としか思えない)を展開しています。

特にひどいのが、専門家と称する人物を招いて、根拠のない不安を煽るだけのワイドショー。フィリピンに在住の私は、幸いにして目にする機会はないものの、ネット上で、本物の専門家の方々が激怒するレベルの番組が、多々あるとのこと。

実際、安全性に疑問があるのならともかく、ファイザーやビオンテックなどが開発した、その成分や治験プロセスの情報をきちんと公開しているワクチンに関しては、コロナに感染して重症化するリスクと天秤にかけたら、接種しないという選択肢は考えにくい。少なくとも、私は、ファイザーのワクチンだったら、今すぐにでも打ちますよ。

さて、ここからは、フィリピンでのワクチン接種について。

5年前の当選以来、概ねどの政策も支持してきた(外国人の私が支持しても意味ないけど)ドゥテルテ大統領ですが、今回のワクチンに関する一連の決定や発言には、残念ながら、首を傾げざるを得ません。

まだ第三相の治験も終わらず、有効性の数値も50%とか70%とか、イマイチ確定的でもない、中国シノバック製のワクチンにご執心。イギリスBBCの報道によると、安全性はほぼ問題ないらしいし、ファイザー製ワクチンが摂氏マイナス70度での保管が必要なのに比べると、家庭用の冷蔵庫でも大丈夫なぐらい。

ただ、それでなくても、数年前のデング熱ワクチンによる薬害事故で、60人以上もの死者が出て以来、他の感染症のワクチンも忌避されるようになり、2019年には、麻疹が大流行のフィリピン。こんな状態なのに、データをきちんと公開せず、透明性に欠けるシノバック製ワクチンを選ぶのは、なぜなんでしょう。

そして価格が安いのならともかく、どうやらそうでもない。最近のフィリピン国内の報道では、同じシノバックのワクチンを導入したインドネシアより、ずいぶんと高いとの情報も。これは腐敗を疑われても仕方ないですねぇ。

ということで、仮に有効性が50%そこそこでも、集団免疫の観点からすると、十分接種の意味はあるし、順番が回ってきたら打つことになるでしょうけど、やっぱり憂鬱になりますね。


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