2022年3月26日土曜日

インフラの他国依存リスク

 ウクライナへのロシア侵略が始まって1ヶ月。素人ながら、ウクライナがここまで、頑強に抵抗できるとは思いませんでした。どうしても第二次大戦時の、電撃的なドイツによるポーランド侵攻のイメージがあって、せいぜい数日か一週間で、敢えなくウクライナ降伏と思い込んでいたのは、たぶん私だけではないでしょう。

ウクライナ善戦(あるいはロシア軍の失敗)の理由は、専門家に任せるとして、戦争の長期化は世界的な原油価格の高騰という形で、ここフィリピンにも大きな影響を及ぼしています。ガソリンだけでなく、ガスボンベで都度購入する炊事用のガスが、ざっと1.5倍かそれ以上の値上げ。これはまた、薪木調達のための樹木の違法伐採が増えそうな気が。

それでなくても森林が激減して、山の保水力が弱まったための洪水災害多発のネグロス島。SNSでは、「ウクライナの戦争なんて関係ないから」と放言する日本人が結構多くて驚くんですが、マジで他人事ではありません。

やっぱり、欧州各国が過度にロシア産原油に依存してたのが、問題だったんでしょうね。まだ、ロシアからのパイプラインが閉じられたわけではないものの、EU各国は、それが前提の動きをしてるようです。今後おそらく、エネルギー関連では、脱石油・脱化石燃料へのシフトは加速されるでしょう。

そもそも、エネルギーやインフラを他国、それも一国への依存を避けるのは、国家安全保障の基本。食糧など含めて、すべてを自国だけで賄うのは非現実的ですが、輸入元を複数の国に分散しておかないと、今回のような有事には痛い目に会うってこと。

特に、最後に残った「帝国」と呼ばれるロシアと中国。原油生産で言うと、ロシアは世界3位で中国は5位。共に独裁国家で、日本やフィリピンを含む西側諸国とは、政治の価値観が根本的に違う国々。

少し歴史を遡ってみると、ロシアの原型は13世紀にモンゴル支配を受けて成立した、ジョチ・ウルス(キプチャク汗国)ということになるらしい。当のロシア人は絶対に認めないでしょうけど、このジョチ・ウルスから領土を継承した帝政ロシア、その後のソビエト連邦に脈々とつながる独裁国家。

一方の中国は、なんと2000年以上前の始皇帝による統一が源流。何度も分裂・再統合があったとは言え、現在の中華人民共和国は、最後にして最大の版図を誇った清王朝の継承者。

どちらにも共通しているのは、大き過ぎる領土。こんなデカい国を治めるには強権的、独裁的な政権じゃないと無理なんでしょうねぇ。なので、何世紀も前から続く、古ぼけた統治スタイルを続けざるを得ない。

20世紀初頭のロシア革命や辛亥革命の時に、「省」のサイズの国による連合国家みたいになっていれば、アメリカ合衆国のように、あるいは民主主義が根付いたかも知れません。もちろんそれは机上の空論で、結局、広大な国土を保つために、国民の自由を制限する独裁が、形式を少し変えて再現することになりました。

そして紆余曲折はあっても、両国は軍事力を背景にした、覇権国家であることを続けています。そんな、周辺国にとって迷惑この上ない国に、自国のエネルギーや食糧、インフラを過度に依存するのは、普通に考えて相当危ない。

で、ここからが今日の本題。翻って我が第二の故郷フィリピン。

つい昨年の話ですが、マニラ首都圏の旅客鉄道網。韓国企業に保守点検を委託していたところ、さまざまなトラブルが多発。列車が立ち往生して乗客が線路を歩いて脱出したり、本来のスピードが出せずにノロノロ運転が続いたり。

元はと言えば、それまでの日系企業を突然外して、地元の会社に任せたのが発端。その乱脈ぶりが祟って、首都の主要交通機関とはとても思えないほどの荒廃を招いたわけです。問題視された韓国企業の責任と言うより、フィリピン政府の雑なやり方が原因。

その後、ドゥッテルテさんが剛腕で日本ODAを頼り、メンテナンス業務は日本に戻されました。案の定、劇的な改善があったらしい。

こうなると、嫌韓日本人たちは拍手喝采なんでしょうけど、日本人の税金を突っ込んで、それまでの放ったらかし状態が、マトモになっただけ。少なくとも、韓国と日本の技術の差、みたいな単純な話ではないでしょう。

さて問題なのは、こんな重要なインフラが、他国に依存しないと運営できないフィリピンの体質。鉄道の件はほんの一例で、おそらくありとあらゆる分野で、他国依存が日常化していると思われます。

一から自国で開発は無理でも、せめて保守点検や安定的な運営だけは、自力でなんとかできるようにならないと、いつまで経っても、いわゆる「植民地根性」からの脱却ができないんじゃないかと思ってしまいます。まだ何とか、大旦那の日本は金を出してますが、もうだいぶヨレヨレなので、この先の大盤振る舞いは期待薄。

ということで、話があちこちに飛んで申し訳ないことながら、今回のウクライナ侵略で考えたことを、取り止めなく書いてみました。


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