2023年8月30日水曜日

穴を埋めるのが下手な人々


冠水したシライ市内の目抜き通り
出典:Digicast Negros

 今年は例年になく、フィリピンに接近したり上陸する台風が多い気がします。一昨日(2023年8月28日)も、9号台風の影響で終日の豪雨に見舞われた、ここネグロス島シライ市。日本の酷暑の原因である、強い太平洋高気圧に行くてを阻まれたのか、ルソン島の東方海上に停滞していたこの台風。驚くことに通常の台風とは逆に南下して来て、ネグロス近辺に逆最接近。

シライでは毎回大雨の度に、河川沿い同じ場所が冠水被害があって、今回もギンハララン、ランタッド、マンブラックなど4箇所でマリスボッグ川が氾濫しました。このマリスボッグ川 は、市域に含まれるシライ山を水源とした2本の川で、海岸近くで合流。その中洲や周辺が、洪水の頻発地帯になっています。

以前にも投稿した通り、ここ10年ほどで台風の頻度は上がっているとは言え、何世代も前から大雨が降ったら市街地が水浸しになるのは分かっている。なので結果的に地代は安く、貧困層が密集することになります。我が家の先代メイドや毎週マッサージに来てくれるセラピスト、以前のイロンゴ語の家庭教師もこの地域の出身者。

もう恒例行事と思うぐらい、大雨→洪水→住民避難が繰り返されているのに、相変わらず市役所がやることと言えば、最寄りの市営体育館や公民館(バランガイホール)への避難者受け入れと、数日分の米の配給。どうして堤防を作ったり、排水設備の整備をしないのか、不思議で仕方ありません。

マニラ首都圏のような大都会は別格としても、他の自治体、例えば近隣のバコロドやバゴなどでは堤防が作られているし、シライが特別貧乏なわけでもない。その証拠に、山間部のリゾートと市の中心部を結ぶ道路なんて、環境保護団体の反対をブッチギりで強行して建設。昨年は、馬鹿デカい新市庁舎を着工。

流域に複数の市町村を含むような川なら、いろいろと調整が難しいかも知れませんが、マリスボッグは市内で完結している河川。市長が決断さえすれば、何とかなりそうなものなんですけどねぇ。しかも現市長のガレゴ氏は、シライ憲政史上初の貧困層出身者。まさに毎度洪水で酷い目にあっている、イーロペス地区の生まれ。

ここからは私の想像ですが、どうもシライ市に限らずフィリピンの国民性として、一から新しい物を作るのは大好きで得意だけど、穴を埋めるようなマイナスの状況をゼロに戻すのは下手なようです。

卑近な例で言えば、公共の場所を清潔に保てないこと。商店街なんて、せめて自分の店の前ぐらい掃除すりゃいいのに、誰も気にしない。もっと酷いのが墓地。市営墓地も、ちょっと値の張るプライベート・セメタリーもゴミが散乱状態。さすがにこの感覚は信じられません。

どうしても人前で喝采を浴びるような、派手な新規事業ばかりが優先されている印象が否めないフィリピン。マニラの鉄道網(LRT、MRT、PNR)にしても、導入はしても、地味にメンテナンスするとかはからっきし苦手、というかまったく重要視していない。なのでおそらく安くあげるために韓国の業者を使って散々なことになり、結局お高い日本の会社に頼ることになる。

せっかくなら、ここで自国の技術者に日本のノウハウを吸収してもらって、将来的には外国に頼らなくてもいいようにするところなんでしょうけど、そういう取り組みをしてるのかなぁ? 今現在は、地下鉄建設が始まっているそうですが、LRTなどと同じ轍を踏まないことを祈るばかり。

ただ、希望が皆無なわけではありません。ドゥテルテ前大統領が打ち出したマニラ湾浄化やボラカイ島の再生は、処理をせずに汚水を垂れ流した施設や業者を問答無用で閉鎖するなどの強行措置によって、ある程度の成果が出たし、ボンボン・マルコス政権になってからも、「死の川」と呼ばれたパシッグの大規模な清掃プロジェクトが進行中。

一見地道で、フィリピンの有権者受けしないと思われてきた、マイナスをゼロに戻す作業も、ちゃんとアピールすれば評価される実績を作ったのは、さすがのドゥテルテさん。コロナも下火になって景気も回復してきたので、これからは地方都市のシライでも「穴を埋める」仕事に脚光を当ててほしいものです。



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