2024年11月13日水曜日

高齢両親の一時帰国

 今年(2024年)の6月から、フィリピン・ネグロス島の我が家に滞在していた88歳と87歳の両親が12月初旬に一時帰国します。父は、耳が遠いものの、日常再活はほぼ問題なくできるのに対して、足腰が弱り認知症の症状が出始めた母は、コロナ禍の時期に日本の介護施設に入っていました。ところがその後、ケアマネージャーさんもびっくりの、要介護3からの奇跡的な回復を経て、フィリピン渡航となった次第。その経緯は昨年の投稿をご覧ください。(お試し介護移住

ただ回復したと言っても、かろうじて自分で歩ける程度。ほぼ終日、テレビを付けっぱなしでベッドでうつらうつらで、会話もなかなか成り立ちません。ところが食事だけは、以前の半分程度ながらしっかり食べる。私が毎日作る料理、炒め物でも揚げ物でも、ラーメン・焼きそば・炒飯などなど、自分の皿に盛った分は、毎回完食。食事時は、表情もそこそこあって、会話は続くかないものの、分かりやすい冗談などには反応して笑顔を見せます。

父に言わせると、日本の実家にいた頃よりは顔色がずいぶん良くなったし、そもそもまったくの無表情だったらしい。手前味噌ながら私の作る料理は、かつての母譲りの味付けなので、食事のおかげで多少なりとも状態が改善しているんしょう。シャワー時など、家内が献身的に介助してくれているのもあるし、平日の昼間はメイドさんもいる。

ちなみに両親が寝起きしているのは、私たちのいる母屋とは完全に独立した、2LDKの一軒家の離れ。つまり、600平米の土地に、丸々2軒の家を建てたわけです。こんな贅沢なことができるのも、フィリピンの、しかも田舎のネグロス島なればこそ。

ところで認知症の件。実際に両親の介護をする前の私の知識といえば、かなり極端な例ばかり。暴力的・攻撃的になったり、出歩けばそのまま徘徊。実際、父の兄(つまり伯父)は、行方不明になったきり。果ては排泄物を全身に塗りたくるなんてことにも。

実際には、いきなりそんな悪夢のようなことになるわけではなく、悪化するにしても段階を踏むもののようです。母の場合、まだ自分でトイレには行けるし歯も自分で磨いている。そして私や家内、孫である私の息子に対しても敬語を使うようになりました。攻撃的なところはカケラもなく、大人しくて扱いは実に楽。

むしろ、まだ頭も身体もしっかりしてる父の方が面倒で、難聴者専用のスピーカーまで買ったのに、それを使わず近所中に響き渡る大音量でテレビ見たり、窓全開でエアコンかけたり。さすがに最近は注意しても逆ギレはしなくなったのは良いけれど、数日もしたらネジが巻き戻るように同じ事の繰り返し。これが老人を相手にするってことなのか。(と書いてる私も、もう62歳なんですけどね)

ということで12月の一時帰国。日本からフィリピンへは、1ヶ月間はビザなし入国可能。さらに1ヶ月、3ヶ月後に、最寄りの入国管理局に行って手数料を払って更新すれば、最大半年までは滞在できます。その決まりに従って、最初から半年で一旦帰国の予定でした。本当はギリギリまで引っ張れば年末までOKなのですが、クリスマスや正月前後にマニラの空港で飛行機乗り換えるのは、どう考えてもたいへん過ぎます。

...と、用意周到に準備したつもりが、つい最近になって滞在可能期間が半年から3年に大幅延長。3ヶ月の更新時に作ったI Card(アイカード)で、そのまま3年間大丈夫になっちゃいました。何じゃそりゃ。

とは言え、本格移住に向けて、父の仕事の整理(まだ仕事やってたんですよ)やら、各種の手続き、実家の整理などもあるので、いずれは帰国しなければいけなかったんですけどね。


2024年11月10日日曜日

日・比・米の選挙


出典:Inquirer.net

 ぼやぼやしてる間にフィリピンでは万聖節・万霊節のお墓参りシーズンが終わり、スーパーやショッピングモールの店員さんが、サンタキャップをかぶり、我が家ではツリーを引っ張り出す季節(と言っても相変わらずの常夏)となりました。普通の日本人なら11月初旬に?と訝しむところですが、9月からクリスマスシーズンだと言い張るフィリピンの人々。どちらかと言うと順当、あるいは、やっと出したか、ぐらいの感覚です。

季節の挨拶はさておき、アメリカではトランプのオッさんがまた大統領に決まっちゃいましたねぇ。前評判では大接戦だ、ハリスが若干有利だなどと、日本のマスコミも煽り大会に加担してましたが、蓋を開ければトランプ圧勝。公然と不倫はするは、あちこちで裁判を起こされるは、移民に対しては事実無根のデッチ上げ発言するは、大統領候補どころか、人間として共感もできなければ、尊敬するべき点が全然ないトンデモない人物だと思うんですが、実際にアメリカに住んでいる人たち、特にお金に余裕のない人たちには、そんなことはどうでも良かったらしい。

実際バイデン氏の民主党政権下の4年間で起こったのが、エゲつないインフレ。円安も相まって、日本からの旅行者がファーストフード食べるだけで、何千円かかったとか、ホテルが高すぎて無理とかの悲鳴。まぁ観光客向けには何でも割高になるのは仕方ないにしても、日本に比べると経済的なセーフティネットが貧弱な、自己責任大国アメリカなので、中間層以下の生活の厳しさは容易に想像できます。

もちろんバイデンさんも指をくわえて傍観していたわけではなく、インフレ削減法を施行するなどして、ある程度の効果はあったようなんですが、食品やガソリンの価格が高止まったまま。平均以下の所得層にすれば「これではトランプ政権の方が、はるかにマシだった」と思うのも仕方ないでしょう。

要するに民衆が最重要視したのが「経済」。平たく言うと「ワシらの生活を楽にしてくれるのはどっちだ?」なわけです。この点、高学歴で弁護士のハリスさんは、イメージでかなり損をしたでしょう。「あんたのような金持ちに、ワシらの苦しさが分かるか?お高くとまりやがって」と反発して層も多かったんでしょうね。女性だから、あるいはインド系だからというのは、大きな問題ではなかったと思います。

と、ここまで書いて、ハタと思い当たったのが、つい先日の日本の衆議院選。マスコミは「裏金議員」をお題目のように唱えてましたが、有権者の心の琴線により強く触れたのが「103万円の壁打破」つまり経済政策を一番に掲げた国民民主党。代表の玉木氏や幹事長の榛葉氏の分かりやすい口調と際立ったキャラクターもあって、まだまだマイナー政党ながら議席は3倍増。与党過半数割れで、おそらく狙い通りの絶妙のポジションと、当初からブレない政策実現一本の姿勢に、私はとても期待しております。

かたや本来なら、もっと脚光を浴びてもよさそうな野党第一党の立憲民主。こちらはイマイチ人気のない野田代表。しかも与党の失点による消極的な選択の側面が大なので、ネットニュースでの注目度は低い。政策もはっきりしないし過去に政権取って大失敗してるし。

つまり、日本でもアメリカでも「国民の暮らし向を良くします」という政策を、分かりやすく伝えた方が、結局は強いということなんでしょう。日本の場合は、この10年以上、与党がやりたい放題だったけど、他に頼れる野党が見当たらなかった。ここへ来てやっと少しはマトモなこと言う人が出て来たという感じ。

そして最後に我がフィリピンではどうかと言うと、やっぱり引き合いに出したいのは2022年の大統領選。なんとなく今回のアメリカと構図が似ていて、かつて20年に及ぶ独裁政治でフィリピンの経済も国家倫理もぶち壊したマルコスの息子のBBM(ボンボン・マルコス)と、才色兼備の女性弁護士レニ・ロブレドの、事実上の一騎打ち。トランプほどのダーティさはないにしても、巨額の脱税疑惑もあって、そもそも大統領候補になること自体が常識外れと思いきや、副大統領候補に据えたサラ・ドゥテルテ女史の圧倒的な人気も相まってか、こちらも圧勝。

アメリカや日本の場合のポイントが「経済」だったのに対して、フィリピンの場合は切り口が全く異なるけれど、やっぱり「フェイスブック」がキーワードだったように思います。これは以前にも書きましたが、ちょっと信じられないことに、父マルコスの治世はフィリピンの黄金時代だったという、フェイスブックに連日投稿された、誰が考えてもバレバレの嘘に、当時を知らない若い世代がコロっと騙されて、雪崩を打ってBBMに投票。もちろんソーシャル・メディアを使うこと自体は違法ではなく、日本の国民民主党など、実に巧みに活用して、玉木氏や榛葉氏の知名度を上げました。

ところがBBMの場合は、明らかに「悪用」。さらにそれを信じてしまう国民にも失望しました。これは対立候補のロブレドの敗北に留まらず、エドサ革命後40年近い、フィリピン教育の敗北じゃないでしょうか。まぁ日本も歴史教育に関しては、お世辞にも成功しているとは言えませんが、例えば戦前〜戦中の軍国主義の時代が素晴らしかったと本気で信じている人は、かなりの少数派でしょう。

ということで、政治向きの話を延々と書いてしまったので「もう二度とこんなブログ読むか!」とブチ切れた方もおられるかも知れませんが、フィリピンにとって、日本とアメリカの政治が大きく変わると、結構大きな影響が出るもの。今後も引き続き、この3国の政局と政策は、注視していこうと思います。