2024年11月28日木曜日

マルコス対サラ 危ないフィリピン政局


出典:One Network

 いやぁ驚きました。現職の副大統領が「もし私が殺されたら、大統領とその夫人を暗殺するよう、殺し屋に依頼した」と発言したんですよ。さすがにこの破天荒なニュースは、フィリピン国内だけでなく、NHKを始め日本でもかなり大きく報道されたので、フィリピン在住じゃなくても、ご存知の方は多いはず。当然のように、当のサラ・ドゥテルテ副大統領に対して大統領のBBMことボンボン・マルコスは猛烈に反発。刑事告発に向けて捜査が開始されました。

周知の通り、BBMは、かの悪名高いフェルディナンド・マルコス元大統領の息子。1965年から約20年に渡り大統領の座にいて、途中から戒厳令による圧政で国家を私物化。かつては東南アジアの優等生と呼ばれたフィリピン経済を「東南アジアの病人」と揶揄されるまで落ちぶれさせ、多くの国民を投獄・密殺しました。

極め付けは、反マルコスの急先鋒で一時アメリカに追放されていたベニグノ・アキノ上院議員を、帰国直後に空港で殺害。この事件については、マルコスが直接指示を下したかどうかは、今に至るまではっきりしていませんが、国民はマルコスが殺したと信じても無理がない状況。結局アキノ暗殺が直接の引き金になり、1986年、マルコスとその家族はアメリカへ亡命し、政権は崩壊しました。これが世に言うエドゥサ革命です。

その息子がなぜ大統領になり、マルコス一族が復権したかは、何度もこのブログに書きましたので割愛します。

さてその副大統領として、現政権を支えてきたはずのサラ。こちらも大統領の2世で、前大統領のロドリゴ・ドゥテルテの娘。父の前職であるダバオ市長を引き継ぎ、父同様の政治手腕を発揮。彼女の場合、殺されたアキノ氏に代わって大統領になった未亡人のコラソン・アキノ氏が、まったく政治経験がなく目立った成果を出せなかったのに比べ、少なくともリーダーとしての素養は証明済み。

ちなみにサラさんは、一時教育省長官を兼務。教育省(DepED)勤務の家内のビッグ・ボスだったんですよね。家内が言うには、短い在任期間ながら的確な政策を実行し、地方にも頻繁に顔を出し、職員には人気だったそうです。

次期大統領の呼び声も高いサラ氏ですが、ここ最近はBBMとの関係が悪化。報道によると、父ロドリゴの大統領時代の「麻薬戦争」政策での超法規的殺人の責任追及で、BBMが国際刑事裁判所へ協力する姿勢が原因とのこと。これに関してはサラじゃなくても「お前が言うな」とツっこみたくなりますけどね。

まぁ、正副大統領の不仲は、ロドリゴ・ドゥテルテとレニー・ロブレドの時も起こったことなので、珍しくはなかったものの、殺害予告まで出てくると冗談では済みません。しかも今回は、両方とも父が、そこに至るまでの経緯は別として、「人殺し」を命じた張本人。もっと言うと、合法・違法を問わず銃器が流通し、堅気の市民でも数万円から数十万円程度で、殺し屋が雇えるお国柄。サラ氏の発言がどれだけ物騒なのかは、日本人の私にも想像はつきます。

なので、サラ氏が自分の言葉の重大さに気づかず、うっかり口が滑ったとも思えないので、刑事事件になることは十分予測していたはず。おそらく自分に注目を集めた上で、公の場で何らかの暴露なり、BBMとの対決を図るんじゃないでしょうか?

ということで、年末になろうかというこの時期、日本、アメリカで政治の世界が大騒ぎなのに加えて、ダントツにきな臭い局面に突入したフィリピンの政治から、しばらく目が離せません。


2024年11月23日土曜日

生活保護は困窮者のみの為ならず


マニラ首都圏マカティのビル群 出典:マカティ市HP

 ここ最近、フィリピン、日本、そしてその共通の巨大な隣国である中国で、おそらく偶然ではない、治安の悪化が目立っています。

まずは、私と家族の住むフィリピン。もともと犯罪率は高く、警察や役人までが平然と汚職に手を染める体質のお国柄なので、今更...と思われるかも知れません。ただクリスマスを控えてのマニラ首都圏で、日本人が狙われる強盗が7件連続で発生。(2024年11月19日現在)。深夜一人で、観光客然とした格好で歩いていたら危ないのは昔からですが、最近のケースは、複数で比較的明るく繁華な場所にいても襲われているとのこと。

こっちに住んでると分かるんですが、たとえ無言でも日本人観光客って目立つんですよね。どこが?と聞かれると困るんですが、ちょっとした服装の違いだったり、歩き方だったり。長く住んでいる私のような移住者でも、地元にいる時はイロンゴ語(西ネグロスの方言)で話しかけられるのに、たまにマニラやセブに出かけると、タクシーやレジの人に一撃で見破られます。

日本経済が低迷し、日本人観光客の数自体はずいぶん減ってると思うんですが、いまだに日本人=お金持ちというステレオタイプは健在なようです。とは言え、ここまで立て続けなのは、私もちょっと記憶にありません。

次が日本。少し前の「漫画村」「ルフィー」や、このところネットニュースを騒がしている「JPドラゴン」など、犯罪者がフィリピンに高跳びするの事件は、何十年も前からありましたけど、今では単に逃亡先に選ぶだけでなく、堂々とフィリピンを根城にして、犯罪を重ねる日本人の面汚しみたいな輩もいる始末。

さらに末期的なのは「闇バイト」。まず、このネーミングが大問題で、字面だけ見ると、若者を対象にしたちょっと危険なアルバイトのようですが、捕まれば社会人としての将来は台無しになるし、傷害・殺人となると、十年から何十年にも渡っての服役になってしまう重大犯罪。「共犯者募集」ぐらいの強い文言を当てるべきでしょう。

そして一番恐ろしいレベルなのが中国。9月(2024年)に、深圳の日本人学校に通う10歳の男の子が刺殺される、何とも悲惨な殺人事件があり、その後、これまた立て続けに、不特定多数の人たちを、ナイフで刺したり自動車で轢いたりの事件。中国でこの種の犯罪は「報復社会」つまり社会への報復、と呼ばれるそうで、背景にはコロナ禍での過剰なまでの制限と、それに伴う抑圧があるらしい。日本やフィリピンでは、表向きコロナ禍対応は一段落しているのに、中国では深刻な後遺症が続き、経済的に不遇な人々も多い。何といっても母数がデカいだけに、その怨念の総量たるや、想像を絶するものがあります。

この3カ国で共通するのが、社会的セーフティ・ネットが未整備あるいは不十分なこと。この分野では比較的マシな日本ですら、生活保護の捕捉率はわずか2割程度。これは、保護を受けようとすると、まるで犯罪者か何かのように、受給窓口では尋問され、世間的には後ろ指をさされ、徹底的にプライドを傷つけられる文化が理由なんじゃないかと思います。悪しき自己責任論、ここに極まれりですね。

ちなみにコロナ時に、当時の明石市長の泉房穂さんが取った処置は、可及的速やかに困っている人に現金を支給すること。細かい審査や国の対応を待たず、家賃を払えず閉店を余儀なくされている個人商店に即金で100万(給付ではなく貸付ですが)。いちいち各商店の経営内容の審査などしていたら、店が潰れてしまいますからね。でも、これがセーフティ・ネットの本来あるべき姿。受給者が変な罪悪感を持ったりする暇もないほど、事務的に素早く処理するのが正しい。

こう書くと必ず聴こえてくるのが、不正受給が増える、国民の税金を無駄にするな、という声。この手の指摘は、だいたい嫌中とセットになってることが多いですね。でもセーフティ・ネットは、溺れかけている人に差し伸べるものですから、拙速もやむなし。多少の不正は仕方がないと思います。完璧を期するがあまり溺死者続出では、制度の意味がない。

そしてよく考えないといけないのは、結局のところセーフティ・ネットは、困窮者だけでなく、生活保護の世話になってない人の安全も守っていること。誰にも助けてもらえず自暴自棄になって犯罪に走るような人が減れば、治安は回復します。その逆になってるのが、まさに現在の中国でしょう。

ただ難しいのは、セーフティ・ネットのお陰で安全が保たれているかどうかは、判断ができないところ。起こらなかった犯罪の数は、数えることができませんからね。

ということで、国民民主党が公約に掲げ衆院選で躍進の原動力になった「103万円の壁打破」が、現実に向けて動き出したのを見ると、少なくとも日本では、困った人を助ける方向に風向きが変わってきたようです。この政策が実施されそれなりの効果が出れば、セーフティ・ネットの拡充も注目されると期待しております。



2024年11月21日木曜日

生まれて初めて見た火山灰


11月2日 噴煙を上げるカンラオン 出典:Inquirer

 半年ほど前に、爆発的に噴煙を高々と噴き上げ、フィリピン全国レベルの大ニュースとなった、ネグロス島の主峰カンラオン火山。日本の外務省からの注意喚起も出されるほどで、一時は最寄りのシライ・バコロド空港が閉鎖になり、ちょっとヤバいんじゃないかと心配しましたが、ここ最近は平穏を保っておりました。

ところが先月(2024年10月)ごろから、またもや小噴火が頻発。我が家からは50kmの距離があって、煙が見えたりはしないものの、日本の緊急地震警報みたいに、フィリピン火山地震研究所(略称 PHIVOLCS フィボルクス)という所から、全携帯ショートメッセージが配信されます。メイドのグレイスは、これに大音量の着信音をつけているので、多い時など1日に何度も驚かされるハメに。

まぁ同じ島だし、航空便の離発着にも影響大なので、無関心ではいられないけれど、私たちの住むシライ市に直接の被害はないし、何となく遠い場所での出来事のように感じてました。ところが11月の初旬、以前投稿した再就職の件で、バコロド市内に車で出かけた時のこと。朝からお昼前までのミーティングで、事務所前に3時間ほど駐車していたら、愛車のトヨタ・アバンザのフロントグラスにうっすら砂埃。

少し前まで、街中でも未舗装で地面剥き出しの場所がチラホラだったバコロド。さすがに好景気が10年以上も続き、そんな場所も減って、車に砂埃が積もるようなこともなくなったはずが、どうやらこれはカンラオンからの火山灰。

日本でも鹿児島に住んでる人は、日常的な桜島からの降灰を経験しておられるでしょうけど、私は火山が近くにはない、関西出身。40過ぎるまでずっと大阪近辺で暮らし、ほんの1年だけ転勤で横浜に住んで、真っ黒けの地面を見て「これが噂に聞く関東ローム層か!」と感動する程度の火山知らず。あとは子供の頃、観光で浅間山や白根山に行ったぐらい。

なので、実物の火山灰を見るのも触るのもこれが初めて。

書物やテレビ番組では知っていましたが、ものすごく細かい粒子なんですね。まるで日本から持って来て、時々食べ過ぎで世話になる太田胃散みたい。うっすら積もるぐらいなので、事務所からホウキを借りて、チャチャっと車の掃除すればお終いだったけど、これが何十センチも積もったら、屋内にも入ってきて呼吸器系の病気になったりするのも分かります。しかも雨が降ったらどこもかしこも泥だらけ。実際、半年前の大噴火では、付近の農村が泥流のために大被害。

ということで、他人事と思ってたら、シライよりほんの10kmほどカンラオン火山に近いバコロドでは、日々噴火の脅威を感じずにはいられない状況。こうなると、まったく先が読めない自然災害の恐ろしさ。神ならぬ私としては、ひたすら大事にならないことを祈るばかり。

差し当たっては来月、高齢両親の一時帰国と、年明け早々の私のダバオ行きが控えております。どうか往路も復路も無事飛行機が飛びますように。



2024年11月19日火曜日

ネット化?愚民化?兵庫県知事選

 つい先日、日本の衆院選とアメリカ大統領選、それらと比較して2年前のフィリピン大統領選の話を書いたところですが、性懲りもなくまた選挙のお話。

フィリピン大統領選でBBM(ボンボン・マルコス)が当選した背景には、親の代に酷い目に遭ったばかりの歴史に学ぶ事なく、マルコス陣営が用意したネット上のデマ「父マルコスの時代は、フィリピンの黄金時代だった」に、国民の多数がまんまと騙されました。外国人の私からすれば(あるいは、それなりに高等教育を受けたフィリピン国民も含めて)、なぜこの人物を選ぶ?という結果になったわけです。

ところが、まさか日本ではありえないと思っていたことが、私が生まれ育った兵庫県の県知事選で起こってしまいました。フィリピンの場合は、近代の歴史教育を怠ったことによる、フィリピン教育の敗北だったのに対し、今回の兵庫県では、テレビ・新聞などの大手マスメディアの敗北。

原因は明らかに、約10年前の第二次安倍政権の頃から顕著になった、マスコミの政治や選挙への腰抜けぶり。肝心の選挙運動中に、中立を保つという口実のもと、候補者(特に与党の)のメガティブな側面やスキャンダルなどを報じない姿勢を続けて、投票日にだけ大金をかけて速報、特番の嵐。当落が判明してから、今頃それを言うか?みたいな報道ばかりでした。

立法・行政・司法の三権分立に並び立ち、報道が四つ目の独立権力で、健全な民主主義運営のために必要不可欠なのが先進国では当たり前のはずが、日本では大手新聞社やテレビ局が、完全に与党の番犬状態。少なくとも報道の自由に関しては、後進国とされるフィリピンの方がよっぽど先進的。前ドゥテルテ政権の行き過ぎた対麻薬政策に対して、敢然と反旗を翻しノーベル平和賞を受賞したニュース・サイト、ラップラーの編集長ラッサ氏が、その代表格。(フィリピン国内では、ラッサ氏への批判も多いですが)

もちろん日本にも、比較的経営規模の小さな地方紙では、気骨のある記者もいるようですが、全体的には、大局に何の影響もない政治家や芸能人のスキャンダルの、面白おかしく報道する番組や記事ばかりが目立ちます。これはフィリピンにいてもネット経由でだいたい分かる。これでは普通の人たちが、マスコミ不信に陥るのも無理はありません。私など、朝日や読売などのネット記事は、見出しだけ見て、詳しく知りたい時は、ツイッターなどで日頃から信用してフォローしている人の意見を参照しています。

そこにつけ込んだのが、「NHKから国民を守る党」で、政治を引っ掻き回している立花孝志氏。前知事を擁護するためだけに立候補し、お得意のユーチューブを駆使して、一大キャンペーンを展開。そこへ大手メディアにそっぽを向いた人たちが流れ込んでらしい。

私が危機感を持つのは「ユーチューブで真実を知った」と思い込む人が増えること。これでは陰謀論を撒き散らす悪質ユーチューバーが、一国の世論を乗っ取ることだってできる。今回争点になった、前知事の行動にしても、自殺者まで出ているぐらいなので、問題があるのは間違いないのに、大手メディアからは、「パワハラ」「おねだり」など茶化した見出しのコタツ記事が量産されるのみ。本来なら、係者全員に詳細な聞き取り取材を行い、事実関係を詳らかにしたドキュメンタリーをが作られても不思議ではない事件。例えば、かつての首相を退陣に追い込んだ、立花隆さんの「田中角栄研究」。(おなじタチバナ・タカシなのは、何とも皮肉な)

実は、アメリカ大統領選でも、まったく同じ現象が起こったそうで、こちらの場合に影響力を行使したのが、同じくネット経由のポッドキャスト。選挙運動中トランプ氏は、登録者数1,450万人を誇る、人気コメディアンのジョー・ローガンのポッドキャスト番組で政策を語り、若年男性層に大きくアピールしたと言われています。

さすがに今回の選挙結果を受けて、日本の一部ワイドショーのメイン・パーソナリティの中には、反省の弁を口にする人もいるようです。それでなくても全国紙は発行部数を激減させ、テレビ離れも進む中、「若者の〜離れ」なんて言い訳をしている場合ではありません。こうなったのは単純に、信頼できない・面白くないだけ。ただ各紙・各放送局がそれを真摯に受け止めるとは思えませんが。

おそらくこうしたネット上での政治・選挙活動は、今後ますます過熱し、来年の参議院選では、ネット活用に長けた陣営ほど票を伸ばすのは間違いないでしょう。心配なのは、法整備も有権者のネットリテラシーも、まったく未熟なこと。これでは玉石混交も甚だしく、ネットでの情報収集に不慣れな人ほど、不確かな、あるいは明らかに作為的な虚偽に、流されるリスクが高い。

ここで提案したいのは、かつてのアメリカCNNが彗星の如く報道の世界に現れたように、全国紙の販売網や、地上波チャンネルの既得権に関係ない、ネットに特化した、本当の意味での中立を保ったジャーナリズムの登場です。要するに日本版のラップラー。フィリピンの片田舎で私が思いつくぐらいですから、心血注いだ取材結果を上層部に握りつぶされて臍(ほぞ)を噛んでいる、心あるライターや記者の方々は、当然考えておられると思うんですけどねぇ。



2024年11月14日木曜日

62歳の再就職


 甚だ唐突ながら、来年、再就職することになりそうです。

半年ほど前に、バコロド出身で日本とフィリピンを行き来しながら仕事をしている、フィリピン人の知り合いから連絡があって、日本語の教師をしてくれませんか?とのオファー。こちらは、12年も前に早期退職して隠居生活。まぁ週に1〜2回程度、数人の生徒さんに教えるぐらいかと思って軽く引き受けました。一応私のフィリピンでの永住ビザは、就労しても大丈夫なタイプ。

その後しばらく音沙汰無く、これは立ち消えかと、ほとんど忘れかけた頃にまた連絡。何と、バコロド市内にパートナーを見つけて、本格的に、学校と付随する宿泊施設を建設中。しかも正式に職業訓練学校としての認可を申請中なんだとか。フィリピンのお役所仕事あるあるで、この手続きが実に煩瑣でやり直しが多く、予定より開校が3ヶ月遅れますとのこと。

そこから急に話が具体的になって来て、つい先日は建設中の学校の隣で、第一回目のミーティング。これが、想像よりはるかに規模が大きく、生徒数も何十人規模。しかもかなり短期間でN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる)まで育成すると言います。そのために土日以外は学校内の宿舎に寝泊まりして、日本語漬けに。それだけでなく、日本の文化も教えるので、畳を敷いた部屋も用意。

一番驚いたのは、報酬の金額。日本円にしたら、せいぜいアルバイトで頑張った、ぐらいなんですが、ネグロス島基準で考えたら、ベテランの管理職でやっと手が届くかどうかのレベル。教師は私だけでなく、他に数名のフィリピン人もいて、そのアシスタント的な位置付けながら、ネイティブは私だけ。なので、とても片手間では済まない業務量。そのために十分な金銭的な動機付けが必要、ということなんでしょうね。

アメリカやシンガポールなどに比べると給料が安く、最近の円安も相まって、OFW(海外フィリピン労働者)には、あまり人気のない日本市場ながら、今回の条件は、オフィス勤務で日本人社員と同じ待遇。30歳以下の4年制大卒にリクルートをかけるそうです。そうなると、欧米に比べれば近いし、中近東で建設労働やメイド業に就くよりはるかに安全。加えて若い世代には、アニメや日本食ブームで、日本への憧れもあります。

冗談じゃなく、今高校生の息子が大学を卒業したら、就職させてもらいたいような好条件。

これだと、オンライン授業ベースで、週一回か二回なんて悠長なことは言ってられません。少なくとも最初の1ヶ月ぐらいは対面授業でみっちりやらないと、とても無理。ということで、来年からは、朝6時起きで家族の弁当作って、毎日車でバコロドへ出勤という、12年ぶりに、かつてのサラリーマン時代の再来となりそうです。そろそろリハビリ始めなくちゃ。



2024年11月13日水曜日

高齢両親の一時帰国

 今年(2024年)の6月から、フィリピン・ネグロス島の我が家に滞在していた88歳と87歳の両親が12月初旬に一時帰国します。父は、耳が遠いものの、日常再活はほぼ問題なくできるのに対して、足腰が弱り認知症の症状が出始めた母は、コロナ禍の時期に日本の介護施設に入っていました。ところがその後、ケアマネージャーさんもびっくりの、要介護3からの奇跡的な回復を経て、フィリピン渡航となった次第。その経緯は昨年の投稿をご覧ください。(お試し介護移住

ただ回復したと言っても、かろうじて自分で歩ける程度。ほぼ終日、テレビを付けっぱなしでベッドでうつらうつらで、会話もなかなか成り立ちません。ところが食事だけは、以前の半分程度ながらしっかり食べる。私が毎日作る料理、炒め物でも揚げ物でも、ラーメン・焼きそば・炒飯などなど、自分の皿に盛った分は、毎回完食。食事時は、表情もそこそこあって、会話は続くかないものの、分かりやすい冗談などには反応して笑顔を見せます。

父に言わせると、日本の実家にいた頃よりは顔色がずいぶん良くなったし、そもそもまったくの無表情だったらしい。手前味噌ながら私の作る料理は、かつての母譲りの味付けなので、食事のおかげで多少なりとも状態が改善しているんしょう。シャワー時など、家内が献身的に介助してくれているのもあるし、平日の昼間はメイドさんもいる。

ちなみに両親が寝起きしているのは、私たちのいる母屋とは完全に独立した、2LDKの一軒家の離れ。つまり、600平米の土地に、丸々2軒の家を建てたわけです。こんな贅沢なことができるのも、フィリピンの、しかも田舎のネグロス島なればこそ。

ところで認知症の件。実際に両親の介護をする前の私の知識といえば、かなり極端な例ばかり。暴力的・攻撃的になったり、出歩けばそのまま徘徊。実際、父の兄(つまり伯父)は、行方不明になったきり。果ては排泄物を全身に塗りたくるなんてことにも。

実際には、いきなりそんな悪夢のようなことになるわけではなく、悪化するにしても段階を踏むもののようです。母の場合、まだ自分でトイレには行けるし歯も自分で磨いている。そして私や家内、孫である私の息子に対しても敬語を使うようになりました。攻撃的なところはカケラもなく、大人しくて扱いは実に楽。

むしろ、まだ頭も身体もしっかりしてる父の方が面倒で、難聴者専用のスピーカーまで買ったのに、それを使わず近所中に響き渡る大音量でテレビ見たり、窓全開でエアコンかけたり。さすがに最近は注意しても逆ギレはしなくなったのは良いけれど、数日もしたらネジが巻き戻るように同じ事の繰り返し。これが老人を相手にするってことなのか。(と書いてる私も、もう62歳なんですけどね)

ということで12月の一時帰国。日本からフィリピンへは、1ヶ月間はビザなし入国可能。さらに1ヶ月、3ヶ月後に、最寄りの入国管理局に行って手数料を払って更新すれば、最大半年までは滞在できます。その決まりに従って、最初から半年で一旦帰国の予定でした。本当はギリギリまで引っ張れば年末までOKなのですが、クリスマスや正月前後にマニラの空港で飛行機乗り換えるのは、どう考えてもたいへん過ぎます。

...と、用意周到に準備したつもりが、つい最近になって滞在可能期間が半年から3年に大幅延長。3ヶ月の更新時に作ったI Card(アイカード)で、そのまま3年間大丈夫になっちゃいました。何じゃそりゃ。

とは言え、本格移住に向けて、父の仕事の整理(まだ仕事やってたんですよ)やら、各種の手続き、実家の整理などもあるので、いずれは帰国しなければいけなかったんですけどね。


2024年11月10日日曜日

日・比・米の選挙


出典:Inquirer.net

 ぼやぼやしてる間にフィリピンでは万聖節・万霊節のお墓参りシーズンが終わり、スーパーやショッピングモールの店員さんが、サンタキャップをかぶり、我が家ではツリーを引っ張り出す季節(と言っても相変わらずの常夏)となりました。普通の日本人なら11月初旬に?と訝しむところですが、9月からクリスマスシーズンだと言い張るフィリピンの人々。どちらかと言うと順当、あるいは、やっと出したか、ぐらいの感覚です。

季節の挨拶はさておき、アメリカではトランプのオッさんがまた大統領に決まっちゃいましたねぇ。前評判では大接戦だ、ハリスが若干有利だなどと、日本のマスコミも煽り大会に加担してましたが、蓋を開ければトランプ圧勝。公然と不倫はするは、あちこちで裁判を起こされるは、移民に対しては事実無根のデッチ上げ発言するは、大統領候補どころか、人間として共感もできなければ、尊敬するべき点が全然ないトンデモない人物だと思うんですが、実際にアメリカに住んでいる人たち、特にお金に余裕のない人たちには、そんなことはどうでも良かったらしい。

実際バイデン氏の民主党政権下の4年間で起こったのが、エゲつないインフレ。円安も相まって、日本からの旅行者がファーストフード食べるだけで、何千円かかったとか、ホテルが高すぎて無理とかの悲鳴。まぁ観光客向けには何でも割高になるのは仕方ないにしても、日本に比べると経済的なセーフティネットが貧弱な、自己責任大国アメリカなので、中間層以下の生活の厳しさは容易に想像できます。

もちろんバイデンさんも指をくわえて傍観していたわけではなく、インフレ削減法を施行するなどして、ある程度の効果はあったようなんですが、食品やガソリンの価格が高止まったまま。平均以下の所得層にすれば「これではトランプ政権の方が、はるかにマシだった」と思うのも仕方ないでしょう。

要するに民衆が最重要視したのが「経済」。平たく言うと「ワシらの生活を楽にしてくれるのはどっちだ?」なわけです。この点、高学歴で弁護士のハリスさんは、イメージでかなり損をしたでしょう。「あんたのような金持ちに、ワシらの苦しさが分かるか?お高くとまりやがって」と反発して層も多かったんでしょうね。女性だから、あるいはインド系だからというのは、大きな問題ではなかったと思います。

と、ここまで書いて、ハタと思い当たったのが、つい先日の日本の衆議院選。マスコミは「裏金議員」をお題目のように唱えてましたが、有権者の心の琴線により強く触れたのが「103万円の壁打破」つまり経済政策を一番に掲げた国民民主党。代表の玉木氏や幹事長の榛葉氏の分かりやすい口調と際立ったキャラクターもあって、まだまだマイナー政党ながら議席は3倍増。与党過半数割れで、おそらく狙い通りの絶妙のポジションと、当初からブレない政策実現一本の姿勢に、私はとても期待しております。

かたや本来なら、もっと脚光を浴びてもよさそうな野党第一党の立憲民主。こちらはイマイチ人気のない野田代表。しかも与党の失点による消極的な選択の側面が大なので、ネットニュースでの注目度は低い。政策もはっきりしないし過去に政権取って大失敗してるし。

つまり、日本でもアメリカでも「国民の暮らし向を良くします」という政策を、分かりやすく伝えた方が、結局は強いということなんでしょう。日本の場合は、この10年以上、与党がやりたい放題だったけど、他に頼れる野党が見当たらなかった。ここへ来てやっと少しはマトモなこと言う人が出て来たという感じ。

そして最後に我がフィリピンではどうかと言うと、やっぱり引き合いに出したいのは2022年の大統領選。なんとなく今回のアメリカと構図が似ていて、かつて20年に及ぶ独裁政治でフィリピンの経済も国家倫理もぶち壊したマルコスの息子のBBM(ボンボン・マルコス)と、才色兼備の女性弁護士レニ・ロブレドの、事実上の一騎打ち。トランプほどのダーティさはないにしても、巨額の脱税疑惑もあって、そもそも大統領候補になること自体が常識外れと思いきや、副大統領候補に据えたサラ・ドゥテルテ女史の圧倒的な人気も相まってか、こちらも圧勝。

アメリカや日本の場合のポイントが「経済」だったのに対して、フィリピンの場合は切り口が全く異なるけれど、やっぱり「フェイスブック」がキーワードだったように思います。これは以前にも書きましたが、ちょっと信じられないことに、父マルコスの治世はフィリピンの黄金時代だったという、フェイスブックに連日投稿された、誰が考えてもバレバレの嘘に、当時を知らない若い世代がコロっと騙されて、雪崩を打ってBBMに投票。もちろんソーシャル・メディアを使うこと自体は違法ではなく、日本の国民民主党など、実に巧みに活用して、玉木氏や榛葉氏の知名度を上げました。

ところがBBMの場合は、明らかに「悪用」。さらにそれを信じてしまう国民にも失望しました。これは対立候補のロブレドの敗北に留まらず、エドサ革命後40年近い、フィリピン教育の敗北じゃないでしょうか。まぁ日本も歴史教育に関しては、お世辞にも成功しているとは言えませんが、例えば戦前〜戦中の軍国主義の時代が素晴らしかったと本気で信じている人は、かなりの少数派でしょう。

ということで、政治向きの話を延々と書いてしまったので「もう二度とこんなブログ読むか!」とブチ切れた方もおられるかも知れませんが、フィリピンにとって、日本とアメリカの政治が大きく変わると、結構大きな影響が出るもの。今後も引き続き、この3国の政局と政策は、注視していこうと思います。