前回に引き続き、ミンダナオ島滞在について。5日間にわたって、ミンダナオ子供図書館(MCL)の子供たちと、食事を一緒に作って食べるという経験しました。日頃、フィリピンの家族のために、地元の食材を使った食事を毎日用意しているので、料理したり食材を買い揃えるという行為は、特別新しい経験ではなかったのですが、日々の食事を支えるスタッフや子供たちのリアクションには、いろいろと考えさせられました。
まず前々回にも書いた通り、決して潤沢な予算があるわけではないMCLで、何十人もの食べ盛りの子供たちに食べさせるためには、いかに安く食材を入手するかが一番の課題。そのために、寮母さんたちは毎週の買い出しに市内の市場やスーパーを駆けずり回っておられます。それでも、食卓に並ぶおかずを見ていると、品数も量も十分とは言えないなぁというのが、私の率直な感想。
もちろん、子供たちが生まれた環境からすれば、とにかく三度の食事にはありついているので、もし食事内容について質問したとしても、少なくとも不満はないし、文句を言ったらバチが当たる...という感じなんだろうとは思います。日本人スタッフの梓さんによると、1日1度の食事さえ難しいような家庭から、新しく入ってきた子供の場合、最初のうちは食べきれないほどのご飯を自分の皿に盛ってしまう。そして他の子供が食べ終わった後も、黙々と食べ続けるなんてことも。
ちなみにフィリピンでは、貧困層とまではいかなくても、経済的に余裕ない人は、僅かなおかずでたくさんのご飯を食べるスタイルが一般的。以前の我が家のメイドさんが典型的にこれ。通いなのでお昼だけは、私が家族に作ったものを一緒に食べてましたが、例えば前夜のカレーの残りを出すと、山盛りのご飯に、ちょっぴりのカレー。時々食べすぎて、午後からの仕事に支障が出るほど。
なので、私が追加で作った料理を、みんながすごく喜んでくれたのは、料理の出来や味つけ以前に、単純に食べられる量が増えたというのも大きいでしょう。さらに、日頃なかなか口にできない食材、例えばシチューに入れたマッシュルームとか、お好み焼きにトッピングした刻んだエビなどが嬉しい。朝食に出したサンドイッチでは、中身の卵よりパンそのもの。MCLでは3食とも米が基本ですからね。一緒に食べててそう言われると、心の中で「そこか〜い」ってツッコみつつも、なんだ不憫になってしまいました。
蛇足ながら、最後の昼食に作ったスパゲティ・ナボリタン。寮母のジョイさんが「テースティング(味見)」と称して、食事前にけっこうな量を食べてたのが可笑しかった。
市場にてジョイさんとツーショット |
その反面、バリエーションの幅が少なくても、MCLでは野菜や肉のバランスも、それなりに考えられた献立なので、まだ救われてます。かつて私が接したことのある貧困層の食生活は、まったくお話になりません。
そもそも食育どころか、親がまともな教育を受けていないこともあり、子供が好むものだけを与えるなどして、虫歯だらけだったり、極端な偏食家に育ってしまうケースがとても多い。つまり、肉と白米だけしか食べない、逆ビーガンな人たち。なので、お金に困っているのに肥満だったり、糖尿病や心臓発作で亡くなる人がどれだけ多いか。平均寿命が日本より約15年から20年も短いのは、新生児の死亡率の高さや医療の不備もありますが、日頃の食生活が影響している側面も無視できないと思います。
ちなみに、おかず少なめでご飯大盛りって、なんだか既視感があるなと思ったら、私の母がよく話してくれた子供時代の食生活。それも、戦時中や終戦直後の食糧配給制の時代ではなく、かなり食料事情が改善してきた昭和20年代の後半から30年あたり(1950年頃)。まずは米増産!ということで、白いご飯だけは腹一杯食べられるようになったけど、毎日お肉とか毎朝卵はまだちょっと届かず。たまに「今日はすき焼き」なんて言われると、みんな大喜び。子沢山も今のフィリピンに似ていて、母は6人、父は8人の兄弟姉妹だったそうです。
意外なところで、父母が子供の頃、毎日食事を作っていたであろう祖母たちの苦労に思いを馳せてしまいました。ということで、MCLでの料理編はこれで終わり。次回はフィリピンの子供たちの前で、変な日本人がタガログ語の歌を歌った話です。
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