2025年4月30日水曜日

新幹線と侍とガンダム

 ここ最近、フィリピン・ネグロス島に住んでるのに、日本のアニメや映画を一生懸命観ております。というのは、日本や諸外国に比べて、ほとんど10年か、それ以上遅れて、ブロードバンド化を果たした西ネグロスの州都バコロドとその周辺。バコロドの隣街である、ここシライ市でも、やっと数年前に光ケーブルが敷設され、現在、我が家の通信速度は、200〜300Mbps程度。時々止まったり、停電もあるものの、やっと本来のパフォーマンスで、ネットフリックスやアマゾン・プライム、ユーチューブの高画質映像が楽しめるようになりました。

単に、絵と音がきれいになっただけでなく、2020年代に入った頃から、日本製コンテンツが俄然面白くなってきた印象。アニメに関しては、もっと以前から日本国外からの評価も高く、ここフィリピンでも「ONE PIECE」や「鬼滅の刃」「進撃の巨人」に「薬屋のひとりごと」「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」などなど、私が観てる番組だけでも枚挙に暇がないほど。ネトフリ経由でフィリピンでも視聴できるので、地元の友人や親戚とも、共通の話題で盛り上がることができます。

もう一作品、「宇宙戦艦ヤマト」と並んで日本アニメのバイブル的存在の「機動戦士ガンダム」。最新作の「ジークアクス」が、第1作の本歌取りのようなストーリーなので、今頃になって、比較的若い人たちが、テレビシリーズのファースト・ガンダムを観始めたらしい。私もそれにちゃっかり便乗して、ほぼ半世紀ぶりに再視聴。まぁ、技術的なこと言い出せばツッコミどころは満載ながら、今では伝説になってしまったセリフが多いぐらい、脚本が素晴らしい。

とまぁ、ガンダムを語り出すとキリがないので、今回は、実写の日本映画やドラマが面白くなってきたというお話。

言うまでもなく、この流れはネットフリックスの影響が大きいでしょう。まず予算とスケジュールの感覚が、昔ながらの日本の放送局とは桁が違うレベル。それにスポンサーの意向や芸能プロダクションの思惑に縛られないので、作り手が本当にやりたいテーマで、最適な俳優を選べるのもある。実際、実力はあっても、スキャンダルで干されていた人が、重要な役所で出演してますからね。

もちろん、このような条件が揃ったから、いきなり質の高い映画やドラマができたわけではなく、長年に渡って培われてきた、日本の映像作りの下地があったからこそ。今まで、せっかくの世界レベルだったポテンシャルが、抑圧されてたんだ思います。敢えて書くまでもなく、例えば黒澤明さんや伊丹十三さん、宮崎駿さんなど、どの国に持って行っても、絶賛されるクリエーターは存在してますから。

さて、そのネトフリでの日本作品ですが、ネットで見ている限り、大きな話題になり始めたのは、コロナ禍前の「全裸監督」、その後の「サンクチュアリ」辺りじゃないでしょうか? ネトフリ制作ではないですが、それと並行するように、庵野秀明監督の一連の「ゴジラ」「ウルトラマン」「仮面ライダー」の「シン」シリーズ。そして一番最近で、私がドハマりしたのが「地面師たち」。

ただフィリピンでは、どれも日本国内ほどの話題にならなかったようです。と言うのは、とてもエロティックだったり暴力的だったり。あるいは、1950〜70年代の人気映画や番組のリメイクのため、オリジナルをまったく知らないフィリピンの若い世代には、とっかかりが無さ過ぎた。つまり分かりやすくて、家族で観られるというのが、とても大事な要素。

ところが、これを一気にひっくり返しそうなのが、つい先日、配信が始まった「新幹線大爆破」。内容的には「シン新幹線大爆破」(語呂は良くないけど)と呼びたいほど、旧作への敬意と愛に溢れつつ、新解釈と新表現で、フィリピンの観客にも十分アピールできる仕上がりになってます。

それだけでなく、外国から熱い視線集める、日本観光のシンボルともいうべき新幹線が主役だし、すっかり有名になった、日本的な時間厳守・高品質のサービスが、そこかしこに登場する。しかも旧作同様にJRの運転士や車掌が、英雄的に扱われてますからね。パニック映画でありながら、これほど日本や日本人をポジティブに描いた作品も珍しい。

これなら、JR東日本が全面協力したのも頷けます。CGやセットが上手く組み合わされてたそうですが、やっぱり本物の質感は素晴らしい。正直、旧作では、ストーリーがシリアスで緊迫感に溢れていただけに、ミニチュアだと気づいた瞬間に、ちょっと冷めてしまったものです。少なくとも新作では、どこまでが本物でどこからが作り物か、判別できませんでした。

案の定、ユーチューブに投稿された、英語字幕付き予告編を、私のイロンゴ語の家庭教師のバンビやエイプリルに見せたら、大喜びのテンション爆上がり。「絶対観ま〜す」だそうです。

他には、これまた日本ではたいへんな話題になった「侍タイムスリッパー」。ネトフリとは違い、予算の少なさをアイデアと情熱でカバーした佳作。ある意味、「ゴジラ-1.0」も、そういう側面があったそうなんですが、いずれにしても、フィリピンの人たちに自慢できるような日本の作品が続けてヒットする状況は、喜ばしい限り。

唯一残念なのは、VPNを使わずに、普通にフィリピンで鑑賞できるコンテンツの数が、まだまだ十分とは言えないこと。ネトフリでも、ファーストガンダムは地域限定だし、侍タイムスリッパーやシンゴジラは、今の所、アマプラなどでしか観られません。

ということで、いろいろ書きたい放題に書きましたが、フィリピン移住直後の12年前は、これほど夢のような環境が実現するとは、想像もできませんでした。本当に、良い時代になったものです。



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