2020年5月11日月曜日
プロポーズで歌う
むか〜しむかしのイタリア映画とかで、見たような記憶があるシーン。道端で若い男性がギターをかき鳴らして朗々と愛の歌を歌い、それを2階の窓から、うら若い女性がうっとり聴いている。
映画以外ではあり得ない光景で、ましてや日本人が真似したら、見ているだけで気恥ずかしくなりそう。やっぱりこれが似合うのは、ラテン系の情熱的なカップルだろうと思ってたら、かつてフィリピンでは、これをしきたりとして実際にやってたんだそうです。
この風習は、ハラナ Harana あるいは、セレネイド Serenado と呼ばれ、旧宗主国のスペイン経由で伝わった、ヨーロッパを発祥とする求婚の儀式。ハラナとはギターよりちょっと小振りな弦楽器で、セレネイドは言うまでもなく、セレナーデ。日本では夜曲とか小夜曲(さよきょく)と訳され、元来は、男性から女性への求愛の歌。
正式なハラナでは、男性はギターの弾き語りか、伴奏する協力者と一緒に演奏するそうで、時には、トランペットやバイオリンが入って、ちょっとしたコンサートの体を為すことも。
恋人の前で、男性が歌うなんてのは、今でも普通にフィリピーノがやりそうですが、これは彼女のためというより、主に恋人の父親から、結婚の承諾を取り付けるためのもの。歌った後に、家族への贈り物を手渡し、それから家柄や資産、娘への気持ちについて根掘り葉掘り「尋問」される。
うわぁ〜、これはフィリピーナを嫁に貰った男としては、想像するのも恐ろしい。事前に話が通っていて、形式的に歌うぐらいならともかく、プロポーズの成否を賭けたガチ勝負だったりしたら、私には絶対に無理。最近ではあまり流行らないようで、本当にラッキーでした。
なぜ突然、ハラナの話が出てきたかと言いますと、実は昨日(2020年5月10日)の母の日。今年は、花束を買ったりケーキを用意したりが難しかったので、その代わりにと、家内の前で、ラブソング中心に、6曲ほど歌ったんですよ。
以前にこのブログで書いたように、イースターのパーティで、集まった親戚に披露しようと、かれこれ2ヶ月以上も、自主ボイス・トレーニングに励んでました。残念ながらパーティは当分できそうにないものの、毎日やってると、素人なりに声が出るようになるもの。楽しくなって、レパートリーも日本語・英語・タガログ語と、合わせて30曲ぐらいに増えました。
こうなると、誰かに歌ってきかせたくなるのが人情。まぁ、毎日自室でのトレーニングで、いくら日本の一般的な住宅に比べたら広い家でも、防音設備なんてない筒抜け状態。なので家内も私の歌は耳タコ状態。それでもランチの後に、歌ってあげようと言ったら、満更でもなさそうで、半時間ばかり、ちゃんとダイニングの椅子に座って、神妙に耳を傾けてくれました。
その後、フィリピーナの友人に、この事をチャットで話したら「今のフィリピンでは、ハラナの習慣が廃れしまって残念ですね。」「え?ハラナって何?」。彼女は、私がハラナのことを理解した上で、家内のために歌ったんだと思っていたらしい。そんな習慣がフィリピンにあったなんて、全然知りませんでした。
そう言えば、家内と超・長距離恋愛をやっていた四半世紀前。婚約指輪をプレゼントした時に、家内の実家でタガログ語の曲を、アカペラで歌ったなぁ。家内の両親もいたし、あれって、ひょっとして簡易のハラナだと思われたのかも? それ知ってたら、緊張して声が出なかったに違いない。
ということで、フィリピン女性と恋愛中の、我が日本人諸兄へ。今からでも遅くありません。とにかく一曲(できればフィリピンのラブソング)、それなりに歌えるようになって、プロポーズに臨むことを強くお勧めします。
ギターが弾けなくても、私がやったように、ユーチューブから適当な伴奏を見つけて、スマホとブルートゥースのスピーカーを駆使すれば大丈夫。カラオケボックスじゃなくて、彼女の実家でトライするのがポイント。ネグロス島から、諸兄の幸運を祈ります。
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