2020年5月14日木曜日

日本女性に贈られたハラナ


前回、フィリピンの由緒正しい、男性から女性への求愛儀式「ハラナ」について書いたところ「実は、私もハラナ(っぽいものを)を受けたことがあります」と、友達の日本女性「マダムM」からコメント。

かつてボランティアの一員として、フィリピンにある孤島に長期滞在されたMさん。今でも「お父さん、お母さん」と慕う、フィリピン人ご夫婦の家にホームステイされていました。

英語はもちろん、公用語のタガログに加えて、島の方言まで自在に操り、何より日本的な美貌のマダムM。現在でもあの美しさですから、さらにお若い頃は、それはそれは魅力的だったろうと思います。何を隠そう、私もMさんに憧れて、美女イラストのモデルになってもらったぐらい。

さて、Mさんによると、ある夜、顔見知りの若い地元の男性が、Mさんの住む家のバルコニーの下で歌い始めたとのこと。ご本人は「それっぽい」なんて仰ってましたが、スタイルを聞く限り、紛うことなく古式ゆかしいハラナではありませんか。

ただ、映画やドラマとは違って、Mさんに捧げられた愛の歌は、聴いているほうが恥ずかしくなるぐらいのレベル。すぐにMさんは飽きてしまって窓辺を離れ、フィリピンのお母さんに、花とプレゼントまで用意して来た彼は、可哀想なことに、敢えなく追い返されてしまったそうです。

フォーマットは完璧だけど、肝心のコンテンツがダメダメだったんですねぇ。

実年齢で言うと、今の私は、当時のMさんの「お父さん」みたいなもの。しかしながらこの話を聞いた時は、ハラナをしくじった「彼」に同情してしまいました。アホやなぁ。せっかくフィリピンには、こんなロマンチックな風習があるんだから、もっと上手に使ったらいいのに。

そこで、もし私が彼の友達とか親戚の立場だったら、どうアドバイスしたかを、ちょっと真面目に考えてみました。

まず歌が下手ではどうしようもない。3〜4曲でいいので、せめて最後まで聴いていられる程度に、ボイストレーニングでみっちり鍛えるところから始めますね。また、歌が平均以上のレベルだったら、ギター一本でも何とかなるでしょうけど、どうも短期間では難しそう。

ここは、ちゃんと歌える青年を数名引っ張ってきて、アカペラコーラスの伴奏はどうでしょう。決まり切ったことを愚直にやるより、多少伝統から外れてもスマートな粗隠し優先で。

そして選曲。最低3曲、できたら5曲。「掴み」に日本の曲を一つ入れて、「中押し」に軽快なリズムの英語のスタンダードナンバー、場が十分温まったところで、「取り」は、歌い上げ系のOPM(タガログ語歌謡曲)か、いいものがあれば、地元の歌。

当然、マダムMの音楽の好みを、事前にリサーチしておくことは必須。まったく恋愛の対象とは思っていない相手でも、自分の好きな曲を上手に歌ってもらったら、悪い気分のはずがありません。

ついでに、年季を積んだオっさんの手練手管で言うと、10人や20人のサクラは用意しなくっちゃ。行き当たりばったりに、一人でいきなり歌い出すんじゃなくて、まず前振りとして、派手なのを一曲。サクラたちに盛大に拍手喝采させます。こういう演出をすれば「何が始まったのかしら」と、Mさんが窓から顔を出すこと間違いなし。

ここまでやるなら、照明にも凝りたいし、鳴り物も欲しくなります。

とまぁ調子に乗って、暇を持て余したアラ還オヤジの妄想になってしまいましたが、こういうイベントは、女性に「私のために、ここまで準備してくれるなんて」と思わせなければ負け。それも、金があればできることじゃなくて、手間隙がかかっている点を強調するのが大事。もちろんお金に余裕があれば、鬼に金棒。

たとえお金がなくても、元来、この手のサプライズが大好きなフィリピンの人々。友達や知り合いに上手く持ちかければ、みんな寝食を忘れて協力してくれると思いますよ。ただ、喜びすぎて大騒ぎになってしまい、決行のずっと前に、当のMさんにバレちゃいそうですけどね。


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