いやぁ〜、フィリピン人作家と漫画家によるコミックが、これほど有名になっていたとは、全然知りませんでした。2021年6月11日からネットフリックスで配信が始まった「異界探偵トレセ」(原題 Trese)。その原作は、2005年に発表された同名のコミック。
日本語のネット環境では「フィリピン発」と報じられてるし、作家のブジェッテ・タン(Budjette Tan)と作画担当のカジョ・バリディシモ(Kajo Baldisimo)の両名は、フィリピン人。しかしその作品であるトレセをここまで有名にして、ネットフリックスでのアニメ化に至ったのは、当初からオンラインで掲載され、アメリカで人気に火がついたことが大きいでしょう。
本編の前に、そのプロモである「トレセ・アフター・ダーク」という、出演者やスタッフを集めてのインタビュー番組を観たところ、アニメ制作のBASEは、シンガポールとジャカルタに拠点を置くスタジオ。プロデュサーは、マーベルのアニメ映画を多数手掛け監督もこなす、フィリピン系アメリカ人のジェイ・オリバー。
そして美貌のヒロイン、アレクサンドラ・トレセの声をタガログ語で演じるのが、フィリピンで活躍中の超有名女優のライザ・ソベラーノ。私が何度もイラストを描いた、憧れの女性。
とまぁ、作る人も演じる人も、基本的にフィリピンの文化や習慣を「分かっている」人たち。現在住んでいる場所が、フィリピン国外であっても、フィリピン生まれであったり、フィリピンから移住した両親や親戚に、生まれ故郷の伝承を聞いて育った人たちがメインスタッフ。
ところで、多くのハリウッド映画で描かれる日本って、当の日本人から見れば、実に妙ちきりんで「そんなヤツおるか〜!」「これは一体どこやね〜ん!」のツッコミ・オンパレード。昔からそうだし、今でも時々見かけます。
そこはさすがのネットフリックス。世界各国の映像クリエーターや俳優を起用して、ローカルな素材をグルーバルにヒットさせるノウハウはすごい。さらに、ローカルの観客にも違和感を抱かせないことに関しては、他に類を見ない。
実際に最初のエピソードを観てみると、かなり緻密なロケハンをしたことが垣間見えます。舞台となるマニラの街並みや、人物のキャラクター・デザインなど「確かにこんな感じの場所あるわ〜」「こんな人おるで〜」。
霊能力を持ち、格闘技の達人である女性探偵トレセが、警察の手に負えない、超自然現象が絡んだ事件を解決するストーリー。登場するのは、フィリピンの民間伝承に基づく、アスワンやホワイトレディなどの、フィリピンではお馴染みの妖怪変化の類い。
何となく、「ゲゲゲの鬼太郎」を彷彿とさせる設定。とは言っても、伝承の焼き直しではなく、伝承を皮膚感覚で理解している原作者やスタッフによって、外国人にも面白く感じられるよう、上手にアレンジされています。アクションシーンもたっぷりで、リアルでフィリピンを知っている私にも、楽しめる作品に仕上がっていました。
唯一残念だったのは、ライザ・ソベラーノ演じるアレクサンドラの声が、フィリピンの視聴者にはイマイチ評判が良くないこと。フィリピン人の家内によると、「エモーションが足りない」「役柄に合わない」などなどのコメントが、フェイスブックに投稿されているらしい。
う〜ん、やっぱりライザって、10歳まで父の国アメリカにいて、最初はタガログ語が喋れなかったそうなので、フィリピン・ネイティブの人には、不自然に聴こえるんでしょうか。その上、原作のコアなファンは、評価が厳しいだろうし。
ちなみにこの作品のアフレコは、英語版、日本語版など多言語対応。第二話以降は、そっちも試してみましょうかね?
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