2023年2月15日水曜日

ソドムとゴモラ

 

クリスチャンじゃなくても、名前ぐらいは、聞いたことがある人は多いと思う「ソドムとゴモラ」。旧約聖書の創世記に登場する古代都市の名前で、市民の罪深さが神の怒りに触れて、硫黄と火によって滅ぼされたとされています。その罪というのが淫らさ。新約聖書の「ユダの手紙」には、「不自然な肉の欲」とも記されています。

後世の解釈では、男色や獣姦だと言われ、英語の「Sodomy」は、主に男性同士の性行為を指す単語にまでなっている。ところが、少なくとも新旧聖書の日本語訳を読む限りは、その内容がはっきり書かれているわけではありません。ひょっとすると原書の言葉であるヘブライ語やギリシャ語では、明記しなくても当時は常識的にその意味だったのかも知れませんが、今となっては必ずしも断定はできない。

なぜ、急にこんな話を持ち出したかと言いますと、実は先週のイロンゴ語(西ネグロスの方言)のレッスンで、日本で同性婚が政治的な話題になっている、というトピックをイロンゴで書いたから。ちなみに同性婚はイロンゴに直接該当する単語がなく、英語で Same-Sex Marriage としてます。

フィリピンでは同性婚を認めた法律はないけれど、日本に比べるとLGBTの人たちが、ごく自然に社会に受け入れられていると、このブログでも取り上げたばかり。ところが、超真面目なプロテスタント信徒である、家庭教師のバンビ。これには真顔でソドムとゴモラの逸話を持ち出して、同性愛は罪だと断言しました。

もちろんその後に「...と私は思うけど、違う意見も尊重します。」と付け加えるだけの冷静さは保ってましたけど。

フィリピン在住の日本人でも、同性愛と宗教について語り合うことは稀でしょう。私も実は初めて。何となく一般的なフィリピン人は、あんまり気にしてないと思ってました。ただ、バンビの反応を見ると、やっぱりクリスチャンとしては本当は良くないけど、ゲイだからと言って差別するのも間違いだ...という感じなのかも知れません。

いずれにせよたいへんデリケートな内容なので、フィリピン人相手に軽々しく訊ねることはお勧めしません。また人によっては、反応が極端になることも十分に考えられるので、その辺りは、ご注意くださいませ。

ところで、このソドムとゴモラ逸話。原型になった何らかの出来事があって、それを誇張したり脚色して、宗教的な教訓譚になったのかと思ってたら、最近の研究によると、ほぼ丸ごと事実だった可能性が出てきました。

アメリカとヨルダンの共同研究チームが、死海の北側、ヨルダン渓谷南部の高台に位置する「トール・エル・ハマム」と呼ばれる都市があったとされる地域で発掘調査を行い、2021年にその結果が論文で発表されました。

驚くべきことに遺跡からは、衝撃石英やダイアモノイドと言った、隕石の衝突による高温によって作られたと思われる物質が出土。このことから3,600年前この地に存在した15の都市と100を超える村落が壊滅。その破壊力は、広島型原子爆弾の1,000倍に相当したそうです。

詳しくは、こちらの Gigazine の記事をお読みいただくとして、この論文の通りの大事件が起こったとすると「硫黄と火によって滅ぼされた」という表現は至極真っ当。むしろサラっと書き過ぎなぐらい。

創世記のソドムとゴモラの逸話だけでなく、ハリウッドの映画「十戒」でも有名な、紅海が割れて、モーセ率いるユダヤの民の避難を助けたと言う「出エジプト記」。これも当時、地中海にあるサントリーニ島が大噴火して発生した、巨大津波の描写だとする説があります。

こうなると、聖書の記述を元に現代社会の問題を判断しようとする人々を、そう簡単に「作り話だ」と笑うことはできない。

ということで、キリスト教に根ざす倫理観・道徳観が根強いフィリピンで、同性婚の話題を持ち出すのは、なかなか難しいと感じている最近です。



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