2023年9月15日金曜日

フィリピン親戚ガチャ

 最近の日本では「親ガチャ」なんて言い方が、当たり前のように使われているそうです。あるいは「実家が太い」なんてのも。ガチャは、カプセル・トイの玩具を取り出す時の音「ガチャガチャ」が由来なんでしょう。アメリカ発祥で私が子供だった1960〜70代にも、すでにカプセル・トイは、遊園地などにありました。

つまり、自分が欲しいものかイマイチの玩具か、何が出てくるか分からない。「太い実家」=裕福だったり、優しい親の元に生まれれば、親ガチャがアタリで、貧乏夫婦や毒親だったらハズレというわけ。「毒親」もかなり最近の言葉。

ただ呼び方は変わっても、そういう状況は大昔から同じで、貧乏で子沢山家庭の長女に生まれた母などは、駄菓子屋やってた祖母に代わって、幼い弟や妹の面倒を見てました。毎朝の弁当作りから果ては父兄参観日の代行まで。まさに親ガチャ大ハズレ。「一人っ子でお金持ちの家に生まれたかったなぁ」とこぼしたら、六人兄弟姉妹の末っ子の妹に「私なんか、生まれんかったらよかったんや〜」と泣かれたらしい。もちろん今と時代が違っていて、子沢山は当たり前で、敗戦で日本全体が貧乏だった頃のお話。

それから高度経済成長を経て、私が就職した1980〜90年代はバブル経済真っ盛り。貧困なんて日本からは無くなったと思ってたら、バブル崩壊に続く政治の失態続き。気がついたら給料は上がらないのに、税と保険料は上がり、かつては世界一と言われた技術力も低迷。IT化や男女平等など多くの分野で、明らかな後進国に成り果ててしまいました。なので「親ガチャ」という、前世紀の遺物みたいな概念が持て囃されるんでしょう。

ところで、私が今住んでいるフィリピン。戦前の日本か、ひょっとしたらそれよりエゲつなく、親ガチャで人生が決まってしまうお国柄。運悪く貧困層に生まれてしまったら、まともな教育機会もなく、10代で親になり、貧困の連鎖の歯車の一部になるしか生きる術がない。国民的英雄、ボクサーのマニー・パッキャオや前マニラ市長のイスコ・モレノなど、極貧から身を起こして富裕層の仲間入りできるのは、幸運と才能に恵まれた一握りの人々。

そして、そんなフィリピンの人たちを、配偶者に選んだ日本人にも当てはまるのが「親戚ガチャ」。夫なり妻なりは、自分で選ぶわけですから「ガチャ」的要素は少ないけれど、結婚相手の親戚なんて、一体どんな人がいるのか、結婚するまで分からない。 7〜8名のおじ・おばがいるのが普通で、母方・父方でその2倍、従兄弟姉妹に至っては何十名のオーダーが珍しくない。さらに誰かの誕生日やクリスマスパーティなど、大人数が頻繁に顔を合わせたり。

日本でも義母・義父との関係がギクシャクして、相手の実家とは絶縁になったり、最悪の場合はそれが原因で離縁にもなりかねないほど難しい関係。それに加えてフィリピンの場合、なぜか義理の兄弟姉妹、あるいはおじ・おばが同居していて、事あるごとに理不尽な振る舞いだとか、初対面の親戚からいきなり借金頼まれたりすることもあるらしい。

「らしい」と書いたのは、幸運にも私の「親戚ガチャ」は大アタリ。このブログにも何度か書いた通り、お金や時間を守る感覚は日本人と大差なし。特に行き来が頻繁な、母方の叔母や従兄弟姉妹たちは、気遣いも細やかだし、お金を貸すどころかいつもお世話になっています。少なくともこっちが困惑するようなことは、滅多に起こらない。

さらに、数日前にツイッター見てて驚いたのが「友人ガチャ」。カトリック信徒でもないのに、よほど人数が足りなかったのか、あるフィリピン在住日本人の方がフィリピンの友達から、生まれた子供のゴッド・マザーになってほしいと頼まれたんだとか。

日本のカトリックだとゴッド・ペアレンツ(代父母)は、かなり重い存在で、当然信徒以外には声がかからないし、将来に渡って、その子の信仰を正しく導く「師」であることが求められます。ところが、その辺りが大らかと言うか、エエ加減なフィリピン。一人の子供に何人もの代父母が選ばれるし、それほど深い付き合いがなくても、数合わせで適当に人選。

ちなみに私の家内など、独身時代から親戚や友人の子供のゴッド・マザーになっていて、その数はもう本人も覚えていないほど。と言うことは自動的に、その家内の夫になった私のゴッド・チルドレン。家内から詳しく教わったことがないので、ほとんどの子供は、その名前を知りません。

それぐらい軽いノリなので、ツイッターで「これって引き受けて大丈夫なんでしょうか?」となっている人に、上記のような事情をリプライしたんですよ。ところが、そのチャットににかぶせて、フィリピン暮らしが長そうな別の日本人の方から、代父母になって、その子が学校に入る時にの入学金を払うハメになったとのリプライ。いやそれは、いくらフィリピンでも有り得ないでしょう。カトリックの代父母に、経済的支援の義務はありませんよ。

私が想像するに、代父母だからというのは体の良い言い訳で、金持ち日本人だからダメ元で吹っかけてみるかと、カモにされたんじゃないでしょうか。そもそもフィリピンでは公立学校なら無料で、入学金が必要ということは私学。親が周囲に「日本人のゴッド・ファーザーが入学金を払ってくれた」と、見栄を張るためなのかも知れません。友人ガチャ大ハズレ。

ということで「親ガチャ」だけでなく、「親戚ガチャ」に「友人ガチャ」まで気にしないといけないフィリピン社会。夫や妻の親戚や友人相手だと、無視や絶縁も難しい事情もあるでしょう。やっぱり人間関係に関しては、日本もフィリピンも一筋縄ではいないものです。



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