2018年6月5日火曜日

勤労の権利


たいへん唐突ながら、日本国憲法では、以下のように定められています。
すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。(第27条) 
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。(第22条)
つまり、日本国民にとって働くことは、当然の権利・義務であり、どんな職業を選ぶのも、個人の自由だと決まっているわけです。ところが、海外勤務従業員の配偶者が、現地で就労することを禁じている企業は、結構多いらしい。

配偶者と言っても日系企業の場合、従業員は男で、就労禁止の対象となるのがその奥さん、俗に言う「駐妻(駐在員の妻)」となるケースが圧倒的。ネットで調べた限りにおいて、この件に関して、まともに会社へ不満を表明しなくても、やっぱり内心は「なんか変だ」と思っている人もいるようです。

会社側にすれば、家族帯同を海外勤務の条件にして、追加の手当てを支給しているのは、奥さんの全面サポートを期待しているから。それが十分果たせなかったり、不必要なトラブルに巻き込まれたりされては困る、ということなんでしょう。

それも分からなくはないけれど、最初に掲げたように、国民の基本的な権利であり義務だとされるものを禁じるのは、どう考えてもマズい。たとえ勤務地が日本国外であっても、雇用契約は日本の会社と日本人従業員の間で結ばれているのだから、本気で異議申し立ての裁判沙汰になれば、会社側が負けるんじゃないでしょうか。(誰もそこまでしないでしょうけど)

私が新入社員だった1980年代では当たり前のことでも、30年後の現在、こんな古色蒼然とした決まりを墨守しているとは驚きです。

別に、外で働いている方が偉いとか、専業主婦がダメだ、なんてことではありません。その気がなければ、無理に働きに出る必要はない。家事や育児だって立派な労働です。問題は、本人の意思と関わりなく、働くことが禁じられるということ。

フィリピンの場合、日本人が就労するにはそれに応じたステータスのビザが必要で、現地のオフィス勤務となれば、言葉の問題もあるでしょう。しかしネットで調べれば、要求事項はすぐに分かるし、専門能力があれば、いくらでもビジネスのチャンスはある。

もっと言えば、ネットを活用すれば、住んでいる場所なんてまったく無関係。フィリピン在住でも、フィリピン人が顧客でなくて一向に構わない。早い話が、フィリピンで執筆しているこのブログだって、日本人に読んでもらって広告収入を得ているわけです。(僅かな額ですが)

日本で最近やたらと見聞きする「自己責任」という言葉。それが拡大解釈されて、貧困や病気で困っている人たちまで、冷たく切り捨てるような風潮がある反面、本当の意味での自己責任でチャレンジしようとする時に限って過保護な態度。要するに事なかれ主義。

従業員本人の副業を、契約で禁じるのはともかく、違法行為でもない限り、その配偶者が現地で就職しても、会社が口出しすることではないはず。連れ合いが海外勤務だからと、せっかく持っている潜在能力を封印して、駐在期間をキャリアの空白にしてしまうのは、実にもったいないと思いますよ。


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