2020年8月7日金曜日

そして歌だけが残った


今回のコロナ禍では、本来なら出会っていたであろう人、あったはずの収入、出かけていたかも知れない場所などなど、いろいろな機会を失いました。もちろん私だけではなく、ここフィリピンでも日本でも、おそらく世界中の人々が。

その反面、コロナ禍がなければ、やらなかった事に、取り組くまざるを得なかった人もたくさんいるでしょう。例えば在宅勤務やリモート学習。前回の投稿で書いたように、フィリピンでも8月末から、全国の学校で、在宅学習による新学年が始まります。
(追記:その後、学校再開は大統領の指示により10月に延期になりました。)

こうした取り組みは、検疫とか隔離とは関係なく、選択肢の一つとして重要なこと。実際に日本では、緊急事態宣言が解除されて、職場や学校に行けるようになっても、引き続き在宅勤務・学習が選べた方がいいケースが多いそうです。まず、あの殺人的な通勤ラッシュを避けることができるだけでも、その意義は大きい。

とまぁ、そんなデカい話はともかく、私の場合、4月から始まったコミュニティ検疫、いわゆるロックダウンの頃から、憂さ晴らしのつもりで、ムキになって始めたのがボイストレーニング。要するにカラオケの練習です。

元々、カトリックの信徒で、日本の教会では聖歌隊に所属し、それなりに歌っていて、歌うことが大好き。しかし、ネグロスに移住してからは、どこの教会でも聖歌隊の層が厚く、メンバーの歌唱レベルがプロ並。人口の8割以上がカトリックなんだから、そうなりますよね。日本から引越して来た素人に、出る幕はありません。

なので、かれこれ7年ぐらい、ちゃんとした歌の練習からは遠ざかり、日曜日の教会でのミサで、他の信徒にまぎれて歌うぐらい。タガログ語とイロンゴ語で、いくつかの典礼聖歌は覚えましたけどね。あとは、たまに家内の友達と一緒に行くカラオケ程度。

そのミサも、当分の間は参加できなくなり、何もしなければ、本当に歌うタイミングがなくなってしまう。そこで一念発起して、ボイストレーニング代わりに、1日1時間、10曲程度を歌い始めた次第。

せっかく練習を再開するんだから、誰かに聴いてもらうことを前提にして曲選び。昨年のクリスマスに、近所の日本人向けの英語学校のパーティに参加して、タガログ語の「マイ・ブーカス・パ」("May Bukas Pa" 「明日があるさ」という意味で、エドゥサ革命時に歌われ、フィリピン第二の国家とも言われる)をアカペラで歌ったのが好評。

この時に、英語の先生たちから「Best Friend」を知らないか?と聞かれました。なぜか、この英語学校の先生たちに人気の日本語の歌。それって、NHK連続テレビ小説「ちゅらさん」のテーマ曲だった、キロロのベストフレンドのことかいな? 放送が2001年だったから、もう20年近く前の歌。聴いたことはあるし一応は知ってるけど、いきなりは歌えませんなぁ。

どうやら、日本人の誰かから教えてもらったのが、若いフィリピン人英語教師たちの、心の琴線に触れたらしく、ことあるごとにみんなで歌っているとのこと。校歌か応援歌みたいな感じ。

そういうのが好きなんだったら、ベストフレンドと、他に何曲か、比較的最近の日本ポップスを練習して、次のタイミングで歌いましょうと約束。それを果たすために、ベストフレンドを含めて、家内が好きな平井堅さん、私のお気に入りの山下達郎さん、さらには、今年(2020年)リリースされた最新 J POP 曲などを、連日の歌い込み。

もちろんそれだけでなく、日本語にタガログ語、英語など、昔から愛聴していたスタンダードナンバーも、レパートリーに組み込んで、今では、歌詞を見ながらとは言え、ざっと40曲ぐらいは、何とか人前で歌える程度になっています。

ところが、せいぜい日本の夏休みの時期には収束しているだろうと、タカを括っていたコロナ騒ぎ。すでに8月も半ばにさしかかった今でも、収束どころか、このシライ市内ですら第二波の猛威で、陽性患者数の累計が27名。(2020年8月7日現在)

日本からのお客さんが経由するマニラ首都圏では、やや緩和されていた規制が、都市封鎖に逆戻りしてしまう始末。フィリピン各地で、日本や韓国からの短期留学生を対象にした同種の英語学校が、バタバタと倒産や閉鎖に追い込まれています。

これでは、たとえ年内にどこかの国でワクチン開発が成功しても、そこからさらに半年や1年は、コロナ前の状況には戻らないでしょうね。特に自国でワクチンを作れそうにないし、資金が潤沢とは、お世辞にも言えないフィリピン。下手すれば、数年ぐらいは検疫が続くかも知れません。

私の準備は整っていても、聴いてくれるお客さんが集まる目処は、当分立たない。そんな訳で、「そして歌だけが残った」ということになってしまいました。


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