私がフィリピン・ネグロス島に移住した頃からなので、ざっと10年前辺りから頻繁にネット上で見るようになった「老害」なる言葉。言葉自体はもっと前からあって、主に勤め先の会社で聞きました。しょっちゅう、ではないけれど、例えばどこかの部署の定年間近のトップが、必要以上に部下に威圧的だったり、意味なく形式的で物事が決まらない...なんて時に「あの部長は老害やからな」と使ってました。
ところが最近の老害は、どこかの組織内の話ではなく、普通にコンビニとか公共交通機関などで見かける老人を指すことが多いらしい。言うまでもなく、レジで店員さんを怒鳴りつけたり、駅員さんに絡んだりという輩。わざわざ老害というぐらいだから、実際の年齢よりも見た目重視。白髪だったりシワが多かったりの、パっと見が高齢者ってことなんでしょうね。
私が子供の頃は、年老いてくると性格が丸くなって穏やかになるってのが定説だったのが、この頃の老人は、脳の老化で堪え性がなくなると言われてます。この10年ほどで、日本人の老いのしくみが急に変わったとも思えないので、単に元気なジジババが増えたと推測。
今回の二週間の一時帰国で、ひょっとしてそういう難儀な爺さんに出くわすかもと、コンビニを利用する度に身構えてたところ、コンビニではなく地下鉄で遭遇しちゃったんですよ。
出典:株式会社HCI |
久しぶりに乗った大阪メトロ御堂筋線。首都圏に比べると、それほどの混み具合ではない関西の地下鉄の中では、ダントツに乗客の多い御堂筋線。ベッドタウンの千里中央を起点に、新幹線の停車駅、新大阪を経て、梅田と難波という二大都心、天王寺から南は堺までを結ぶ大動脈。
その日も、ラッシュ時でもないのに、そこそこの混み具合。旅行カバンを持った外国人観光客の目立つ車内でした。ただ私は乗降客の多い梅田からの利用で、タイミング良く座ることができた...と思ったら、向かいに座ってた、白髪面長できちんとスーツを着た爺さんが、斜め前、つまり私の隣にいた人にブチギレの真っ最中。
怒鳴られているのは、まだ若い、ひょっとして学生さん?という感じのにいちゃんで、どうやら中国人か韓国人か、日本語がよく分からない人のよう。爺さんの言いたいのは、車内に持ち込んだ大きなスーツケース二つが邪魔で、他の人が座れないから、頭上の棚に上げろってことらしい。
でもなぁ、どう見ても棚に上げられるようなサイズでも重さでもない。そもそも混んでると言っても通勤時のギュウ詰めに比べると、かなり余裕の車内。そんなにギャーギャー言うほどじゃないでしょうに。当のにいちゃん、可哀想にどうしようもなくてオロオロするばかり。いくらなんでも、これは理不尽というもの。
そこで私は、義憤に駆られたわけではなく、単にあまりにも目の前の怒鳴り声が耳障りなので「やかましいわ、オっさん!」とブチギレ返しをしてしまいました。こじれるようだったら次の駅で降りて、駅員さんか警官を呼ぼうと覚悟して計画的にキレたんですが、運良く二言三言の応酬で爺さんが沈黙。もちろん納得したわけではなく、私が降りるまでずっとこっちを睨んでましたけど。
よく考えたら、同じことを私がしても、年齢的には立派な老害が成り立ちそうです。おそらく私とその爺さんの年齢差は、せいぜい10年ちょっとぐらいでしょう。この「事件」以降、電車や人混みなどで、周囲の人を観察するようになったんですが、気のせいか不機嫌な顔した高齢者が多く感じました。
こうなると、どうしても普段暮らしているネグロス島の高齢者と比べてしまうのは、自然な流れ。そりゃフィリピンにだって、見るからに不機嫌そうな爺さんはいますよ。ただ、これは高齢者に限ったことではないけれど、道行く人やショッピングモールのお客さんって、もっと穏やかな表情なんですよね。
まぁ、ネグロスが田舎だってのもあるかも知れませんが、やっぱり日本って、老人が心の平安を保つのが難しい国になったようです。
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