2023年4月10日月曜日

国際結婚悲喜交々 子供のアイデンティティ

 国際結婚シリーズの三回目は、子供のアイデンティティーについて。結婚しても子供がいない夫婦もいるし、結婚しなくてもシングル・マザー / ファーザーはおられると思いますが、そこはあんまり突っ込まないでください。

18年前に、新横浜の産科医院で息子が生まれた時から気になっていたのが、このアイデンティティー。というのは私自身が日本生まれの日本育ち、だけでなく母が大阪市都島で父が東大阪出身かつ、私が高校を卒業するまでずっ〜〜っと兵庫県尼崎市。どこも「下町」とか「ガラが悪い」と思われている土地ばかり。いわゆる「コテコテ」の関西弁地帯。

少しだけ言い訳しておきますと、尼崎と言っても、ダウンタウンの松本さんと浜田さんの地元は、JR尼崎駅近辺。半世紀前には尼っ子でさえビビる、阪神・尼崎と並ぶガラの悪さで有名だった場所。それに比べて私の実家の最寄り駅は、阪急の塚口駅。世界的に有名になった、テニスの伊達公子さんが通われていた、園田学園のすぐ近くで、周囲は裕福な世帯も多かった。(今はJRも阪神もすっかりきれいになって、特にガラが悪いってことないですよ)

さらに大学は京都市立芸術大学で、就職先が大阪の門真に本社がある電機メーカー。要するに、改めてアイデンティティーがどうこう言う必要もない純粋培養。自ら関西サラブレッドを自称するぐらい、社会人になるまで外の世界を知らない田舎者でした。

こんな調子なので、英会話を学んでもイギリス人の先生からは「君の英語は関西訛りだ」と言われるし、海外出張でプレゼンしても、つい関西のノリで笑いを取りに行ってしまう。脱線ついでに書きますと、フィリピンの在留邦人には関西人が多いとの評判ですが、おそらく人数はそれほどでもない。ただ一人一人の存在感が過剰で、2〜3人に会えば、まるで10人ぐらい居たような、強烈な印象が残るからでしょう。

何が言いたかったかと言うと、それほどまでに自分のアイデンティティについて、意識はするものの思い悩んだ経験が皆無。世にいう「アイデンティティ・クライシス」なんて、想像すらできない。そんな人間が、日比ハーフの父親として子育てするわけですから、大袈裟に書くと、未踏の大地に踏み出す冒険家の心境でした。

ただ結果的には、もうすぐ18歳の息子を見るに、取り立てて自分のアイデンティティについて悩んだりはしていない様子。これは私や家内の、育て方が良かったと自慢しているのではなく、フィリピンの地方都市という環境が良かったように思います。

まず、幸か不幸か、息子の見た目はフィリピンの子供からは、まったくの日本人。家内にしても、移住してからの息子のクラスメートに「マダムは、イロンゴ語喋れるんですねぇ。」と感心されるほど、マレー系やスペイン系とはほど遠い、東アジア的な風貌。生粋のネグロス島民なんですけどね。

おそらくそのお陰で、小一まで住んでた日本では、出自を理由にした差別はまったく無かった様子。まぁ、敢えてこちらから説明しなければ、外見も喋り方も、特別変わった子供ではなかったし。これが中学生ぐらいなら、いろいろ問題も起こったかも知れません。

そうなる前に、家族で引っ越したフィリピン・ネグロス島。

こちらでは目立ちまくる顔つきと言葉が、逆に息子のアドバンテージになったのは幸いでした。例外はあるものの、一般的にフィリピンでは対日感情がとても良好。いじめられるどころか、学校の人気者になってしまいました。最近はそうでもないですが、当初は同級生だけでなく、ずいぶん年上の女の子からも注目されたそうです。

私が想像するに、アイデンティティ・クライシスに陥る子供って、父母のどちらの国にいても、ネガティブな扱いを受けるからじゃないでしょうか。私もハーフの知人が何人かいますが、どこに行っても外人扱いだとこぼしてました。特に日本は、日本で生まれ育って完璧な日本語を話しても、外見だけで他所者と決めつけられがち。それが差別だと気づいてないから、尚のこと始末に負えません。

ということで、子供のアイデンティティに関する限り、日比のハーフならばフィリピンで育てる方が、結果的に必要のない苦労をさせなくて済んだように思いますね。



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