暗殺されたロエル・デガモ知事 出典:CNN Philippines |
事件そのものの残虐さもありますが、殺されたロエル・デガモ知事は、現職大統領ボンボン・マルコスとは近しい関係。即刻事件解明のタスクフォースが立ち上げられ、テレビでも連日の報道が続いています。この数週間の夕食時ぼニュースは、デガモ暗殺とミンドロ島での石油流出事故ばかり。気分が落ち込むこと甚だしい。
私の知る限り、昔から東ネグロスって、テロリスト集団NPA(New People's Army)の動きが活発で、局地戦や暗殺事件が頻発する土地柄。最初はてっきりNPAの仕業かと思ってました。ところが新聞記事などを読んでみると、もう10年以上前から尾を引く、デガモ氏と彼の政敵テペス氏の怨讐が、エスカレートした結果ということらしい。
そもそもデガモ氏も、相当胡散臭い経歴の持ち主で、2010年、最初に知事職に就いたのが、州議会議員だった時。時の知事・副知事が相次いで死去したため、地方自治法により知事就任。ウィッキペディアには死因などの詳細はないけれど、どう考えたって不自然極まりない。そして正式に選挙に当選して3期の任期満了したものの、途中で、台風や地震被害の復旧資金を不正流用した疑いで一時停職となっています。
さらに、知事の4選は許されていないフィリピンでは、本来なら立候補できないはずなのに「なんども任期が遮られた」との理屈で強行出馬。結局4期も知事職に居座りました。この状況に近いのが、元大統領のグロリア・アロヨ氏。前任のエストラーダ氏が市民運動で辞任に追い込まれたため、副大統領から繰り上げとなり、結果的に任期の上限を超えて、大統領を務めました。この時も、かなり物議を醸しましたね。
そして2022年の選挙で、デガモ氏は5期目(!)に挑みます。投票ではテペス氏に敗れたにもかかわらず、知事オフィスの引き渡しを拒否。最後の最後まで揉め続けての辞任でした。
これでデガモ氏の知事生命は終わりかと思ったら、この知事選では本名とは異なる「デガモ」を名乗った別の候補者が原因で、失った票があるとの訴えを起こし、何とこれが認められて、敢えなくテペス氏は4ヶ月で解任。限りなく黒に近い灰色のデガモ氏が知事に返り咲いたのが、昨年の10月。
ここまで書いて、こんなに法律を恣意的に解釈できて、しかも選挙で勝ってしまうフィリピンって、本当に民主主義国家なのかと呆れております。まぁ、国家運営の根幹である憲法解釈を、恣意的な「閣議決定」で変えちゃう国から移住した私には、あんまりエラそうな事は言えませんけどね。
だからと言って、殺していいとはならないのは当然なんですが、殺されないと止まらない暴走状態だったとさえ思えてしまう理不尽さ。最新の報道では、テペス氏が以前に所有していた農場から、ライフルや手榴弾など、大量の武器が見つかったとのこと。彼が私兵を養っていたのは、公然の秘密だったようです。
そして当のテペス氏本人は、病気療養と称してフィリピン国外に滞在中。まるでハリウッドのマフィア映画か、と言うより、映画でもここまで陳腐な筋書きにはしないであろうレベルの、バレバレの展開。
ということで書き出す前は、もう少し背景となったフィリピンの銃所持やら、2009年にミンダナオで、政敵の一族やジャーナリスト57人を殺害した事件にも触れるつもりでしたが、経緯を説明するだけで、結構な分量になってしまいました。
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