前回「東ネグロス州知事暗殺事件」を投稿してから、その背景にあるものをいろいろと考えてみました。
最近でこそ、日本から若い男女も渡航するようになって、1980〜90年代に比べれば、「治安の悪い国」というレッテル貼りをする人も減ったと思います。それでも、夜間の一人歩きは避けろとか、カバンは引ったくられないように肩掛けではなく袈裟懸けにとか、いろいろアドバイスされがち。観光客や一時渡航者は、別にフィリピンに限らず、大抵同じことを言われるんでしょうけど。
ただ、ここに10年住んで感じるのは、本当に恐ろしいのは、むしろ地元の人たちと知り合った後。問題なく暮らしてるうちはいいけれど、下手に人間関係の距離を詰め過ぎて、それがこじれると、場合によっては暴力沙汰になることもある。
ここ何年か、アメリカでの銃乱射による大量殺人が大問題になっていますが、実はフィリピンも銃所持については、ほとんど放置に近い状況。フィリピン国籍があって、正規の手続きを踏めば、街中にあるガンショップで誰でも拳銃が買えるし、脛に傷があってそれがダメでも、密造銃の売買が横行。何より、自分で手を下さなくても、十万円も出せば殺し屋が雇えるお国柄。
実際、ビジネスや色恋沙汰のトラブルから、日本人が巻き込まれた殺人事件の話も、時々報道されてます。よくある手口が、バイク二人乗りが、追い越しやすれ違いの時に発砲するパターン。私が住んでるこんな田舎の地方都市シライでも、数年前に白昼堂々アメリカ人男性が路上で殺されたり。外国人というだけで目立つので、ほんと、人の恨みを買っちゃいけません。
とは言うものの、東ネグロス州知事暗殺のような、組織的な犯罪になると話は少々違ってきます。同じネグロス島なのに、シライのある西ネグロスでは、そこまでひどい暴力沙汰は、私の知る限り聞いたことがない。政治家が贈収賄や資金の不正流用などに手を染めるのは、似たようなものなれど、殺し合いにまではエスカレートしない。テロ組織のNPA(新人民軍)が国軍と局地戦やったりするのも、もっぱら東側。
そこでふと気づいたのが、東西ネグロスの訛りの違い。訛りどころか、それぞれのネイティブ同士では、意思疎通も難しいほど異なった言語で、西のイロンゴ語は響きが優しく、特に女性話者が可愛く聴こえるのに対して、東のセブアノ語は、日常会話が喧嘩みたいと言われます。
そう言えば、2009年の政敵とその家族を皆殺しにした虐殺事件も、セブアノ話者が多いミンダナオ。つい数年前も、内戦騒ぎで戒厳令も出てましたね。
言葉が、他所ものには荒っぽく聴こえるから暴力的になると言ったら、ちょっと短絡的すぎるかも知れませんが、日本でも暴力団が活発なのは、関西地方や、広島、福岡。大阪にも福岡にも住んだことがありますが、ほんとに抗争事件が多いんですよ。
どの国でも首都圏は、地方から人が集まることもあって、マニラも東京も、反社会勢力が増えるのも分かりますが、地方の場合は、どうも言葉との相関関係があるように思います。まぁ単純に考えて、脅しや威嚇に使ったら、愛媛や東北の訛りよりも大阪弁や博多弁の方が効果がありますからねぇ。
聞くところによると、マフィア発祥の地であるシチリア島も、本土のイタリア人が聞き取れないほど強い訛りがあるらしい。
ちなみにフィリピンでは、ヤクザやマフィアのような犯罪組織よりもタチが悪いのが、警察官と政治家。地方の知事や市長などになると、当然のように警察を抱き込んで、今回の東ネグロスのように大量の武器弾薬を私蔵し、多数の私兵を雇っているケースもあるぐらい。こんなことができるのも、政治家になるような地主階級と、一般市民の経済格差があり過ぎるから。警官の給与もまだまだ安いし。
驚いたことに、上記の暗殺事件の実行犯の一人が、ここシライの出身者。家庭教師バンビの知り合いだったそうで、噂によると殺しの報酬は1,000万ペソ(約2,500万円)。ネグロスでは、公務員の平均的な年収が100万円にも満たないので、ほぼ生涯年収に匹敵する金額。話半分だとしても、そりゃ成り手はいくらでもいるでしょうね。その割に殺害後の手際が悪くて、あっという間に、犯人6人全員逮捕されたそうですが。
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