2023年3月15日水曜日

突然普及の電動ジプニー

 フィリピンの代表的な公共交通機関と言えば、フィリピン人も、私のような外国人でさえ「ジプニー」だと答えるでしょう。それぐらいこの国の生活に定着しているジプニー。日本のバスと違い、ルート上ならば停留所の有無に関係なく乗り降りできるし、数十円から百円程度で利用できる手軽さ。私も、このフィリピンらしい大雑把さは嫌いではありません。

だからと言って、ジプニーの車両そのものが好きかと訊かれたら、私は即答で「ノー」。混雑時は狭い車内にぎゅう詰めにされるし、一部のエアコン付きを除けば、窓ガラスがないので雨が降るとたいへん。透明ビニールのカバーを下ろすと濡れない代わりに蒸し風呂状態。

何よりも問題なのは、ほとんどが何十年も使い続けた旧式のエンジン搭載車ばかりだということ。あの黒煙を撒き散らしながら走る姿を見ていると、フィリピンの大気汚染の元凶は、ジプニーであるのは間違いない。

そもそも「ジプニー」という愛称は、太平洋戦争で米軍が使い古して置いていった「Jeep」が語源。つまりアメリカの自動車ブランドが、交通機関そのものの名前に転化したわけです。何となく、ベトナムでバイク一般を「ホンダ」と呼ぶのに似てますね。

そんなわけで、かれこれ80年に及ぼうかというジプニーの歴史が、今年(2023年)は大転換を迎えそうな勢い。2017年から始まった、ジプニーの近代化政策が、いよいよ今年で総仕上げ。つまり、古い車両を全部電動車に置き換えるそうです。

実際のところ、5年かけて徐々にという感じではなく、ガソリン車廃止の期限が3月末に迫った頃になって、いきなり電動車が走り出した印象。これはマニラなどの首都圏ではなく、私が実際に見た、西ネグロスの州都バコロドでのお話。

先日、久しぶりに出かけてバコロド市内に入った途端、見慣れないマイクロバスみたいなのがたくさん。一緒にいた家内によると、あれこそが噂に聞くE(電動)ジプニー。よく見ると日本の日野自動車のマークが付いてます。正直、あんまりスタイリッシュな見栄えではなく、個性的なクラシック・ジプニーの外観に比べたら無味乾燥。これも時代の流れなのか?

それはさて置き、何となくこういうのって、全部中国製になるのかと思ってたんですが、以前の日経の記事を見てみると、ドゥテルテ大統領の時代に、日野といすゞがいち早く動いたらしい。

私はまだ乗ったことはないけれど、地元新聞の記事によると、静かだしエアコン効いてるし、乗客にすれば少しぐらい高くなっても、もう古いのには乗りたくないそうです。そりゃそうでしょう。ちなみに乗り合いバスやオート三輪の電化の流れは、フィリピンだけでなく、タイやインドネシア、インドなどでも同様とのこと。

ただ、こうなると問題になるのが、ジプニーのオーナーやドライバーへの経済負担。新車購入には5〜600万円ぐらいかかるの言うのに、政府からの補助金が無い。当然のように今月には大規模なストライキが起こり、切り替え期限が当初の3月末から年内一杯にまで延期となりました。昨年の大統領選で、公約の一つにジプニー・ドライバーの収入増を掲げて当選したボンボン・マルコスは「嘘つき」の謗りを受けている始末。

私としては、新しくて快適なジプニーになるのは大歓迎だし、バコロドに住んでた日本人の友達が、揃って気管支炎を患うほどの大気汚染も少しはマシになるでしょう。日本メーカー生産の車両ならば尚更です。

ということで、すんなりジプニーの近代化が今年で完了するかどうかは、まだまだ不透明ですが、ストをしている人たちも電化そのものには抗えないと自覚している様子。結局、政府が補助金をどれだけ出せるかが、軟着陸の鍵になりそうです。



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