ピスピス(Pispis)っていうのは、個別の鳥の名称ではなく、私の住むフィリピン・西ネグロスの方言イロンゴ語で、鳥全般の意味。
公用語のタガログでもそうなんですが、こちらの言葉って、名詞でも動詞でも繰り返し音が多い。例えば、雑貨屋はサリサリ(Sarisari)、散歩はラカット・ラカット(Lakat lakat)。形容詞は、繰り返すことで強調するので、「大きい」のダコ(Dako)が、すっごく大きいとダコダコ(Dako dako)。何だか幼児言葉のようで、オっさんが喋っても妙に可愛く聴こえます。
この辺りの語感が、フィリピン国内でもイロンガ(女性イロンゴ話者)が、魅力的だと言われる所以。差し詰め日本なら、京都弁みたいな感じかも知れません。
ところでピスピス。タガログとも、お隣のセブアノとも全く違う言葉。タガログではイボン(ibon)でセブアノだとランガム(langgam)だそうです。あまり可愛くないですね。
なぜイロンゴ語の鳥の話から始めたかと言うと、最近、自宅の向かいにある木に大量の鳥が集まるようになって、毎日鳴きまくっているから。日本でもありそうな、椿に似たような葉の樹木で、それほどの大木でもなく、高さがせいぜい4メートルぐらい。ただ、水平に広く繁茂して大きな木陰ができるので、庭木にすると良さそうな樹相。
今この木に、小さなサクランボみたいな実が鈴成り。おそらくそれを目当てに鳥が来るんでしょう。実と同様、鳥もかなり小型で、成鳥でも鶏のヒヨコ程度。これが何十羽、あるいは百羽近くいるのか、朝からやかましいことこの上なし。なるほどなぁ、確かに「ピスピス」と聴こえます。さすがネグロスの鳥だ。
一羽づつなら可愛い小鳥でも、これだけいたらちょっと怖い。私の同世代なら、映画『ヒッチコックの鳥」を思い出すでしょう。もっと怖いのは、子供の頃に見た「妖怪人間ベム」のエピソード。無数のカラスが路面電車を襲い、満員の乗客を皆殺しにしてしまうという、およそ子供向けとは思えない、トラウマ級のアニメ。
それはさて置き、音量から言うとすごいレベルのはずが、意外にもそれほどの不快感がないのが不思議。ブログやイラスト作業に集中すると忘れてしまう程度で「あれ、いつの間に鳴きやんだ?」てな具合。何なら余裕で昼寝でもできそう。
同じ鳥類でも鶏だとこうはいきません。なぜか近所で数羽の雄鶏が放し飼いされてるもんだから、朝の暗いうちに至近距離で時を告げられると、早朝覚醒で二度寝もできないという目に遭います。我が家の飼い犬、ゴマも同様。まぁゴマの場合は番犬なので、吠えないと意味がないんですけどね。
ということで、緑が多い(つまり周囲が空き地ばかり)私が住んでいる宅地セント・フランシス。今、このブログを書いている書斎の窓からの景色も緑がいっぱい。冒頭のピスピスだけでなく、何種類いるのか分からないぐらい、毎日・毎朝、いろいろな野鳥が囀ります。これが本来のフィリピンの自然。
こんな楽園に生まれ育った人たちが、なぜ騒音のような大音量音楽を好むのか、はなはだ理解に苦しむところです。
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