ひし美ゆり子さん演じるアンヌ 出典:アニメージュ・プラス |
今日本では、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンに続き、庵野秀明監督のシン・仮面ライダーが好調。私より数年だけ歳上の庵野監督。やっぱり子供の頃に影響を受けた映画やテレビ番組は、だいたい同じのようです。
彼の作品では、「新世紀エヴァンゲリヲン」シリーズが嚆矢なんでしょうけど、放送開始が1995年。私の人生で公私共に一番多忙だった時期なので、見るきっかけがなかったんですよ。年初には阪神淡路大震災があったし、11月にはフィリピンを含む東南アジア諸国の連続出張してたり。
そんなわけで、庵野作品として最初に意識して見始めたが、シン・ゴジラ(庵野さんは総監督で、監督は樋口真嗣さん)。つまりフィリピンに移住してから。作風はまったく違いますが、アニメから出発して、実写も手がけている有名監督としては、押井守さんがいますね。こちらは、「うる星やつら2」を始めとして「パトレイバー」「攻殻機動隊」など、だいたいの映画は観ております。
さて、庵野さんのような、日本を代表する映像クリエーターになると、どうしても「撮りたい映画」だけ撮ってるように思われがちですが、実は、国内外の多くのヒット・メーカー同様、マーケティングの感覚は臆病なほどに鋭いそうです。観客に受けなければ、次作にお金はかけられないし、まず企画自体が通らないから、当たり前と言えば当たり前。
社会現象化したシン・ゴジラほどではないにせよ、十分「大ヒット」のシン・ウルトラマン。その直後にもかかわらず、昔を知るライダーファンに寄せるか、若い人にアピールするかで、すごく悩んだそうです。それを探るためにわざわざ早い段階で、1970年代の特撮風と今風の予告編を用意。両方ともYouTubeで見ましたが、言われてみれば確かにそうでした。
ちなみにフィリピンでもゴジラは、ハリウッドで再三映画化されてることもあり、それなりの知名度。ところがウルトラマンになると知ってる人が激減して、仮面ライダーは誰も知らない。同じ石森章太郎さん原作でも、パワーレンジャー(アメリカでリメイクされた秘密戦隊ゴレンジャー)は、ファンが多いんですけど。
そしてネット界隈での話題は、次の「シン」は何か?
もし出渕裕さんの「宇宙戦艦ヤマト2199」や、安彦良和さんの「機動戦士ガンダムTHE ORIGIN」が世に出てなければ、絶対にヤマトかガンダムってことになったんでしょうが、さすがにそれはもうない。ガメラも、樋口真嗣さんが「平成ガメラ・シリーズ」で3本も特撮監督やってるし。
そこで私が一番に推したいのがウルトラセブン。いやウルトラマンが既出なんだから、ヤマト以上に無いだろ?と言われるのは承知の上。だって最初の1970年代に小学生だった世代にすれば、おそらくウルトラマンよりセブンの方がハマった人は多いはず。
当時としては破格の大ヒット作品なのに、あまりにスケジュールが厳し過ぎて、半年余りで一旦休止せざるを得なかったウルトラマン。予算や時間がもう少しあったら、ああしたいこうしたいというスタッフの思いの丈を、次作のウルトラセブンにぶつけたそうです。ある意味、セブンこそ「シン・ウルトラマン」だったのかも知れません。
リアルタイムで視聴してた当時は無我夢中でしたが、大人になってその魅力を分析すれば、やっぱり「メカニック」と「恋愛」の二大要素。
まずはメカニック。空前の格好良さだったウルトラホーク1号とウルトラ警備隊の各種兵器。何より富士山麓の地下にある設定の秘密基地からのホーク1号発進シークエンス。なぜか構内アナウンスが英語だったのは、少し前に、同じく子供たちを熱狂させた、イギリス製の「サンダーバード」への対抗心だったんですね。
このホーク1号って、合体メカの先駆けだったように思います。前作のキャプテン・ウルトラにも3機が合体するシュピーゲル号はありましたが、造形センスも特撮の凝り方も、ずいぶんと洗練されてたなぁ。
そして、主人公モロボシ・ダンと、アンヌ隊員の恋愛。正直、幼稚園から小学校の年齢だった私にはイマイチ理解できなかったものの、シリーズ全話を通じて通奏低音のように流れる、アンヌの淡い恋心。ファンの間ではもはや神話になった、最終回での劇的な別れのシーンは、ダンが自分の正体を明かすというより、大人になって見たら完璧にアンヌからの愛の告白。BGMがシューマンのピアノ協奏曲という格調高さも感涙もの。
ということで、庵野さんも当然ウルトラセブンは知ってるでしょうし、ファンにとっての勘所も熟知しているのは間違いなし。監督の次回作には、ぜひ「シン・ウルトラセブン」をお願いしたいものです。
令和のアンヌ隊員に会いたいのは、絶対に私だけじゃないと思いますよ。
5年前に描いたウルトラセブンのイラスト |
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