引き続き、子育て支援のお話。
前回の投稿では、明石市の泉房穂市長の子育て支援を取り上げました。彼の取り組んでいる「所得制限なしの五つの無料化」に代表される政策は、本人さんも言っている通り、ある意味当然。本気で出生率を上げて経済を回したいのなら、誰が考えたってそれしかないだろうという王道。
ところが、素人でも分かるシンプルな話って、変に裏を知っている玄人ぶった連中が、滔々と出来ない理由を数え上げて潰してしまいがいち。これは政治の世界に限ったことではなく、組織が大きい民間企業でも同じなんですよね。私もサラリーマン時代、嫌というほど思い知らされた日本の現実。
実際、子育てには心配が山積み。もし障害を持って生まれたら、病気になったら、学費が高過ぎたら...。特に、病的なほど失敗を恐れる傾向が顕著な若い世代。保険も年金も、自分たちの負担額は上がるのに、老後には年金が貰えるかどうかも分からない。あまりの待遇の悪さに教員の成り手がない。PTAに入らないと子供が不利益を受ける。イジメ(と呼ばれる犯罪)で子供が自殺。
これだけ嫌になるような報道ばかりだと、いざ子供を持とうと思っても躊躇してしまって当然でしょう。一人目はもちろん、二人目三人目には相当なハードルになる。
幸いにも私たち夫婦の場合、経済的にはそこそこ余裕があって、家内の出産に際しては、多少高くても英語が話せるドクターのいる産婦人科を選んだり、保育園〜幼稚園一貫のモンテッソーリ式施設に通わせたり。家内が専業主婦だったのも大きかった。
これまた幸いに、生まれた時から息子は健康優良児。言葉も早く、幼稚園の時には、最寄り駅まで歩く間、商店街の漢字や英語の看板を全部読み上げて、ママ友を驚かせたりしてました。これは少々親バカが過ぎますね。
それでも小学校に入ろうかという頃に心配したのが、日比混血であることを理由にしたイジメ。実際には日本の小学校には1年通っただけで、2年に上がるタイミングで移住。その間、イジメに遭うことはありませんでした。
そこから現在に至る10年の間、小中高、ずっとネグロス島の地元私立学校に在籍する息子。なぜ私立かと言うと、全教科を英語で教えてくれるから。もちろん教師も生徒もほぼ全員がイロンゴ語(西ネグロスの方言)ネイティブで、一般の会話はイロンゴとなるんですが、少なくとも授業中は英語。
おかげさまで、普通に友達もできたし、不登校になるようなこともない。むしろ小学校低学年の頃は、日本人っぽい風貌が珍しがられて、女の子にモテたりしてました。その後、モテ期(?)は過ぎたものの、成績は上々で英語・数学・科学(理科)では、時々学年トップの賞状を貰ってます。
この経験を持ってして、フィリピンでの子育てが日本より楽だと言うと、かなり語弊はあるでしょうけど、親同士や教師との人間関係の不和、あるいは差別・イジメの類で悩んだことがなかったのは事実。もっとも、日本への帰国前提で、マニラやセブの日本人学校に通学となったら、いろいろあったかも知れません。
ともかく、国公立ならば大学まで含めて学費は無料。また、予期せぬ妊娠・出産、あるいは病気や貧困、服役などで義務教育の機会を失った人のための専門のスタッフもいます。私のイロンゴ語家庭教師のバンビの本職が、このALS(Alternative Learning System / 代替学習制度)の先生。
とは言うものの、五つの無料化なんて夢のまた夢だし、親の無知・貧困による教育格差は、残酷なほど厳然とあるのがフィリピンの現実。国民皆保険がなく、たとえ生き死にに関わる病気になっても、満足な医療も受けられない子供は、決して少なくない。実際フィリピンの新生児の死亡率は、1000人当たり13人にも及び、1人未満の日本に比べると大変な高さ。(2022年WHOの調査)
それでもフィリピンの出生率は、まったく下がる気配すらない。これだけ子育てに対する不安要素があっても、結構若いカップルはガンガン結婚するし、結婚しなくてもガンガン子供を作っちゃいます。また生まれた子供は、たとえ母子家庭でも、周囲の親戚や隣近所が寄ってたかって育てちゃう雰囲気がある。
この辺りは、ベビーカーで満員電車に乗ると露骨に嫌がられる、日本の社会的な子供嫌いからは想像も難しいレベル。ほんと、フィリピンでは老若男女、子供好きが多いですから。
ごく最近、21世紀になって20年以上経過した今頃になって、カトリックの総本山バチカンでは、避妊を認める動きが出てきたので、ひょっとするとフィリピンでも、多少の人口増加抑制のきっかけにはなるかも。
誤解のないよう書き添えますが、フィリピンでも、マトモな教育を受けた男女なら普通に避妊はするし、薬局で避妊具はちゃんと売ってます。
ということで、積極的に子育てを難しくしている(としか思えない)日本と、ほぼ子育て支援は放置状態なのに、子供がうじゃうじゃいるフィリピン。正直、ここまで差が極端だと、どっちが幸せなのか判断が難しい。いつものことながら、中間ぐらいの国って、ないものかと溜息が出ます。
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