前回は、フィリピン・ネグロス島への移住を、どういう経緯で思いつき、決断したかを語りました。今回は、そこから十年かかった準備期間で、具体的に何をやったかを書いてみます。
まず何はなくてもお金。そこから貯蓄する目標金額の設定と、50歳到達時の退職金を再度のチェック。これは突発事故でもない限り、見通しが大きく外れることはないでしょう。詳細は省きますが、合計が数千万円にはなる見込みで、これがあったからこそ退職してネグロス移住を決断した次第。その根拠が年間約100万円の生活費と算出したから。実は恥ずかしながら、宝くじも買ったりしましたけどね。
つまり、最初からフィリピンで働く意思はありませんでした。結果的に無職になったのではなく、確信犯。もう私たちの世代(1960年代生まれ)では、退職金と年金だけでは夢のまた夢の「悠々自適」ってやつを、やってみたかったんですよ。こう書くと、現役で働いておられる20〜40代ぐらいの人からは、思いっきり反感を買うでしょうねぇ。
ただ、大まかには何とかなるとの目処が立ったとは言え、ここからの詰めがとても大事。
お金の次が住環境。すでに移住を決めた時点で、家内名義でネグロス島に600平米の宅地を購入済み。今でも日本に比べるとネグロスでは格安の土地価格。20年以上前には、市の中心部に近い閑静なエリアであったにもかかわらず、200万円もしなかった記憶が。ローンすら不要でニコニコの現金払い。ちょっとした自家用車を買うぐらい。
若干怖かったのは、実際の支払い。メトロバンク(フィリピン最大手の銀行)大阪支店から義母の口座に振り込んで、地主に払ってもらいました。高校教師である義母は100パーセント信頼してるものの、フィリピンの銀行への不信感がなかったと言えば嘘になります。何しろ高額ですからねぇ。なのでランドタイトル(土地の権利書)を手にした時は安堵しました。
さらには、たまたま知り合った大阪在住の一級建築士に、自宅の設計まで依頼する気の早さ。この方、日本の団地への見識と愛情で知られた、その道では有名人。こんな風変わりな依頼を面白がって受けていただき、移住の何年も前には基本設計が完了。
この件、我ながら上々の判断だったと思うのは、限られた原資で10年15年と暮らすには、居心地の良い住居が必要不可欠だったから。若くて毎日働いているなら、そこそこの寝ぐらでも構いませんが、毎日が日曜日状態となったら、それ相応の広さと居住性が維持されてないと、またぞろ心を病んでしまいます。それに頻繁に出歩いて外食ばかりでは、いくら物価が安いネグロスであっても、年間100万円程度ではとても暮らしていけません。
結果的に建築士さんの図面からは、かなり変更させてもらいましたが、出来上がったのが母屋と離れを合わせて、寝室が6つ、トイレ・シャワーが4つ、リビング・ダイニングが2セットある、家族3人には贅沢すぎる間取り。もちろん庭付きで、バックヤードには四畳半程度のバンブーハウスもあります。
とまぁ、箱モノは準備万端ですが、一番大事なのは心と体の健康。どんなにすばらしいハードウェアがあっても、ソフトがポンコツだと使い物にならないのと同じ。
もともと週一でテニスをしていて運動習慣はあったものの、最寄りのテニスコートへの行き帰りを電車から自転車に切り替えました。当時住んでいた大阪の茨木市から、吹田や豊中までは結構なアップダウンがあって片道が10キロ以上。真夏など、コートに着いた時点ですでにヘトヘト。でもこれって移住後に経験が生きました。全然知らなかったんですが、海沿いが平坦なネグロスは、サイクリングの適地。サイクル野郎も結構多いんですよ。
そして定年後の生活に欠かせないのが趣味の充実。デザイナーだったので昔からイラスト描きは大好きで、それに加えて始めたのがアマチュア・コーラス。参加したグループがかなり本格的で、年に一回ホールを借りて、テレジアミサ曲のようなクラシックの声楽曲を歌ったり。プロの指導でボイストレーニングしたのは、この時が初めてでした。
意外にも役立ったのが、ミクシイの日記。学生時代から本の虫だった私は、読書量は多くても書くことはほとんどなかった。ところが二、三十人程度のマイミクさんに読んでもらうだけでも励みになって、フィリピンのことや2005年に生まれた息子のことなど、せっせと投稿。大袈裟に言うと、このブログにつながる文体が、この時に確立されたように思います。
ということで、意図的に仕組んだものと、意識せず結果的に伏線となったものが上手い具合に結びついて、移住後十年が経過。一応は予想以上の成功と言えるでしょう。もちろん途中でいろんなトラブルがあって、軌道修正を余儀なくされた事柄も多々あれど、ある程度の準備と臨機応変な姿勢があれば何とかなるもの。まぁやってみないと分からないことも多いですからね。
最後に強調しておきたいのが、健康の大切さ。本当は運も大切なんですが、こればかりは人事を尽くして天命を待つしかない。不測の怪我や病気には、いくら気をつけても逃げられない時があるものの、生活習慣で守れる部分も大きい。これは海外移住とは無関係に、どんな人生でも最重要課題ですから。
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