2023年6月13日火曜日

将来に備えて今を生きない日本人

 このブログの読者の方って、すでに海外で生活してたり、国際結婚してる人が多いようです。なので、それなりのリスクは覚悟の上で、前に進んだ経験はおありでしょう。まぁ結婚なんてものは、どこの国の人がパートナーでも、破綻のリスクはつきまとうもの。嫌なら別れたらいいだけのことだし。

さて、フィリピン暮らしのリスクで、私が最大だと思うのが医療。医師・看護師の報酬が低すぎて、有能な医療スタッフはどんどん外国へ流出するもんだから、残念ながら日本に比べると、国内の医療レベルは、かなり低いと言わざるを得ません。その上、健康保険制度が未整備なので、自分で保険に入るか、フィルヘルス(フィリピンの公的な健康保険)に加入済みの配偶者がいないと、入院や手術の費用が捻出できない恐れもあります。

救急車で運ばれるような急患かつ重篤な状況でも、デポジット(前払金)がないと、治療も受けられないという仕打ちが日常なのがフィリピンの現実。ただこれは、保険に入るなり、緊急用のキャッシュを日頃から用意するなりして、準備が効く性質のもの。癌などの生死にかかわる病気なら、日本に戻って治療することもできます。

最悪の場合は、脳卒中や重大な交通事故。でもここまで行くと、日本にいたって死ぬ時は死んじゃいますから、あんまり心配し過ぎても意味がなさそう。要するにリスクはあっても、ある程度の備えがあれば、憂いも少ない。

ただ、時々いるのが、ちょっとでもリスクがあるというだけで、海外移住を全否定してしまう人たち。日本での生活には満足していて、今がとても幸せなんだったらそれも分かりますが、不満・不平ばかりで、フィリピンで暮らせて羨ましいなんて言いながら、「じゃあなたも移住したら?」と返すと「できるわけないでしょう」と逆ギレ。

「英語ができない」「治安が悪い」「食べ物が合わない」「暑すぎる」そして「病気になった時が心配」。お決まりのできない理由の羅列。そういう人に限って、日本以外で暮らしたことがないし、フィリピンについて調べたこともない。ましてやフィリピン人の友人・知人なんて皆無。食わず嫌い、ここに極まれり。

やや誇張して書きましたけど、実際にこれに近いやりとりって、移住前に何度かありました。どうやら、多少英語が喋れたり、フィリピン人の妻がいる私が、何やら特別に恵まれた人間だと思い込んでいるらしい。もちろんそんなことは全然ないわけで、英語なんて社会人になってから、TOEIC得点100未満から始めたし、家内と一緒になる時は、母親や親戚から大反対。移住の準備金だって、結果的に30年近くかかって稼いだもの。

結局のところ、多くの日本人って、貯金、保険、子供の教育などなど「将来に備える」と言いながら、今現在の生活の質を犠牲にしている気がします。その割に、その「将来」の具体的なビジョンがあるわけでもなく「漠然とした不安」があるばかり。歯を食いしばって、将来のために耐えているはずが、その将来はいつまで経っても将来のまま。

その対局にあるのが、フィリピン人のメンタリティ。今を楽しみ過ぎて、明日の食い扶持のことさえ忘れてしまう、ある意味とてもハッピーな人たち。実はどっちもどっちで、程度の問題なんですけどね。

そんなこんなで、50歳も過ぎて定年が近づいてから。職場や家庭で若い頃から我慢してきたことって、一体どんな意味があったの?と気づくわけです。これは切ない。現在フィリピン・ネグロス島で、ほぼストレス・フリーに暮らしている私ですら、例えば20代でこれに気づいていれば、もっと納得度の高い人生だったかもと思う次第。



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