文春オンラインで、一部抜粋の記事を読んだだけなんですが、今日はこの著作「ドゥテルテ 強権大統領はいかに国を変えたか」についての投稿です。
著者の石山永一郎さんは、1957年(昭和32年)のお生まれなので、私より5歳年上のほぼ同世代。共同通信社を経て、在比邦人にはお馴染みの日刊まにら新聞の編集長をされていたことも。石山さんの著作は、私がネグロス島に移住する前に「マニラ発ニッポン物語」を読みました。
そんなフィリピンに詳しいジャーナリストなので、抜粋だけでも切れ味の鋭さが感じられる文章。ドゥテルテ前フィリピン大統領に関しては、6年前の就任直後から「対ドラッグ戦争」のセンセーショナルな部分のみ切り取って、日本でもかなり報道されました。そのほとんどが、いわゆる超法規的殺人での死者数や、巻き添えになったとされる子供や女性にフォーカス。
おそらく文春がつけたであろう、今回の記事の見出しも「『抵抗する者は殺せ』警察による超法規的殺人で6000人超が死亡、なかには3歳の少女も…腐敗していた警察組織の“リアルな実態”」(長っ!)と、煽りまくってます。
詳しくは記事をご覧になるか、著作を購入いただくとして、私が注目したのは、前大統領の荒療治について書くだけでなく、警官や軍人の給与を引き上げた逸話に触れている点。現地に住む日本人でさえ、関心がなければ知らないでしょうけど、フィリピン国民には相当なインパクトがあった事件。
なにしろ初任給がきなり倍の3万ペソですからね。
日本円にすると円安の今でも10万円に届かない金額なので、安過ぎると思うかも知れませんが、教育省の地方分室で管理職やってる家内の月給と、ほぼ同額なんですよ。マニラ首都圏でさえ、日給が1,000円(時給じゃないですよ)ちょっとで働いている人がザラなことを鑑みると、高給取りとまでは言えないにしても、贅沢しなければ、普通に生活できる収入。このニュースを最初に聞いた時は、家内がずいぶんと不機嫌になったものです。
つまり、それ以前に不正や汚職が蔓延していたのは、単純に給料が安過ぎたから。貧すれば鈍するのことわざ通り、悪事に手を染めないと、食っていけないし家族も養えない。やっぱり長くフィリピンに住んだ人だけあって、石山さんは見るべき所をちゃんと見てますね。
実際、数年前にマニラに行ったら、驚くほど街並みが綺麗になっていた記憶があります。たまたま乗ったタクシーの運ちゃんも、大統領のおかげで治安が良くなったと、ドゥテルテさんを褒めることしきり。こういう部分が、日本では報道されないんですよ。
さて、治安改善の特効薬が結局のところ給料倍増だったというと、後進国のフィリピンだからだと馬鹿にする日本人もいるでしょうけど、現代日本の問題のほとんどが、同じ処方箋で解決できるんじゃないでしょうか?
例えば、教師の不足。なぜか文科省の打ち出す対策が、素人が考えても一番の課題「給与アップ」「職場環境改善」じゃないんですよね。ドゥテルテさんに倣って、来年度から初任給を倍!ってやれば、一撃で解決でしょう。どうせ、できない理由を滔々と説明されるのがオチでしょうけど。
このブログで何度も取り上げている、明石市の泉市長がやった子育て支援も、まさにこの考え方。子供のための予算を倍にして、子供の医療や学校給食を無料にする。財源は無駄を省いて切り詰めたら、10年後に市の人口は増え、税収も増えたという、輝かしい成功事例。それに倣う地方自治体も多いそうで、完全シカトしているのは中央政府だけという現実。
実は、これと同じようなことを、企業勤めの頃にも感じました。かつて私が所属していたのは、一部上場の大企業。世界各地に進出しているので、社員の国籍も多様。当然、世界中から優秀な人材を引き抜けるだけのお金はあったはず。
ところがいざ途中採用となったら、社内規に縛られて最初はすごく安い給料しか出せない。これでは「今の給料の二倍三倍出しますよ」と誘いをかけてくる、中国や韓国企業に勝てるわけがありません。私の同僚にも、韓国の会社に転職した人が何人もいるぐらい。
ということで、退任間際まで80%近い支持率を残したドゥテルテ大統領。官民関係なく、彼に学ぶべきところはまだまだあると思います。この投稿を書きながら、石山さんの本をキンドルでポチりましたので、近いうちに読後感を共有しますね。
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