出典:Asia Media International |
昨日(2023年7月23日)付のNHKの記事によると、マニラで開催された、日本で看護師として働きたい人への説明会に、応募者が17人だけだったとのこと。わざわざ記事にするってことは、NHKの記者は、驚くべきことだ思ってるんでしょう。しかし私を含めてフィリピン在住の日本人にすれば、当たり前やないかというのが正直なところ。
ブログを書くに当たってちょっと調べてみたのが、看護師の給料。厚生労働省の発表によると、2022年の看護師の平均年収は約508万円。話に聞く重労働かつ長時間労働の報酬としては、決して高いとは言えません。10年前、ヒラのサラリーマンだった私ですら、もう少したくさん頂いておりました。
それに対して2021年のアメリカ。全米の平均で正看護師の平均給与が82,750ドルと言いますから、余裕で1,000万円超え。もちろん日米とも地域や病院、役職などで金額には幅があるし、日本の看護師でも高額報酬を受け取ってる人もいる。さらに円安の影響を勘案したとしても、平均で倍の差というのは、ちょっと大き過ぎます。フィリピンで医師として働いている人が、敢えて看護師として渡米するぐらいですからねぇ。
加えて決定的なのが言語の壁。フィリピンで医学を学ぶようなレベルの人なら、普通にネイティブ並みの英語力があるので、アメリカで本職の知識・経験以外に求められるものは、基本的にありません。ところが日本は、医学用語のほとんどが日本語で、それを解さないと看護師として認められないというスタンス。ひょっとすると日本人が日本で看護師資格を取得するより、難しいんじゃないか?
身も蓋も無い言い方をすれば、医療技術があって高度な日本語を理解するような頭脳の人材なら、たかだか年収500万円ではまったく割に合わない日本での看護師職。
という程度のことは、フィリピンに何年も暮らさなくても、ちょっとググれば分かる話。NHKの記事では「人材の獲得競争が激化してる」とか「フィリピン当局の協力が必要」なんて、的外れな結びになってますが、単に労働の場としての日本が、給料が安過ぎて魅力がないってだけ。この説明会を企画立案した人の頭は、1980年代の、ジャパゆきさんが日本に押し寄せた頃から、まったくアップデートされていないらしい。
日本を訪れるフィリピンからの観光客は、今や毎月5万人。韓国人の50万人余りに比べると1/10ながら、労働力を売りに来るより、お土産を買いに来る人の方が多いぐらい。いい加減に、日本が安い国になったことを、骨身に染みて理解するべき時。
当たり前に考えて、人手不足をなんとかしたいなら、給与を上げて、労働環境を改善するのが先決。フィリピン人だって「Karo-shi」という言葉を知ってますから。成り手が少ないと売り手市場になり、給料上げないと人が集まらないなんて、別に経済の専門家じゃなくても分かります。
これは看護師だけでなく、教師やタクシー運転手もまったく同じ構図。結局のところ政治家が、医療・教育・タクシー業界を牛耳っている圧力団体の方しか見てないから。これはもう9割9分政策の失敗だと思います。好き放題やっても与党が選挙で圧勝するんだから、そうなりますわなぁ。
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