2020年12月12日土曜日

フィリピンのプロテスタント

 今日は宗教の話を少々。と言っても、ありがたぁ〜い神の教えを信じなさい、みたいな布教目的ではございませんのでご安心を。

日本だと、政治の話題と並んで、宗教について語ると敬遠されたり、あからさまに嫌がられたり。何やら日常から遊離した、七面倒くさい人物だと思われがち。ところが、ここフィリピンでは、政治、宗教、共にとても日常的。特に宗教、つまりキリスト教は、国民の9割以上が信徒。むしろ、信仰がない人の方が珍しい。

とは言っても、誰もが「敬虔な」と形容されるべき、真面目なクリスチャンではありません。信徒でない方々にも知れ渡っている「十戒」の中でも、「盗むなかれ」「隣人を貪るなかれ」「姦淫するなかれ」「殺すなかれ」は、守らない人が多いのが現実。

政治家が率先して、税金を懐に入れるし、隣近所から金を借りまくって、いざ返金を迫ったら貸してくれた相手を「金の亡者」と罵り、浮気した妻を、その愛人共々射殺する。まぁ程度の差こそあれ、どこの国でもありがちな事ですけどね。

つまり宗教があまりにも日常に近すぎて、特別な存在ではない、とも言えます。特にユルユルなフィリピン・カトリック。「許しの神」を都合よく解釈した人は、悪い事しても日曜日のミサで、神さまに謝ったら許してもらえると思ってますから。

ちなみに一括りにクリスチャンと呼びますが、フィリピンの場合、その八割はカトリック。2,000年前の原始キリスト教から転じて、ローマ帝国の国教を経て、現在のバチカンにおられるローマ教皇を頂点とする、人口13億人もの一大宗教です。

国別にカトリックが過半数を占めるのは、ヨーロッパで言うと、イタリア・スペイン・フランス・ポルトガルなどの、いわゆるラテン系の国々とアイルランド、そしてハンガリー・チェコなど東ヨーロッパの一部。

スペインやポルトガルを旧宗主国とする、メキシコ・ブラジル・アルゼンチンなど、サッカーが強い中南米諸国は、軒並みカトリック。そしてアジアでは、ぶっちぎりで最大のカトリック人口を誇るのが、我がフィリピン。

カトリック以外で多くの信徒がいるのは、正教会。英語では「オーソドックス」。元々はカトリックと同根だったのが、東西ローマ帝国の分裂や、十字軍の遠征など複雑な経緯で分かれたもの。現在では主にロシア、ルーマニア、ギリシャに信徒が多く、総数約3億人と言われています。

そして、今日のテーマのプロテスタント。

誤解されている方がおられるかも知れませんが、プロテスタントとは、カトリックや正教会のような、一つのまとまった組織なり信仰で束ねられている単一の教団ではなく、多種多様な宗派の便宜上の名称。「Protestant〜異議を申し立てる者」の名の通り、16世紀の中世カトリックの腐敗に対して、ドイツでの宗教改革を試みて破門された司祭、ルターが興したルーテル教会が最初。

同様にカトリックから分かれた宗派として改革派教会やイングランド国教会などがあります。ちなみにイングランド国教会の場合、教義上の対立ではなく、16世紀の国王ヘンリー8世の離婚問題に端を発しているので、典礼の内容は、カトリックに近いそうです。

さらにアメリカではカトリックや正教会を凌ぐ隆盛を極めているのが、バプティストやメソジスト、長老派、などなどで構成されるプロテスタント諸派。フィリピンのプロテスタントは、フィリピン発祥のイグレシア・ニ・クリストやペンテコスタルなどに加えて、アメリカからやって来た宗派も多い。

シライ最大のプロテスタント教会
イグレシア・ニ・クリスト

我が家の近所にも、結構な数のプロテスタント教会があります。例えば、セブンスデイ・アドベンティストに、ニューホープ・バプテスト、さらには、日本でも知られているモルモン教こと末日聖徒教会やエホバの証人まで、何でもありの状況。

ここからは、カトリックの末席にいる私の主観ですが、ことフィリピンに関する限り、信仰心では、どの宗派であれ、プロテスタント信徒の方が概ね真面目。一般のフィリピン人カトリック信徒が、宗教なんて生活の一部で、空気みたいなものと思っているとしたら、プロテスタントの人々は、溺れかかって、自ら空気を求めているように見えます。

これは、権威的で偉そうに見える、カトリックからの改宗者が多い事と、無縁ではないでしょう。

そのせいか、時間や金銭感覚にルーズと言われるフィリピンにあって、プロテスタント信徒さんは、例外的に時間にもお金にも、きちんとした人が多い。また信徒の数が少なく、誰もが顔見知りで結束も固い。一つの地区が、丸ごと同じ宗派という話もよく聞きます。

その牧師さんは、集まる人の顔と名前が一致していて、各人の家庭環境や交友関係も把握しているから、メンタルセラピストの役割も担っているようです。これは、本来、カトリックの神父にも求められる素養だったのが、フィリピンでは信徒数が多過ぎて、なかなか手が回っていない。

ただその反面、真面目過ぎて、融通が効かないケースもあります。教会の活動が最優先で、遊びに誘っても動きが取れないとか、若い女性の服装に対して、ちょっと行き過ぎなくらい厳格だとか。率直に言うと、仲良くなってもなかなか本心を見せない、壁がある感じ。もし恋愛の相手がプロテスタントだったら、正式に結婚しない限り、かなり窮屈な付き合いになりそうです。

ちなみに、自宅を新築中に住んでいた借家の隣が、日曜日の朝だけ、某プロテスタント教会の集会場。若い牧師さんは、毎週やたら情熱的な説教をして、最後には決まって、信徒さん共々、感極まって号泣するスタイル。ここまで行くと、ちょっと危ないですね。

実は私、中学生ぐらいまでは、日本でプロテスタントの教会に通っていて、その当時の印象は今と真逆。カトリックの方が四角四面で堅苦しく、クソ真面目な人が多いと思ってました。これは国によって信徒さんの年齢構成や地域差もあるので、一概には言えませんが。

ということで、今日は、この国に住んでいても、日本人には馴染みの少ない、フィリピンのプロテスタントについて書いてみました。



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