2023年2月9日木曜日

ルフィがいたフィリピンの刑務所

 もうインターネットの日本語ニュースでは「ルフィ」の話題ばっかり。フィリピンが日本で騒がれるのは、ほぼ災害か犯罪関係のみ。たまに静かな口調で取り上げられても、だいたい貧困とか困窮邦人絡み。私の家内など「ネガティブ・キャンペーンばっかりや」とボヤいております。

このブログを読んで頂いている方なら、ルフィ事件を知らない人は、まずいないと思いますが、もし「なんじゃそりゃ?」という人は、「ルフィ」「フィリピン」でググってくださいまし。

それにしても改めて注目されているのが、フィリピンの刑務所のひどさ。実はフィリピン国内では、前々政権であるノイノイ・アキノ大統領時代に、時の司法長官(日本の法務大臣に相当)だったレイラ・デ・リマ女史によって、マニラ近郊にあるビリビッド刑務所で、麻薬で捕まった大物、所謂「麻薬王」たちが、大富豪のような監獄暮らしをしていると暴露して大騒ぎに。

金をつかまされた看守たちによって、大理石を敷き詰めたエアコンやジェットバス完備の部屋が用意され、驚くべきことに、刑務所内に麻薬や酒、さらには娼婦までも持ち込み放題。週末には外出さえ黙認されていたと言います。無茶苦茶ですな。

金さえあれば、ここまでできるんですから、ルフィが携帯電話で日本に犯罪指示をするなんて、可愛く見えてしまいます。

そして、私のイロンゴ語(西ネグロスの方言)家庭教師のバンビによると、これはマニラなどの大都市に限ったことではないらしい。人口12万人の地方の小都市、オラが街シライの刑務所でも、殺人で有罪となり収監されている人物が、刑務所内でカラオケやダンスに興じているとのこと。それだけでなく、同じように携帯電話で外部に指示を出して、逮捕前からやっている高利貸しを続けているんだとか。

マニラ首都圏の麻薬王に比べれば、ずいぶんと小粒ながら、やっぱり刑務所の職員は賄賂で転ぶのが当たり前。

結局のところ、刑務所に限らず、国際空港に入国管理局、陸運局も教育省も、およそ法治国家とは思えぬ汚職が蔓延するのは、給料が安過ぎるから。ドゥテルテさんは、警官と兵士の報酬を倍増させて、かなりの成果を上げたものの、刑務所まで手を回す前に任期が切れてしまいました。

ちなみに、刑務所の腐敗を暴いたデ・リマさんは、ドゥテルテの麻薬戦争での人権侵害を猛批判した結果、違法薬物取引に関与したとされ逮捕、投獄。う〜ん、ドゥテルテ贔屓の私が見ても、これはちょっと喧嘩する相手を間違ってるんじゃないかと思います。

ところで、ルフィ事件の3年前の2019年、コミックの海賊版サイト「漫画村」を運営していたとして、フィリピンに潜伏していた星野ロミ氏が、現地の警察に勾留されました。その後、フィリピンから強制退去となって、帰国後に日本の警察によって逮捕。詐欺、強盗、殺人にまで及んだルフィの容疑ほどではなく、当時もそんなに大騒ぎになった記憶はないけれど、逮捕に至る経緯がそっくり。

ちょうど数ヶ月前に仮出所していた星野氏に、フィリピンの刑務所に関する取材が殺到してるんだとか。

いずれにしても、フィリピン・日本の双方が、お互いの国のイメージを悪くするばかり。この報道の過熱ぶりって、何となく既視感があると思ったら、1986年にフィリピンで起こった、三井物産マニラ支店長の若王子さん誘拐事件。

当時はホームビデオ全盛時代。事件報道で番組予定がぐちゃぐちゃになり、録画予約していた映画が全部ダメになったりしました。なので「録画予約の敵、若王子さん」と、不謹慎なジョークを飛ばしたものです。

ということで、ルフィも逮捕されたようだし、もうそろそろこの不毛な報道合戦も、下火になってくれませんかね? 戦争や大地震など、他に事件はいくらでもあるでしょうに。


0 件のコメント:

コメントを投稿