2022年5月22日日曜日

シライ憲政史上初、普通のオッちゃんが市長さん

 フィリピンの総選挙が終わって2週間。内外の注目は、新大統領にほぼ確定したBBMこと、フェルディナンド・マルコス・ジュニアの動向。テレビ報道などによると、なぜかこのタイミングでオーストラリアに家族旅行したんだそうです。

大統領としての公務に就いたわけでもないし、厳密にはまだ次期大統領に決まっていない。自腹切ってるんだったら、好きにすりゃいいってことなんですが、庶民の感覚からするとこれはちょっと解せませんなぁ。

本人に会って直接聞いたわけではないけれど、浮かれ気分で海外旅行としか見えない。本来なら、今後6年の任期に向けての閣僚人事やら、政策の詳細を詰めるなど、いくらでもやることがあるはず。国民を舐めるにも程があると思うのは、外国人の私だけではないでしょう。

それはともかく今日のお題は、グっと身近な、オラが街シライの新市長について。


市長に当選したガレゴさん(左)と
落選したマーク・ゴレツ前市長

以前にも投稿した通り、新たなシライ市長に選出されたのは、貧困層の市民が多く住むイーロペス地区出身のジョディス・ガレゴさん。1960年生まれでもうすぐ62歳になるという、私と同世代。

家内によると、若い頃はシライ市内にある製糖会社の「ハワイアン・フィリピン・カンパニー」で、警備員として勤務してたそうです。この精糖会社、名前の通りアメリカ資本で、1918年創業ですから、もう100年以上の歴史を持つ老舗企業。

砂糖産業に依存するネグロス島経済を支える大黒柱、と言うと聞こえは良いものの、地元の評判はあまり芳しくないハワイアン。なぜなら、炎天下でのサトウキビ刈り取りや運送などの重労働には薄給で報い、植民地時代から続く搾取の象徴のような存在だから。

方や工場勤務の管理職たちは、広大な敷地にスタッフ専用の一戸建て住宅を充てがわれ、ちょっとした上流階級気取り。庶民を露骨に見下した態度が鼻につくほど。ちなみにネグロスのサトウキビ畑の肉体労働者は、典型的な貧困層とされています。

実は私、ネグロスに移住した直後は、このハワイアンにあるコートで、当の「偉そうな」管理職の面々とテニスをしてました。日本人なので裕福と思われたせいか、嫌な思いをしたことはありませんが、そう言われれば、ボールボーイの子供への接し方が、いかにも偉そうでしたねぇ。

そんなハワイアンで警備員をやってたガレゴさん。貧乏人の悲哀を嫌というほど味わったことは、想像に難くありません。

ところで昨日、家内が友達のお母さんの葬儀で、新市長となったガレゴさんに偶然会ったそうです。その友達がガレゴ姓の親戚。遅れてきた市長は、別に偉ぶるでもなく最後列で葬儀ミサに参列。

家内曰く「あれがマーク(前市長)やったら、絶対一番前にしゃしゃり出てたわ。それに比べたらガレゴさんは、普通のオっちゃんや。」(私の影響で、家内の日本語は関西訛り)家内はシライ市の教育委員会(教育省のシライ・オフィス)勤務なので、マークは上司のようなもの。その人柄をよく知ってます。

シライ市の憲政史上、地主でも大金持ちでもない「普通のオっちゃん」がトップに立つのは、初めてなんだとか。

フィリピンの選挙は、キャッシュばら撒きの買票が当たり前。そんな中にあって、ポスターさえ満足に用意できないのに、市会議員から副市長、遂には市長と一歩づつ階段を登ったガレゴさん。ポスターがほとんど無いから、部外者の私など、彼の顔を知ったのが市長に当選してからというぐらい。

選挙戦の終盤には、追い詰められた現職マークのばら撒き資金が底をついて、投票前日に金をもらえると思ってた人が、大挙してガレゴ支持に流れたそうです。これはメイドのライラおばさんが見聞した実話。

さてこうなると、当然、新市長は、支持基盤である貧困層救済に向けて動き出すでしょうし、それについては疑いはありません。むしろ心配なのは、今までの利権を失うであろう富裕層、支配層の思惑。

少し前に大統領のドゥテルテさんが「市長になりたいならまず副市長になって、市長を暗殺したらいい」なんてジョークを飛ばしてましたが、フィリピンでは地方都市でも冗談にならないんですよ。

10万円も出せば殺し屋が雇えるという、恐ろしいお国柄。ヘルメットにサングラスのバイク二人乗りが、追い越しざまにターゲットを射殺するパターンが後を絶たない。実際にこの選挙期間中もフィリピン各地で、選挙絡みの流血の惨事が報道されてました。

ということで、ガレゴさんには貧困層目線の善政を敷いてもらいつつ、天寿を全うされんことを、本気で祈っております。



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