2022年9月6日火曜日

飲食業の誘惑

 日本から移住して来る人は、退職金や貯金を携えて、あるいは年金を見込んで、フィリピンでの収入を当てにせずに老後を過ごそうという「退職組」と、フィリピンでの起業・就職を前提としたガチの「就業組」に分かれると思います。

もちろん中には、年齢的には定年退職組だけど、やっぱり何らかの仕事をする「混合型」の方もいらっしゃるでしょう。65歳過ぎてるけど、そもそも年金を貰えない境遇の人もいるだろうし。

私の場合は、典型的な「退職組」で、しかも定年の10年前の50歳到達に向けて、移住資金を計画的に貯蓄したという、比較的珍しいタイプと言えるかも知れません。もちろん、同様のライフスタイルのパイオニアはおられて、私よりちょうど10年の年上で移住も10年先行。世の中には、似たような考え方の人がいるものです。

さて、用意周到に準備してきた移住計画で、ほぼ目算通りに家も建てたし、子供はもう高校生。移住前に周囲の親戚・知人たちが、大きなお世話で「警告」したような、トラブルにも見舞われておりません。曰く「フィリピン嫁に財産を盗られる」「治安が悪くて犯罪に巻き込まれる」「不便でやることがなくなって退屈でボケる」等々。

ただ、生活に困っているわけではないけれど、時々頭をもたげて来るのが、仕事への欲求。それも、誰かに雇われての給与生活ではなく、起業欲みたいなもの。特に頻繁なのが、飲食業への誘惑。

と言うのは、半分は趣味、半分は自分が食べたいからと始めた自炊生活が、思いの外定着して、日々の家族の食事だけでなく、来客に振る舞うことが増えました。これがまた、すごく好評なんですよ。


喜ばれるのが、それほど労力もお金もかからない、お好み焼きとかカレー、餃子の類。「これは商売できますよ」と、フィリピン人からも日本人からも言われて、その都度いい気分になっております。でも冷静になって考えれば、そう簡単ではないこともすぐに分かる。

そもそも日本スタイルの味を受け入れられる人は、ある程度、食に対する経験を積んだ人。つまり、私の住む地方都市シライの半分か、それ以上を占める中流未満の層には、なかなかアピールが難しい。

特に、ジョリビー(フィリピンで一番人気のファーストフード店)の、甘いスパゲティが、この世で一番美味しいと刷り込まれたような子供〜若年層って、驚くほど食べ物に対して保守的だったりします。野菜が全然ダメって人も多いし。

かと言って、それなりに富裕層のいる隣街の州都バコロドへ出店となると、場所代が馬鹿にならない。富裕層狙いでは、味は落とせないし、店内もある程度のレベルは必要で、初期投資額が大きくなるのは避けられません。シライ市内だったらガレージを改造してのトロトロ・スタイルという手もあるんですが。

あるいは、無店舗でのデリバリーに徹するか。それでも宣伝は必須なので、フェイスブックでマーケティングしたり、地道にビラ配ったり。ワンオペでは難しいので、家内に仕事を辞めてもらうか、人を雇うか?....もうここらへんまで考えると、面倒になって来るんですよ。

昔よく聞いた話によると、日本人移住者がフィリピンでの起業で失敗しがちなのは、日本でそこそこの成功体験があったが故に、フィリピンのお客さんをナメてかかってしまうケース。実際のところ、フィリピンでの飲食店経営は、日本よりも難しい気がします。

なので、本気でやるとなったら、投資は最小限に抑えて、気長に試行錯誤を重ねるしかないんでしょうね。まぁこれは、飲食業に限ったことではありません。よく考えたら、それができるぐらいなら、早期退職してネグロス島に移住はしなかった。というわけで、思考が一巡してしまうわけです。

さらに言うと、ネグロスにまでブロードバンドが普及した現在なら、無理に飲食業に手出ししなくても、ネット経由で日本人顧客を相手にしたビジネスの方が、リスクが小さくて効率もいい。なんだか夢のない結論ですみません。


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