2018年8月3日金曜日

フィリピンの悪いとこ取り


このブログで時々取り上げている、ここ何年かの日本の惨状。昨日は、東京医科大学が入学試験で女性受験者のみ一律に減点していたという、信じられない不正が発覚。しかも他の大学でも、女性の合格率が不自然に低いとの情報まで。

内閣総理大臣を筆頭に、政治家、官僚が嘘を吐いたり公文書を偽造したり、あるいは差別意識に基づく暴言を撒き散らしたり。今回は日本大学トップによる犯罪教唆や脅迫に続き、教育機関の腐敗まで晒してしまいました。

もうずいぶん前から問題になっている、企業による明らかな労働基準法違反と、その結果の過労死も含め、そこに通底するのは、憲法を含む基本的なルールの恣意的な解釈、あるいは公然たる無視、そしてそれに対して何らの羞恥も感じない、組織責任者のモラル崩壊です。

バレなければ構わないだろう、というのも悪質ですが、最近では不正や犯罪が指摘されても開き直ったり、あろうことか、さらに嘘を重ねて言い逃れをした挙句に、本来それを取り締まる警察や司法までが、揉み消しに加担。その上救いがないのは、大手の新聞やテレビ局さえが意図的に報道しなかったり。

少し前に、このブログでも指摘したことの繰り返しになりますが、基本ルールの無視とモラルの崩壊って、50〜30年前のフィリピンで起こったの同じことです。悪名高いマルコス元大統領は、憲法すら自分の都合の良いように停止できる戒厳令を悪用、事実上の独裁によって、一つの国を完全に私物化。

この20年に及ぶ暗黒時代、政界も財界も骨の髄まで腐ってしまい、贈収賄や横領、政治家自ら犯罪者との癒着で、違法薬物は国中に蔓延。国家としての信用は地に落ちました。革命から30年以上も経過した現在、やっと後遺症を払拭できそうなリーダーが登場したものの、改革の道はまだ半ば。

フィリピンのことを後進国だの、民度が低いだの、何かにつけて見下している日本人に言いたい。過去のフィリピンで起こったことが、まるで悪いとこ取りをする如く、日本で起こっています。しかも、この期に及んで、まだ日本が豊かな先進国で、世界一マナーのいい国だと、思い込んでいる人が少なくない。

先月にこの場で少し触れた、日本の生活保護。受給者が216万人もいるのも驚きながら、捕捉率が2割未満。つまり実際には1千万人が、生活保護を受けて然るべき貧困状況にあるということ。大雑把に言っても今の日本では、10人に1人かそれ以上の人が貧乏なんですよ。

日本の貧困の定義は、いわゆる「相対的貧困」(所得が社会全体の中央値の半分以下)で、フィリピンなどの「絶対的貧困」よりすっとマシだと言われるかも知れませんが、子供に与える精神的なダメージは、より深刻と考えられています。

日本に貧困の子どもなんて本当にいるのか?

それでも半数近いの国民が、現内閣を支持している(NHKのよる調査結果)というのが不思議で仕方ありません。まるで政権発足当時のマルコス人気を見ているよう。あれだけフィリピンをぶっ壊したのに、マルコス時代を懐かむ人がいたり、その妻や子供が現役の議員だったり。

つい最近、1960年代の西ネグロスの州都バコロドの街並みを撮影した、カラー写真を見る機会がありました。実にのどかで美しい場所だったんですね。ところが私が最初に訪れた1990年代の半ばは、市の中心部ですら荒れた感じで、市役所前の広場には、夜間薬物中毒患者が徘徊し、危なくて散歩もできない有様。

最近の経済成長のおかげで再開発が行われ、ようやく州都らしき佇まいを取り戻しつつあるバコロド市。1970年代から40年を経ての復興と言えるでしょう。

日本経済のバブル崩壊以降は、「失われた10年」「20年」などと言われます。経済を復興させるのも並大抵のことではありませんが、ルール尊重の気風やモラルって、一旦失われてしまうと、数値で確認できないだけに、反面教師としてのフィリピンを見るまでもなく、その再建は経済以上に大変そうです。


0 件のコメント:

コメントを投稿