2018年9月4日火曜日

子供扱いする日本


もう60年以上も前の映画「七人の侍」。公開が1954年(昭和29年)と言いますから、私が生まれる8年前。当然、映画館で見たはずもなく、初見は中学生ぐらいの時にテレビで。3時間を超える大作なので、前後編に分けて放送された記憶があります。

シビれましたね。時代劇・現代劇を問わず、ここまでリアルな映像物語って、それまで知りませんでしたから。というか、どの国の作品でも、こんなに強烈なインパクトは、50代の半ばを過ぎた現在に至るまで、感じたことがないぐらい。私にとっての「七人の侍」は、今でも史上最強の映画です。

そして、名シーンが散りばめられた中でも、特に印象に残っているセリフ。
子供は働くぞぉ。もっとも、大人扱いしてやれば、の話だが。
これは、七人の中で最も若い、勝四郎(木村功)を仲間に入れるかどうか、まだ子供だと渋るリーダーの勘兵衛(志村喬)を、侍の一人、平八(千秋実)が説得するように言った言葉。

当時は私が、勝四郎の年齢に近いこともあり、平八さん、エエこと言うなぁと、すごく感心してしまいました。後に、映画を繰り返し観て、自分の子供ができてからも、このセリフの持つ真実味は重くなる一方。

時と場所は変わって、1995年のフィリピン。当時マニラ近郊のタイタイにあった、某日系メーカーのテレビ工場。担当する東南アジア市場向け新商品の試作品を、大きなダンボール箱8つに詰めての、私のフィリピン初出張の目的地がここでした。

出迎えてくれたのは、日本から出向している先輩社員たち。商品企画、電気設計、機構設計、営業などなど、各部門に日本人マネージャーは一人づつ。日本では課長レベルでも、海外事業場では、役員並みの権限と責任を持つ、経営者の一人。皆さん、実に活き活きして、仕事ぶりが輝いて見えました。

ところが数年して、帰任した憧れの先輩たちは、どの人もしょぼくれて、身体のサイズまで小さく見えたのは、どうしたことか。

なるほどなぁ。フィリピンでは、たとえ経営者としてのキャリアが浅くても「大人扱い」されてたから、能力も人格も、ずいぶん大きく見えたのか。逆に日本では、上にエラいさんが多すぎて、まったくの「子供扱い」。そりゃ、小さくも見えるでしょう。

これは他人事ではなく、私も海外出張中は充実の日々でも、帰国が近づくにつれて元気がなくなり、空港で帰りの飛行機を待つ頃には、そのまま亡命したい気分。言ってみれば、出先では、30歳そこそこの若造でも、デザイン部門の代表者。

現地のセールス・カンパニーの社長と対等に渡りあって、丁々発止のやり取りをしなければならないし、いい仕事をすれば、スペシャリストとして、敬意を持って遇してくれます。それが、日本に帰れば、ただの下っ端社員に逆戻り。このギャップは辛かった。

ということで、このブログを読んでいただいている、日本の若者へ。専門家として、あるいは人間として成長したければ、さらにはシンプルに、幸せになりたければ、ぜひ海外、それも日本より経済規模が小さな国へ出ることを、強くお勧めします。(つまりフィリピンのような)

私が新人だった30年前と比べて、国内の、それも大きな組織に所属するメリットは、どんどんなくなっているし、日本全体がジリ貧状態の今は、特にそう思います。20代は準備のために、日本で頑張って...、なんて全然意味がないですよ。理不尽な苦労を押し付けられて、気持ちまで萎縮してしまうのがオチ。若い時ほど「大人扱い」される、外の世界を経験しなくっちゃ。


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