2016年1月14日木曜日

もう日本には戻れない 長時間労働編


「貧しくても幸せ」フィリピンについて語る時のキーワードと言ってもいいですね。だいたいこの後に「日本は物質的には恵まれてるけれど、幸福度が低い...」と続いて、自虐的な日本社会批判になることが多い。

実際にフィリピンに住み、いろんな階層の人たちの暮らしを見ると、こんな単純化された図式には納得できません。子供がたくさんいて、みんな笑ってるから幸せなんて表層的な見方に過ぎます。場所によっては、電気もなく水は井戸、生死に関わる病気になっても治療費もなし。乳幼児の死亡率は高い。いくら笑顔でも、好きでそんな生活してるわけがない。

それでも、明らかにフィリピンの方がいいと思うことがあります。それは、親が夕食時に帰宅して家族と一緒に食事ができること。もちろん死別や海外出稼ぎで父母のどちらか、あるいは両親ともいなかったり、昼夜逆転の勤務時間の人もいます。それでも、日本のように、ほぼ毎日父親の帰りが深夜になることが当たり前なんて、フィリピンの大多数の家庭では想像もできないでしょう。

これはフィリピンが特別な国なのではなく、約20か国ほど海外出張した経験からして、日本が異常。どの国へ行っても5時以降にオフィスに居残ってるのは日本人ばかり。私の知っている、日本人と国際結婚した奥様たちの不満は、判で押したように旦那さんの帰りが遅いことです。

鬱病蔓延の話を持ち出すまでもなく、今の日本で社会問題になっていることの多くが、この無茶苦茶な長時間労働に起因すると言ってもいい。そりゃ、ここまで家庭を蔑ろにすれば、配偶者との関係も悪くなるし、子供がおかしくなるのも当然です。

高度経済成長期のように右肩上がりで収入が増えれば、休日返上で仕事しても「お父さんは家族のために頑張ってる」と尊敬もされたでしょう。しかし今では、給与は上がらない(どころか下がることさえ珍しくない)のに、健康を犠牲にしてまで働くのは、一体何のため?

この長時間労働の悪習こそが、私がフィリピンに移住した決定的な要因です。どうせ日本でこのまま働き続けても、家族との時間は満足に持てないし、それほど贅沢な暮らしができるわけでもありません。それならば、自分の時間があって、しかも(日本の庶民感覚では)大きな家に住めて、日本並みかそれ以上の生活水準が保てるフィリピンでの生活を選ぶのは、私の中では極く自然な選択でした。

日本でも比較的最近になって、ようやく「これはおかしい」と気づく人が増えてきたようです。1日の労働が8時間までというのは、世界的なルール。この自明のルールを無視して毎日深夜まで働き、定時に帰宅する人を軽蔑して、最後はくも膜下出血で半身不随。先輩社員が本当にこうなりました。早く方向転換しないと、いずれ国レベルで病に倒れますよ。


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