投票日まであと四日と迫った、2016年フィリピン総選挙。現地テレビのコマーシャルは候補者のアピールばかりで、報道番組も選挙一色。日本だったら公平性が云々で、候補者の顔や公約などは、NHKの政見放送を除くとほとんど放送されない。こういうことも、日本の選挙が盛り上がりに欠ける要因なのかなと思ったり。
さて肝心の選挙の行方。超武闘派候補のロドリゴ・ドゥテルテが、どうやらリードしているようです。そのあまりに過激な「実績」から、日本の新聞などでも紹介されていますね。私も当初は驚いて、犯罪対策ばかりにスポットを当てて、このブログに投稿しました。ところが、家内の話をよく聞いてみると、ドゥテルテ人気の秘密は、そういうド派手な面とは少し違うところにあるらしい。
第二次大戦後の第三共和政成立以降、大統領のプロフィールを見ると、元俳優で不正蓄財のために職を追われたエストラーダ以外、富裕層の出身者ばかり。特にマルコス独裁を打ち倒して、国民の期待を一身に背負ったコラソン・アキノは、「フィリピンを乗っ取った男」として知られる政商ダンディン・コファンコを輩出した、コファンコ家の一員。
マルコス失脚後、当時も今もフィリピン社会の宿痾とも言える貧困の撲滅に、どれだけの功績を残すかと、国の内外から注目されていたコラソン。でも結局は、大金持ちで大地主のバックグラウンドを持ったままでは何もできなかった。
人口の4割が貧困層で、そのうち2/3が土地を持たない小作農。この国の貧困の最大の原因は、誰が考えても地主制度にあるのは明白です。どうすればいいかの答えはシンプルで、戦後の日本やドイツで行われた、農地改革しかありません。要するに地主から耕作地を取り上げて、小作人をすべて自作農にすればいいだけ。
しかし、これほど言うのは簡単で実行が難しい話もないでしょう。日本の場合、GHQの命令であっさりと実現した農地改革。ところが戦勝国側にいて、戦前の支配者階級が残ったフィリピンでは、スペイン統治時代の負の遺産が、今に至るまでほとんどそのまま。(一部では自作農化の取り組みが、実現しているようですが)
ならば、地主階級ではない大統領ならば、この難しい問題に手をつけられるのではないか? ドゥテルテ候補には、こういう期待がかけられているのです。しかも、暴力的なまでの実行力は、折り紙付き。
外国人の私からすると、ちょっと極端すぎるし、外交で失敗をしそうな気配が濃厚ですが、それはフィリピン国民が決めること。来週月曜日の投票の結果を、固唾を飲んで見守りたいと思います。
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