2021年2月7日日曜日

隣人たちの懐具合

 ずいぶんと下世話なことですが、噂話のネタとしては、色恋沙汰に次いで定番と言える、他人さまの懐具合。ここフィリピンでも、いや、フィリピンでこそ、隣近所のお金にまつわる話は、格好のターゲット。

最近でこそ「忙しい」「寝てない」を自慢する人は、減少傾向なれど、やっぱり朝から晩まで忙しい日本人とは違い、基本的にヒマ人が多いフィリピン・ネグロス島。

平日の昼間っから、サリサリ・ストア(昔の駄菓子屋と煙草屋を足して割ったようなお店)の前にタムロして、話し込んでいるオッちゃんたち。所用で出かけてる途中で見かけて、半日ぐらいして戻っても、同じメンバーが同じポーズで、話し続けてるなんてのもザラ。

気が合う相手だったら、シラフでも(というか酒が飲めない)延々喋ってしまう私が、とやかく言う資格はないけれど、本当によく話題が尽きないものだと感心します。家内に訊いてみたら、だいたいは誰かの悪口か噂話。

◯◯に住んでる金持ちは、シャブの売人だ。隣の奥さんが若い男と浮気して、旦那がナイフ持ち出して大騒ぎ。などなど、すごくヤバイ話に比べると、やや穏当なのが、借金関係。特に、比較的大きな家が多い、私の住むビレッジ(宅地)で、有閑マダムの口の端に登るのは、住宅ローンが払えなくなって、銀行に家を差し押さえられるケース。

地主階級の本物の大金持ちなら、代々の土地家屋があるし、相続税がバカ高くもないフィリピン。金持ちはいつまでも金持ちで、貧乏人は代々ず〜っと貧乏。差し押さえを食らいやすいのは、中途半端にお金がある、海外での出稼ぎでお金を貯めて、ようやく「ドリーム・ハウス」を手に入れた人たち。

家族や親戚の誰かが、出稼ぎ先の国で家庭を持って、継続的に送金があるならまだしも、数年ぐらいの稼ぎで、持ち慣れない金額を持ったばかりに、分不相応な家を建てたりする人が多いらしい。

こういうオーナーが建てる家の典型的な特徴は、家本体がやたらデコレーションがいっぱいで派手なのに、それを囲むフェンスが無かったり、作ってあっても、ブロック剥き出しで仕上げがなかったり。ロクに作庭もせず、雑草生え放題なんてもの危ないサイン。

実はこの特徴を全部兼ね備えているのが、以前、深夜に酔っ払いが騒いで、関係が険悪になった我が家のお向かいさん。


オーナーのおばちゃんは、かつて日本で働いて、日本人と結婚。どうやら、その日本人夫のお金で土地を購入したらしい。家が出来た頃には、もう夫は亡くなっていて、今では、フィリピン人男性との間にできた三人の息子と、母親と同居している。

ここからが、家内がビレッジ内のおばちゃんコミュニティで仕入れてきた噂話。それによると、土地はキャッシュで買ったけど、家の建築費用は、その土地を担保に、住宅ローンを組んだんだそうです。ところが、今回のコロナ禍。あまり賢そうには見えない息子たちは失業し、おばちゃんが営んでいた、空港に弁当を納入する仕事もダメになった。

なるほど。家がずいぶんと立派なのに、傷んだ箇所は修理もしない。暇を持て余した息子たちは、庭先の掘立小屋で日がな一日、スマホと睨めっこ。フェンスがないので、その様子が、外から丸見え。さらに、最近の洪水では、その庭が何度も冠水。本来なら、嵩上げ工事でもしそうなところが、泥田のような状況でも、そのまま放置。

家内とその噂話仲間では、いつ家を差し押さえられるかが話題になっている。他人の不幸は蜜の味と言いますが、さすがの私も、そこまで追い詰められていると知ったら、ちょっと気の毒になってきました。

相変わらず、週末の夜は、馬鹿息子供が飲んだくれてうるさいけど、他に不安やストレスの吐口がないのかと考えたら、同情の余地がなくはない。(ただの能天気なのかも知れませんが)

ちなみに、お向かいとは別のお隣さん。一昨年の、我が家のゲストハウスと同じ時期に着工して、一年以上前に住める状態になっているのに、今だに引っ越してこない。案の定、旦那さんが海外出稼ぎ労働者で、その収入が頼りなはずが、コロナでずっと国内にいる様子。

時々、パーティなどで人が集まっても、夜には誰もいなくなる状態が続いて、やっぱり庭は仕上げをせずに、未完成っぽい外観のまま。中金持ちの家づくりあるあるで、土地の嵩上げをケチったもんだから、お向かいさん同様、大雨の度に床上まで浸水してるし。

まぁ、お向かいさんもお隣さんも、噂話に尾鰭が付いてるだろうし、本当にお金に困っているかどうかは分かりませんが、どうも、将来設計とか、先のことを逆算して貯蓄するのが不得意な人が多いフィリピン。

まだしばらくは、コロナ禍による不況が終わりそうにないので、せっかく買ったり建てたりしたマイホームを追い出される悲劇が、今後は増えていきそうな予感がします。


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