2021年10月11日月曜日

素直に喜べないノーベル平和賞


出典:ABS-CBN

 2〜3日に1回更新のつもりが、いつの間にか週刊ブログになってます。いかんなぁ。更新頻度が落ちると、当然アクセス数も減る。アクセスが少ないとモチベーションが落ちるの悪循環。少し前まで1投稿につき100ページビューはあったのに、最近は50いくかどうか。

そういう愚痴はさて置き、先週10月8日に、今年(2021年)のノーベル平和賞は、フィリピンのニュース・サイトを運営する、マリア・レッサ氏が受賞の報道。その少し前に、真鍋淑郎さんの物理学賞で注目が集まっていただけに、日本でもフィリピン人初のノーベル賞が話題になっているらしい。

日本から見れば、この快挙に国をあげての祝賀ムードかと思われそうですが、実は今回の受賞はとっても微妙。ご存知の方には今更言うまでもなく、ラップラーは政権に対して極めて批判的な論調で知られており、その舌鋒の鋭さゆえに、昨年マリア・レッサ氏は名誉毀損の罪状で、フィリピンの裁判所から有罪判決を受けています。

それでなくてもフィリピンは、ジャーナリストが殺害される事件が多発する国。そんな中で、強権的な政治手法で有名なドゥテルテ大統領に、真正面から喧嘩売るって、すごい度胸だと感心します。しかも大統領は就任以来、どう控えめに見ても重大な人権侵害としか言えない、ドラッグ戦争を継続中。

死刑が廃止されたフィリピンで、警官が違法薬物の売人や中毒者を、問答無用で殺害することを積極的に奨励してきたんですから、ラップラーだけでなく、世界中の人権団体から非難の集中砲火。最近では、国際刑事裁判所(ICC)が、「人道に反する罪」の容疑で、捜査着手を宣言。報復としてフィリピンはICCを脱退する騒動となっています。

ところがフィリピン国内では、圧政に敢然と立ち向かう英雄マリア・レッサ!とはならないのが複雑なところ。ドゥテルテのやり方には両手をあげて賛同はできなくても、以前の薬物蔓延の惨状を身に沁みて知っているフィリピン国民。現実に多くの逮捕者を出し、目に見えて状況は改善されました。

それだけでなく、数々の政府機関による汚職が摘発されている。2年前、久しぶりにマニラを訪れた際、空港から乗ったタクシーの運ちゃんが「ドゥテルテのおかげで、街がきれいになった」としみじみ言ってたのが印象に残ってます。

一般に、フィリピンのインテリ層は、現大統領に批判的でラップラーを支持する人が多いとされていますが、フィリピン大学卒の家内は、条件付きながらドゥテルテの実績を高く評価。政府の後手後手の対応が問題視されるコロナ禍にしても、もしドゥテルテ以外の大統領だったら、もっとひどくなってただろうと見ているぐらい。

なので、マリア・レッサ受賞のニュースを聞いた時の家内は、苦虫を噛み潰したような表情。「あの人アメリカ人やんか。フィリピン人の受賞とちゃうで。」と憤る。私もよく知りませんが、10歳の時に渡米しプリンストン大学に学んだマリアは、二重国籍なんでしょうか?

これは感覚的な話ながら、フィリピン人が、マリア・レッサの受賞を喜ぶか腹立たしく思うかは、半々ぐらいで拮抗してるようです。いずれにせよ、同時に受賞したロシアのジャーナリストも同様に「報道の自由を守るために戦った」という理由なので、国にとって不名誉なのは間違いありません。

ということで、政権批判に関してすっかり腰の抜けてしまった、日本の大手マスコミを憂う私としては、マリア天晴れ、フィリピン万歳と祝福したい気持ちはあっても、ドゥッテルテさんを悪代官として罵る気にもなれません。

久しぶりの投稿なのに、なんとも歯切れの悪い終わり方で申し訳ない。


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