2017年6月6日火曜日

別離と再会


今日は、前回前々回と書いてきた、家内の叔父ダディ(私の義父ではなく、ニックネームがダディ)の死と葬儀についての投稿の最終回です。

ダディの家族は、奥さんのマミィ・スモールと、長女ルビーと次女レイチェルという娘が二人に、末っ子の長男ラルフの5人。子供はみんな結婚していて、ルビーには女の子が、レイチェルには男の子がいます。つまり孫が二人。

15年前シカゴに移住したダディですが、この家族が全員一緒だったわけではありません。奥さんは同行したものの、アメリカの生活に馴染めずに、数年で単身フィリピンに帰国。ラルフは最初からこちらに残り、シカゴに住んでいるのは、娘二人とそれぞれの連れ合いに子供。加えて、マミィ・スモールの弟で、ダディから見ると義弟夫婦と娘が一人が、ダディ家族に先立ってシカゴに移住。

そしてさらに複雑なのは、移住前にダディ家族と同居していた、マミィ・スモールの妹のナンシーとその息子二人パウロとカルロは、マミィ・スモールと喧嘩別れ。ナンシーとパウロはレイテ島に移り住み、カルロも同じネグロス島で一人暮らし。

つまり、もともと一つ屋根の下に住んでいた大家族が、いろんな事情で離散していました。そしてその家族が、ダディ危篤の報を受けて一斉に里帰り。

フィリピンでは主に経済的な理由から、家族がフィリピン内外にバラバラで生活しているケースが多く、年に一度(多くはクリスマスの時期)か数年に一度、場合によっては何十年に一度の Reunion(リ・ユニオン 再会)は、一族の大イベント。

リ・ユニオン向けの各種サービスが充実していて、パーティ会場や写真スタジオも「リ・ユニオンにどうぞ」と宣伝していたり、印刷屋さんに頼めば、リ・ユニオンで着るお揃いのTシャツのデザインやプリントもしてくれます。帰郷する人たちが購入する大量のお土産を考えると、これだけで相当な経済効果。

実際、私が勤めていた大手家電メーカーでも、フィリピンからの出稼ぎ労働者が多いドバイ向けに、持ち帰り用でフィリピン国内の電圧や放送方式仕様にしたテレビを、製造・販売していました。

さて今回のダディの親族たちの里帰りは、絵に描いたようなフィリピン家族のリ・ユニオン。側から見ていると、まるで古いイタリア映画「鉄道員」を地で行くような光景です。イタリアもフィリピンと同じく、家族の絆を大切にするカトリック国。心情的にはよく似てるところがあるのかもしれません。

鉄道員」は、1956年(昭和31年)製作の大昔の映画。知らない読者のほうが多いと思います。簡単に言うと、年老いた鉄道機関士の男が、様々な理由で家族や友人から孤立してゆき、何年もの離散を経て家族が和解。最期には懐かし人々に囲まれて、眠るような安らかな死を迎えるというストーリー。物語は機関士の幼い孫の目を通して語られ、情感溢れる佳作です。これを書いただけで、もう目がウルウルしてくるほど。

現実のリ・ユニオンも、ダディの棺の前で、仲違いしていた家族が抱き合って再会を喜んだりして、まったく映画さながらの劇的な場面が繰り広げられました。私にとっても10年以上ぶりに会う人たちばかり。同じ熱気を共有できることが、とても幸せに感じました。


「鉄道員」テーマ曲


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