イロイロ〜ギマラス橋 完成予想図
出典:Iloilo Today
タイトル見て元ネタがすぐに分かった人は、私の同世代かそれ以上のお歳ですね。これは、土地バブルの元凶を作った、日本の元総理大臣、田中角栄氏が掲げた「日本列島改造論」のもじり。1970年代、この掛け声でいくつかの巨大建設プロジェクトが本格始動。柱となったのが、北陸新幹線を始めとする整備新幹線であり、本州四国連絡橋でした。
日本での高度経済成長期を彷彿とさせるような、建設ラッシュ真っ只中の現在のフィリピン。つい先日、バコロド・エコノミック・ハイウェイの話題を取り上げた矢先、今度は、本州四国連絡橋レベルでフィリピン全土を結ぶ、大架橋計画がブチ上げられました。
4月19〜20日付けの、フィリピン国内の報道機関や、CNNなどの記事によると、総工費約2,700億ペソ(約5,676億円)を投じて、マニラのあるルソン島と、国内第二の都市セブを含むビサヤ地方の各島やミンダナオ島を、八つの橋で結ぶ壮大な構想。
ドゥテルテ大統領の任期中、2022年までに実施するインフラ整備計画「Build Build Build」の目玉事業という位置付けで、まさに「フィリピン諸島改造」と呼ぶべき規模。ちなみに大幅増額で話題になった、2018年度の国家予算が、3兆7,670億ペソ(約8兆円)なので、ざっくりその7パーセントぐらい。もちろん今年中に完成するわけではないので、数字そのものに意味はありませんが、好調のフィリピン経済にあっても、相当な支出であると、お分かりいただけるでしょう。
八つの橋は、以下の内容。
1. サマール〜ルソン 18.2キロ
2. レイテ〜ミンダナオ 20キロ
3. パナイ〜ギマラス 5.7キロ
4. ギマラス〜ネグロス 12.3キロ
5. ネグロス〜セブ 5.5キロ
6. セブ〜ボホール 24.5キロ
7. ボホール〜ラピニッグ 1キロ
8. ラピニッグ〜レイテ 18キロ
中国の広東〜香港〜澳門を結ぶ世界最長の海上橋が、今年(2018年)3月に公開され、その全長が55キロ。それに比べるとどれも半分以下の長さながら、決して楽な工事ではないでしょうね。
地図にプロットしてみると、こんな感じになります。
こうして見ると、フィリピン全土と言うより、ビサヤの交通インフラ大整備。マニラ・タイムズの記事にも、新規雇用の創出で、ビサヤ地域の貧困率を下げ、地方経済を活性化させるのが狙いとあります。私たちネグロス在住者として嬉しいのは、隣島パナイやギマラスへ陸路で行けるようになる点。ついこの間、パナイ島経由でのギマラス観光について書いたところ。確かに、西ビサヤの2大中核都市、ネグロスのバコロド市とパナイのイロイロ市の往来が便利になれば、経済はより活発になるでしょう。
ところで、パナイ〜ギマラス〜ネグロス〜セブ連絡橋は、今回急に出てきた話でもなく、もう20年ほど前から構想があったらしい。
さて、地域住民には夢のある計画ながら、かつての日本列島改造論がもたらした負の遺産を思い、多少心配になるのも正直なところ。1970年代前半の日本では、開発候補に挙げられた地方の土地価格が高騰し、狂乱物価を引き起こしました。
また、3ルートも作られた本州四国連絡橋は、未だに建設時の費用などで1兆4,000億円もの債務があり、利用者数の低迷で、返済は、かなり深刻な事態に陥っているとのこと。着工当時からも、ルートは一つで十分だという声はあって、それが現実のものとなってしまったわけです。
まぁ、それも大きなお世話で、住まわせてもらっている外国人の私が、口出しすることではありませんね。今のところは、できるだけ早めに完成してもらって、ネグロス暮らしが少しでも便利になることを願うだけです。
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