1965年から1986年の約20年間、事実上マルコス大統領の独裁政権が続いたので、その間は大統領選など無きに等しかったフィリピン。それ以前のことはよくわかりませんが、それ以降の歴代大統領の顔ぶれを見ると、叩き上げのプロの政治家というのはいなくて、軍人や学者、俳優などから転身した人ばかり。それだけでなく、みんな何かしら劇的なバックストーリーを持っている。
マルコス政権打倒後に大統領になったコラソン・アキノ女史は、マルコスに暗殺された夫の復讐に立ち上がった、悲劇の未亡人。立候補前は、政治経験がないどころか、ただの主婦だったそうです。次のラモス氏は革命の趨勢を決定付けたとされる元国軍参謀次長。
エストラーダ氏は国民的な人気を誇る俳優でした。この人は大統領になってからの方が劇的で、不正蓄財が発覚して「ピープル・パワー2」と呼ばれる市民革命で失脚。逮捕・勾留されたはずがいつの間にか恩赦で出獄し、2013年の選挙で現マニラ市長の椅子に。
その次のアロヨ女史は、アメリカの大学で学んだ経済学博士で、マルコスの前の大統領だったマカパガルの娘でもあります。劇的な経歴というより、生まれの良さと学歴、そしてなかなかの美貌の持ち主でした。在任中に来日し、家内もレセプションに出席して直接見たことがあります。この人も退任後、汚職で逮捕されてしまいました。
そして現職の「ノイノイ」こと、ベニグノ・アキノ大統領。前述のコラソン・アキノの息子で、母が大統領だった頃にクーデター未遂事件に巻き込まれ、銃撃を受けて瀕死の大怪我。5発も被弾しながら生き延びたそうです。
さて、こうなると次期大統領には、どんなドラマチックは半生を歩んだ人が立候補するかと、無責任な期待をしてしまうところ。そう次々とそんな人は出ては来ないだろうと思っていたら、いたんですよ、ものすごい人が。
候補者の一人、グレース・ポー女史は、何と教会の前に置き去りにされた捨て子だったそうです。孤児だったグレースの養父となったのが、これまたフィリピンでは超人気俳優で、アロヨ女史と大統領選を戦ったこともあるフェルナンド・ポー氏。それだけでも十分劇的なのですが、選挙後に病気で急逝した父の意志を継いで上院議員になり、昨年大統領に立候補。
フィリピンではフィリピン国籍を有するだけでなく、10年以上はこの国に住んでいないと、大統領にはなれない決まりがあります。長くアメリカに住み、アメリカの市民権も持つポー女史は、この資格を満たしていないと選挙管理委員会から失格を言い渡されましたが、先日最高裁判所がこの決定を覆す判決を出しました。
いよいよドラマチックな展開になってきましたね。私の完全なる独断によると、ポー女史が当選間違いなし。でも家内に言わせると「フィリピンから一度逃げ出したような人はダメ」なんだそうです。う〜ん、そう言うと私も国外逃亡した同類なんやけどなぁ。
今大統領選の有力候補 中央がポー女史
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