先日の「天地創造」に続き、クリスマスの夜はこれしかないというど真ん中の作品「ベン・ハー」を観ました。例によって家内は早々に沈没しましたが、息子とメイドのアミーは11時まで寝ないで、3時間半の超大作を最後まで鑑賞。二人とも筋金入りのカトリック信徒になるかも。
さて映画の内容。副題として「キリストの物語(A Tale of Christ)」とあるように、イエスさまの降誕に始まり、十字架での死に終わります。しかしずっとキリストの足跡をなぞるわけではなく、同時代のユダヤの貴族、ジュダ・ベン・ハーが主人公。このベン・ハーは、原作者のルー・ウォーレスが創り出した架空のキャラクターで、演じたのはチャールトン・ヘストン。この手の超大作には欠かせない名優で、1968年の「猿の惑星」にも出てました。
この映画は1959年公開。いろんな意味で時代を感じますね。今だったら、ここまで直球の真っ向勝負ストーリーでは、リアリティがないとか、先が読めるとか言われそう。それに物語のキーになるハンセン病(字幕では「業病」と表現)の扱いが難しすぎて、これも今なら、相当描き方に配慮が必要だろうと思います。
それにしても前回の「天地創造」と同じく、セットにもエキストラにも金に糸目はつけない作り。特に中盤の見せ場、4頭立ての馬車による競争のシーンは圧巻。これこそCG一切なしの本物の迫力。聞くところによると、撮影中に事故があって死者を出してしまったそうです。そしてちょうど40年後の1999年に公開された「スターウォーズ・ファントム・メナス」でのポッドレースは、ベン・ハーへのオマージュを込めて、かなり忠実なリメーク(というかパロディ?)なのは有名な話。
私が初めてこの作品を劇場で見たのは、大阪・梅田にあったOS劇場の1991年の閉鎖前、最後のリバイバル興行でした。この劇場は私の知る限り関西唯一のシネラマ専用映画館。シネラマとは、縦9メートル以上×横25メートル以上の湾曲した大スクリーンに、3台の35ミリフィルムの映写機を同期させるという、とんでもなく大掛かりな映写規格。それはすごい迫力でしたが、やっぱりお金がかかり過ぎたんでしょうね。
懐かしくて涙が出そうな、在し日のOS劇場
実は初見の頃の私は、洗礼を受ける前。聖書についての一通りの知識はあったものの、正直言って、馬車レースの後の展開は少々退屈してしまいました。なんだか急にトーンが暗くなって、付け足しみたい。ところがそれから5年で、不思議な縁で今の家内と知り合い、フィリピンで受洗してカトリック信徒になってしまいました。
その後、家内と一緒になってから、思い出したようにベン・ハーを観たところ、このレースの後こそが映画の真髄だと理解。本当に聖書の記述をそのまんま映像にしたという仕上がり。またイエス様は後ろ姿しか見せず、最後までご本人の声は聞かれないまま。「イエス」という名前すら直接は語られず「ナザレのお方」とか「若いラビ」と呼ばれていました。こう言う演出が実に上手いですね。不良信徒の私ですが、これは涙なしには観られない、感動の一作でした。
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