2016年7月19日火曜日

私的名曲選2 布施明「シクラメンのかほり」

前回取り上げた「五番街のマリーへ」に続いて、切ない切ない恋の歌。1975年に発売され、布施明さんの代表作となった「シクラメンのかほり」。これも私の世代ならば、誰もが知る名曲と言えるでしょう。

作詞作曲は、小椋佳さん。「現代の吟遊詩人」と呼ばれるほど、心に深くしみる美しい詩を数多く作られています。ウィッキペディアによると、この曲、ご本人はあまり気にいらなかったそうで、自分ではレコーディングせず、しばらくお蔵入りになっていたとか。

ところが、布施さんが歌って大ヒット。その年のレコード大賞を始め、各音楽賞を総なめに。私の両親も早速レコードを買ってきて、よく聴いてましたね。その影響で、当時中学生だった私は、今でも歌詞を見ないでカラオケで歌うことができるほどです。

それをきっかけに、一時期、小椋佳さんの楽曲にハマり、下手くそなギターを弾きながら歌ったりしてたことも。でも中学、高校の頃には「小椋佳が好き」とは言い出しにく雰囲気が満ちていました。やっぱりクィーンとか、レッド・ツェッペリンのファンの方が、女の子にモテそう。

社会人になってから、すっかり忘れていた「シクラメンのかほり」。意外な場所で再会することに。1995年の11月、仕事で初めて訪れたフィリピンのマニラ。現地法人の日本人マネージャーの方々に、夕食をご馳走になったスペイン料理の店でのことでした。

高級レストランならではの、バンドによる生演奏。日本人ばかりの私たちのテーブルの前で、ギター2本とパーカッションをバック歌い始めたのが、なんと懐かしい「シクラメンのかほり」。それも日本語の歌詞そのまま。

演奏してくれたフィリピン人ミュージシャンたちは、日本語を一切話せず、意味も分からず歌詞を丸覚えだと、歌った後で知りました。でもそんな風には全然聴こえない、感情をたっぷり込めた歌いっぷり。当時は、日本人客が多く、日本語の歌を歌えば、チップがたくさん貰えたんでしょう。

それにしても、この選曲でこの完成度。誰が教えたのかは分かりませんが、素晴らしいセンス。もう30を幾つか過ぎた頃の私でしたが、不意打ちを食らった格好で、不覚にも涙がこぼれてしまいました。

 疲れを知らない子供のように、時が二人を追い越して行く
 呼び戻すことができるなら、僕は何を惜しむだろう

今聴いてみると、久しぶりにこの曲に出会って涙した、30代の前半の時を呼び戻したくなります。齢を重ねるほどに、じんわりと効いてくる歌詞ですね。そう言えば、付き合っていた頃の家内に、この曲の良さを何とか伝えようとして、自分で英訳した「シクラメンのかほり」の歌詞を、ラブレターに書いたりしました。あの手紙、どこへしまったかなぁ?


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