2017年7月30日日曜日

息子への手紙


この週末、金曜日の夜から土曜日午前中にかけて、息子の小学校で宿泊学習がありました。これはリコレクション「Recollection」というもので、直訳すると記憶、回想、回顧という意味。日本ではあまり聞いたことがないので、私にはどんな学習体験なのか、もう一つピンときません。

家内によると、神父さまのお話を聞いたりして、自分がここまで成長したことを、神さまや両親、先生や友達に感謝しましょう、みたいなものらしい。でも、そんな有難ぁ〜い内容とは関係なく、子供達にとってはパジャマ・パーティ以外の何物でもありません。

お泊りは息子の学年だけで、金曜日の授業は通常通り。放課後一度帰宅して、早めに夕食とシャワーを済ませて、夕方6時に再登校。各自、枕や簡易式のマットレスなど持参で、かなりの大荷物。そしてどの子供も興奮気味で、ちょっとした冒険に出かけるような雰囲気です。これは、枕投げ大会になるのかな?

それだけならば、楽しんできなさいと気楽に送り出すだけ。ところが厄介なことに、両親にまで宿題が出ました。我が子に宛てた手紙を書いて、学校に持ってきなさいとのこと。多分、子供達が、お父さんお母さんからどれだけ大事にされているかを、自覚させる目的なのかと思います。

こういうの苦手なんですよね。おそらく日本人ならば大抵の人は「そんな恥ずかしいことができるかいな」という感じでしょう。夫婦ならばまだしも、親子で「I love you」と言い合うような感性も習慣もない日本。最近では結婚式の時に、子供からの手紙を朗読して、親を泣かせようというロクでもないことが流行っていて、少しは日本も変わってきているのかも知れませんが。

英語で書けと言われたら、無理だと断ることもできたのに、発表するわけではないから何語でもOK。仕方がないので、関西弁でA4用紙一枚に手紙をしたためました。ブログやらSNSで文章を書くことは慣れきっているはずが、この程度の量の日本語を捻り出すのに、エラい時間がかかってしまった。ということで、大変だった分の元を取るために、ここで全文を公開します。


Ken(息子の名前)

もうすぐKenが生まれてから、12年やな。本当はもう少し早く生まれて欲しかったんやけど、ちょっとゆっくりやったなぁ。もう子供は生まれないんかと、ママと一緒に心配してたんやで。お医者さんに診てもらったりしたけど、だめで、実はすっかり諦めてたんや。

もうアカんかと思って忘れてた、2004年のクリスマス。あの時は、尼崎の家で、おじいちゃん、おばあちゃんと住んでた。ママが気持ち悪いというから、おばあちゃんと一緒に、病院に行ったんや。そしたら、Kenがママのお腹におると、分かった。その時はまだ、名前をつける前やったけど。

みんな、すごく喜んだんやで。ママも父上も大喜びや。おじいちゃんは、お前が男の子やと分かってから、喜んでたな。

Kenが、横浜の病院で生まれてきた時、初めて言うたこと覚えてるか? 覚えてるわけないわな。「お前、よう生まれてきたなぁ」て言うたんやで。
しばらくしてから、フィリピンのロラ*も、日本に来てくれた。ビデオで見たことあるやろ。あの時ロラはガンにかかっていて、もうそんなに長く生きられへんと知ってたんや。だから頑張ってビザを取って来てくれたんや。Kenのこと、ものすごく可愛がってくれたんやで。

Kenは日本でもフィリピンでも、いっぱい愛されてるからな。どっちの国も大事にして、どっちの言葉も忘れずに、ちゃんと喋れるようになってほしい。英語は大丈夫やけど、イロンゴはもうちょっと頑張ってな。日本語も、本読んだりインターネットで見て、覚えとかなアカんで。

これからも元気に、一緒にスタートレックを見よな。


父上より


*ロラ=フィリピンの言葉で「おばあちゃん」の意味

さて、土曜日のお昼前、帰宅した息子。手紙のことについて何か言うかと思いましたが、一言もなし。こちらからも敢えて尋ねませんでした。どんな感想なのか、多少は気にもなりますが...。

ちなみに、息子には私のことを「ちちうえ」と呼ばせております。


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